2008年03月19日

『時砂の王』小川一水

西暦248年,山の中で物の怪に襲われた少女は大剣を持った男に助けられた. 襲われた少女は邪馬台国の女王である「卑弥呼(彌与)」. そして「メッセンジャー・O」と名乗る男は,26世紀から時間を超えて戦い続けていた.地球を守るために... 昨年10月に出版された小川一水の最新作. と思ったら,2月に別の新刊が出てた.さすがにポプラ社はノーチェックだった... ネットの書評などを読む限りでは,かなり評価が高い作品....
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2008年03月10日

『チキタ★GUGU 全8巻』TONO

人喰いの妖怪「ラー・ラム・デラル」に家族を食べられてしまい,一人生き残った「チキタ・グーグー」. チキタだけが生き残ったのは,彼が「死ぬほどまずい人間」だから.しかし,まずい人間は百年育てると夢のように美味になるという. 100年後に食べられるために,ラー・ラム・デラルに飼育されることになったチキタだが... 2006年に読んだ本のうちの少女マンガ部門第1位だった『チキタ★GUGU』だが,このたび,ようやく最終巻が刊行された. 雑誌連載自体は昨年中に終了していたのだが,その後,出版社が倒産したりして,どうなることかと気を揉んでいたのだが,どうやら人気があったようで,そのまま朝日新聞社に引き継が...
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2008年03月03日

『名前探しの放課後 上下』辻村深月

自宅から離れた高校に通う「依田いつか」はジャスコの屋上で気がついた. そのことに気がついた翌日,「いつか」はこれまでほとんど話しかけたことのないクラスメート「坂崎あすな」に二つの相談事をもちかける. 一つは,自分が三ヶ月先の未来からタイムスリップしたことについて. もう一つは,三ヶ月先に自分たちのクラスメートが自殺することについて. 「止めるんでしょ、自殺」 「止めるっつったら、協力してくれるわけ?」 「聞いちゃったからね」 そして,友人たちと共に,自殺するクラスメートの名前探しの放課後が始まった. 辻村深月の新刊.これまではノベルズだったのだが,単行本になっている.そのわりには表紙がペラペラ...
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2008年02月22日

『知的ストレッチ入門』日垣隆

タイトルだけだと分かりにくいだろうが,副題が「すいすい読める 書ける アイデアが出る」ということで,著者が実践している知的生産性向上のための技術を披露した本. 古本屋で探していた本をようやく見つけた際,喜びのあまり一緒に買ってきた. 以前,この著者の日記を本にした『何でも買って野郎日誌』を読んだことがあるが,すごい勢いで仕事をこなしている人なので,確かに説得力がある....
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2008年02月16日

『アフリカにょろり旅』青山潤

現在生息するウナギ全18種. その最後の1種である「ラビアータ」を求めて,アフリカを旅した研究者のエッセイ. と,こう書くと学術的な硬い本のように思えるかもしれないが,タイトルが「にょろり旅」だし,表紙のイラストも牧歌的で楽しそうな感じなので,軟らかい本なのだろう. そう思って読み始めたのだが,「うわーぁ」という感じの本だった. 元・中島町の図書館にしかなかったので予約して取り寄せてもらったのだが,どうも中央図書館で購入したものが届いたようだ....
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2008年02月13日

『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦

大学の後輩である「彼女」に一目惚れした「私」. 夜の先斗町を,夏の下鴨神社を,学祭中の大学内を,ひたすらに歩き回る「彼女」. そして,偶然を装って近づくため,これまた歩き回る「私」. 不可思議な人物に囲まれた「私」の恋の行方は... 山本周五郎賞を受賞したり,本屋大賞で第2位に輝いたりと,森見登美彦の出世作となった本作. 偶然に頼っていてはいつまで経っても借りることはできないだろうということで,予約してようやく借りた.三津浜図書館所蔵. いやー,面白かった!...
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2008年02月09日

『美人画報ワンダー』安野モヨコ

以前読んだ『美人画報』『美人画報ハイパー』の続編にして完結編. それほど読みたかったわけではないのだが,あと1冊で終了のものをそのままにしておくのも気持ちが悪かったので,中央図書館に行くたびにチェックしていたのだが,ノーチェックだった三津浜図書館で文庫版の方を発見.すかさず借りてみた....
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2008年01月17日

