2005年06月05日

パスカード

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かなり前のことだと思うが,研究室に黒っぽいスーツの男性がやってきて「お得なカードを買いませんか?」と誘われた.あまりにも怪しかったので「結構です」と断りそうになったのだが,とりあえず話を聞いてみたところ,カードを購入して飲食店に行くと,そこで割引が受けられるという.
いわゆるクーポンみたいなものかと思ったのだが,どうもビジネスモデルが違うらしい.そのまま話だけ聞いて追い返すのも悪いので,その「パスカード」とやらを購入する代わりに詳しい話を聞かせてもらうことにした.

いわゆるクーポンの場合,利用者,発行者,店舗という三者が存在している.
利用者はクーポンは無料で手に入れることができ,それを持っていけば店舗でサービス(割引などを受けられる.
店舗はクーポンと引き換えに利用者にサービスを提供するのだが,これは店舗側の負担になる.それでも利用者が増加するので店側にメリットがないわけではない.
では無料でクーポンを発行する発行者はどのようにして利益を得ているのかというと,店舗側から受け取る広告費で儲けることになる.いわゆる広告型ビジネスモデルだ.この手のビジネスモデルの代表例はTV(NHKを除く民放各局)であり,就職・住宅情報誌などもこのビジネスモデルを利用または併用(雑誌が有料の場合)している.
このビジネスモデルの場合,サービス負担分&広告費で店舗が一方的に損をすることになるのだが,一組あたりの利幅が小さくなっても客が十分に増加すればトータルでは利益を出すことも可能だ.
しかし,広告費が客の数に関係なく一定である(=固定費)のに対して,サービス負担分は客が増加すればそれに比例して増加する(=変動費)ため,どれくらいの割引を行うかなどをちゃんと計算しておかないと,予想以上に客が増えて利益が出なくなってしまう可能性もある.

これに対してパスカードの場合,利用者はカードを有償で購入することになるのだが,発行者はこのカード代金で利益を得ることになる.で,店舗側はサービス負担分だけで広告費は負担しない.つまり,発行者はクーポンの場合には店舗からの広告費で得ていた収入を利用者からのカード代金で得ることになる点が大きく違うわけだ.
それだけなら負担者が違うだけのように思うかもしれないが,実はもう一つのメリットがある.どのようなサービスが受けられるかは店舗と発行者の契約次第だが,サービスを受けるたびにスタンプを押していくことでサービスの提供回数を制限していることが多い.この回数制限に加えてカードの発行枚数をコントロールすれば,店舗側のサービス負担分の最大金額がコントロール可能になるのだ.
また無料のクーポンと違い,有償のパスカードの場合は「金を払ったからには絶対に元を取り返す!」と考える人が多いだろうから,のべ来客数はクーポンよりも少ないかもしれないが,カードを購入した特定客が繰り返しやってくる確率は高くなるだろう.

と,このあたりの詳しいことはパスカードの発行元であるニューポートにある説明のページにも書いてあった.うーん,これがあることを知っていれば,買わずにすんだのに...

で,この1月になって,またもやパスカードを販売しに研究室までやってきた.相変わらず黒っぽいスーツだ.今回のパスカードは牛角とカプリチョーザ.周囲の学生さんたちに相談した上で,すべてのサービスを使い切ることを目指して購入.
その後,かなりの時間が経過したが,あまり利用状況は芳しくない(とりあえず元は取ったが).
そろそろ有効期限が迫ってきたので,学生さんたちと共に牛角へ.3人で8000円分食べて3000円のディスカウントを狙ったのだが,ドンブリ勘定で7000円になった時点で肉はもういいかなという雰囲気になった.今からドリンクを注文というのもおかしな感じがする.となると残るはデザートしかない.ということで...

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3人なのにデザート5皿.何か間違っている気がするが,ドンブリ勘定で1000円くらいにするためにはこれしかなかった.
しかし,おかげで目標金額にかなり近い8300円で勘定を締めることができた.

さて,今月末の有効期限切れまでに,あとどれだけ利用できるだろうか.


おまけ その1.
家計簿を調べてみたら,最初にパスカードを購入したのは2003年11月のことだった.真面目に家計簿をつけていると色々なことが分かるものだ.

おまけ その2.
パスカードのウェブサイトで各地でどのようなパスカードが販売されているかをチェック&購入できるようになっているのだが,愛媛県を見てみると,今回使ったもの以外にもパスカードが流通しているらしい.また研究室に売りに来るのかなあ.