2006年11月06日

『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス

[ Book]

過去へのタイムトラベルが可能になった未来.しかし,そのタイムトラベルは過去を変えることができず,過去から何かを持ち帰ることもできないため,学術目的のためにしか使われることはなかった.
大聖堂の再建プロジェクトのために総動員がかけられているオックスフォードの史学部.相次ぐタイムトラベルで意識が朦朧としていた「ヘンリー」は休める場所を求めて,「ダンワージー教授」の研究室を訪ねる.しかし,そこではあるはずのないことが起こっており,その修復のため,「ヘンリー」は19世紀のオックスフォードに送られることに...

以前読んだ『ドゥームズデイ・ブック』と同じ世界設定を使った作品で,共通の登場人物も登場するのだが,基本的には独立した作品.松山市立中央図書館所蔵.
『ドゥームズデイ・ブック』と同じ世界設定を使っているのだが,基本的に悲惨な話だった前作と違って,本作はかなりコミカル.

かなり評価が高い作品なのだが,上下2段組で約530ページという長編,しかも色々な文学作品からの引用がちりばめられているし,当時の時代風俗や歴史的背景などが分かっていないと意味が分かりにくいところが多数あるので,この作品を本当に楽しめる人というのは実は少ないような気がする.
私もテニスンの詩とかカーペットバッグなどと言われても何がなんだか分からないので,本当に楽しめたのかどうかは少々疑問.

しかし,分からないなりに半分くらいまで読み進めていくと,それなりに順応できたようで,あとは一気に読み進めることができた.
というわけで,途中まではわけが分からないだろうが,最後まで読み通すことができればかなり幸せな気分になれる作品.

作中にドロシー・セイヤーズのミステリとP.G.ウッドハウスのジーヴス物が出てくるのだが,これらがなかなか面白そうだった.機会があれば読んでみよう.