『四畳半神話大系』森見登美彦

京都の四畳半で大学生活を送る「私」.これまでの無為に過ごしてきた2年間大学生活を思い返す. 新入生のときに興味を惹かれた4つのサークル勧誘. 映画サークル「みそぎ」,「弟子求ム」という奇想天外なビラ,ソフトボールサークル「ほんわか」,秘密機関<福猫飯店>. あのとき,別のサークルを選んでいれば「バラ色のキャンパスライフ」を手に入れることができたかもしれないのに... 2007年にブレイクした森見登美彦の第2作.三津浜図書館所蔵. 最初に読んだ『きつねのはなし』がホラーっぽい話だったのに対して,本作は青春コメディとでも言うべき作品で,どうやらこちらの作風が本筋らしい....
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2008年01月08日

『入社3年目までに勝負がつく77の法則』中谷彰宏

あらすじを書くまでもなく,タイトルどおりの本. あるBlogで絶賛されていたので,検索してみたところ,かなり評価が高かったので買ってみた. といっても,「この著者の本ならブック○フをちょっと漁れば見つかるだろうから,105円だったら買ってみよう」くらいの感じで,実際にブック○フで105円で買うことができた. 結論から言うと,「105円で見つけることができれば読んだ方がいい本」だろう. いや,人によってはもっと払ってでも読む価値があるかもしれないくらい,至極真っ当な本だった....
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2007年12月31日

『G戦場ヘヴンズドア 全3巻』日本橋ヨヲコ

一流漫画家の父に反発して小説家を目指す高校生「堺田町蔵」は,その原稿を読んだ無口な級友「長谷川鉄男」に一緒にマンガを書いて欲しいと頼まれる. ひとたびは申し出を断った「町蔵」だったが,「鉄男」が小学生の頃に書いたマンガを読んで... 2007年は本(マンガを含む)に関する記事を114個ほど書いた.このところ,色々忙しくて本を読めていないので,自分では100冊は読めなかったと思っていたのだが,前半(というか入院中)の貯金でなんとかクリアできたようだ. ということで,毎年恒例の各部門のベスト1だが,少年マンガ部門のベスト1はこの『G戦場ヘヴンズドア』....
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2007年12月20日

『朗読者』ベルンハルト・シュリンク

同僚の奥様に貸していただいた小説. 通常のパターンなら自分でまとめたあらすじから始めるのだが,裏表紙の掲載されているあらすじをそのまま抜粋. 胸を締めつけられる残酷な愛の物語。15歳の少年ミヒャエルが経験した初めての切ない恋。けれども21歳年上のハンナは、突然失踪してしまう。彼女が隠していたいまわしい秘密とは……。 間違ってはいない.確かに間違ってはいないのだが,何か違うような気がするのは私だけだろうか?...
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2007年12月13日

『天と地の守り人 全3巻』上橋菜穂子

タルシュ帝国の侵攻から祖国である新ヨゴ皇国を救うため,絶望的な旅に出て行方不明となった皇太子「チャグム」. その「チャグム」を探し出すため,用心棒の「バルサ」はロタ王国に向かう. 一方,迫り来る洪水の危機を察知した呪術師の「タンダ」は,徴兵されて戦場に向かうことに... 『守り人』シリーズの最終巻,になるのかな.三津浜図書館所蔵....
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2007年12月11日

『きつねのはなし』森見登美彦

京都の「芳蓮堂」という骨董屋でアルバイトをしている大学生の「武藤」は店主である「ナツメ」の使いで,「天城」という人物の屋敷に通うことになる. ある日,壊してしまった骨董品の代わりを手に入れるため,「天城」の元を訪れた「武藤」は,その代償を求められるのだが... このところ,注目されている森見登美彦の作品.この作者の本を読むのはこれが初めて. 三津浜図書館所蔵. 各方面で絶賛されている『夜は短し歩けよ乙女』がコメディっぽいらしいので,そういう作風だと思っていたのだが......
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2007年12月06日

『ポビーとディンガン』ベン・ライス

オパール鉱山の近くの町ライトニング・リッジに住む少女「ケリーアン」の友達「ポビー」と「ディンガン」は他の人には見えない. しかしある日,二人の姿が見えないと騒ぎ出した「ケリーアン」は日に日に弱っていく. その姿を見かねた兄「アシュモル」は,町中の人々に二人を捜してくれるように頼むのだが... 同僚の奥様から借りた本. 舞台は現代だし,超自然的な存在も基本的には出てこないんだけど,カテゴリーとしてはファンタジーになるのかなあ....
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2007年11月28日

『鹿男あをによし』万城目学

周囲から神経衰弱と言われて大学の研究室に居づらくなった「おれ」は教授の勧めで,奈良の女子高に2学期の間だけ教師として赴任することに. 担任の女子高生「堀田イト」に目の敵にされて悩んでいるところ,鹿に話しかけられた. 「さあ、神無月だ――出番だよ、先生」 『鴨川ホルモー』でデビューした作者の新刊.三津浜図書館所蔵. 前作が面白かったので,図書館で見かけたところをサクッと借りてきたのだが,2007年の直木賞候補であり,2008年には玉木宏と綾瀬はるか主演で連ドラ化されるそうだ....
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2007年11月24日

『青年のための読書クラブ』桜庭一樹

20世紀初めに東京の山の手に創設された,伝統ある女学校「聖マリアナ学園」. 学園のへんなやつ等が集まる「読書クラブ」には,学園の正史には残らない真実の歴史を連綿と記したクラブ誌が存在していた... 『赤朽葉家の伝説』で一般小説家としてもブレイクした桜庭一樹の作品.三津浜図書館所蔵. あいかわらず少女がテーマなのだが,『赤朽葉家の伝説』と同じく編年体で構成された連作短編集....
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2007年11月23日

『人を動かす情報術』春木良且

以前読んだ『情報って何だろう』という岩波のジュニア新書を書いた著者の新刊.といっても3ヶ月くらい前の本だが. 前著がよくまとまっていたので店頭で手に取ってみて,パラパラとめくって良さそうだったので買ってみたのだが,思いのほか良かった. タイトルだけで判断すると怪しげなノウハウ本みたいに思うかもしれないが,かなりちゃんとした本. 内容的には「人を動かす情報術」というよりは「人に動かされない情報術」または「人に食い物にされない情報術」という感じか....
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2007年11月14日

『遠まわりする雛』米澤穂信

4月,神山高校に入学した「折木奉太郎」は姉の命令で廃部寸前だった古典部に入部する. 同じく古典部に入部した「千反田える」や,昔からの友人「福部里志」「伊原摩耶花」と共に,1年間を過ごすうちに,省エネ少年の奉太郎にも変化が... 作家買いすることに決めた米澤穂信の新刊で,古典部シリーズの最新作. 前3作がすべて長編だったのに対して,本作は短編集で7本の短編が収められている. 読んでいる途中は「うーん,長編の方がいいかなあ」と思っていたのだが,最後の3本でかなり評価が上がった....
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2007年11月07日

『骨盤にきく』片山洋二郎

先月あたりから,背中から腕にかけてが痛むようになっていた. 日常生活に不自由を感じるほどではないのだが,自転車を運転していると腕に響くし,意識が常に患部(?)にいってしまうため,あまり集中できない. 以前も同じような症状が出て,整形外科に行ったら飲み薬と湿布薬を渡されただけだったので,根本的に治すためには東洋医学に頼るしかないのだろうか?と考えるようになった. で,あちこちの整体について調べるようになったのだが,その際,「以前,整体に行ったら,そこの先生に『あなたの人生は○○だ』みたいなことを言われた」というエピソードを聞いた. 実はその整体の先生,かなり有名な人らしく,何冊も本を書いていると...
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2007年11月05日

『クレィドゥ・ザ・スカイ』森博嗣

記憶が曖昧なまま病院から抜けだした「ぼく」は,病院を訪ねてきた女性「サガラアオイ」のもとに身を寄せる. 戻らない記憶とたびたび見る幻覚を治療しようとする彼らに会社の追っ手が迫る... 時間軸的には第4作の『フラッタ・リンツ・ライフ』と第1作の『スカイ・クロラ』の間に当たる作品.松山市立三津浜図書館所蔵. 訳が分からないながらも読み続けてきた本シリーズも本作で最終巻. はてさて,どういうラストを迎えるのかと思いながら読み始めたのだが......
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2007年11月04日

『ものづくり道』西堀榮三郎

「伝説の技術者」であり「探検のカリスマ」とも呼ばれる(NHKが勝手に呼んだだけ?)著者が,自身の経験を振り返って,科学と技術,創造性,組織運営などについて述べた本. 松山市立三津浜図書館所蔵. 西堀榮三郎という人物を知っている方は,それなりに年配の方か,とある分野に興味があるか,プロジェクトXを見たかのどれかだと思う.私自身はプロジェクトXで知った. 現在は既に放送が終了してしまったが,ちょっと前まで『プロジェクトX』というNHKのTV番組があった. 今では普通に使われている製品(災害救助や巨大構造物建造などの場合もあり)がいかにして生み出されたかを描いた番組で,かなり話題になったシリーズなの...
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2007年10月31日

『りかさん』梨木香歩

リカちゃん人形を欲しがる「ようこ」に「おばあちゃん」がプレゼントしたのは,真っ黒な髪の市松人形の「りかさん」. おばあちゃんに説明書に従って,りかさんの世話をして1週間が経った夜,りかさんはようこに喋り始めたのだった... 以前読んだ『からくりからくさ』の前日談である表題作と,後日談である短編「ミケルの庭」の2本が収録されているのだが,どちらも執筆時期というか出版時期は『からくりからくさ』の後のようだ....
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2007年10月18日

『化物語 下』西尾維新

怪異に憑かれた少年「阿良々木暦」の身の回りには,なぜか怪異が集まってくる. 双子の妹のかつての友人を締め付ける蛇,そしてクラスメートの委員長「羽川翼」に憑いた猫が再び姿を現した... 前作があまりにも面白かったので,すぐに予約したところ,思ったよりも早くに回ってきた.松山市立三津浜図書館所蔵....
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2007年10月16日

『蒼路の旅人』上橋菜穂子

南の大国タルシュ帝国に攻められているサンガル王国を支援するため,新ヨゴ皇国の皇太子「チャグム」は,罠と知りながらサンガル王国に向かう. その結果,チャグムはタルシュ帝国に仕える男「アラユタン・ヒュウゴ」の手に落ち,タルシュ帝国に連行されることになるのだが... 三津浜図書館所蔵. 『守り人』シリーズの外伝で,チャグムを主人公にした『旅人』シリーズの第2弾. でも,このシリーズはこれで終わりなのかな?...
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2007年10月14日

『緑陰の雨 灼けた月』高里椎奈

野狐の「柚之助」という妖怪を預かることになった薬屋探偵3人組. そこに,自宅で怪奇現象が起こるという女子高生「道長円」の依頼が. 「秋」と「座木」は円の通う高校に調査に向かい,「リベザル」と柚之助は円を護衛して温泉旅行に行くことになるのだが... 薬屋探偵妖綺談シリーズの5冊目.松山市立三津浜図書館所蔵....
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2007年10月06日

『チーム・バチスタの栄光』海堂尊

東城大学医学部付属病院にアメリカから招かれた「桐生恭一」は,心臓移植の代替手術であるバチスタ手術を専門とするチーム・バチスタを率い,成功率100%を誇っていた. しかし,相次いで術中死が発生,そのことに違和感を感じた「桐生」は「高階病院長」に調査を依頼する. そして,「高階病院長」が調査責任者として選んだのは,外科とは全く縁のない愚痴外来の責任者であり「田口公平」だった... 第4回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作.松山市立中央図書館所蔵. 書店に並んでいるのを最初に見た時,人目を引く黄色の装丁に加えて「チーム」「栄光」という単語が含まれていることからツール・ド・フランスの話と勘違...
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2007年10月04日

『金糸雀が啼く夜』高里椎奈

馴染みの花屋の陰謀に巻き込まれ,とある富豪のペンダントを盗みことになった「座木」と「リベザル」. ペンダントのガードを依頼された「秋」と敵対することになるが,その富豪が開催したパーティでシャンデリアが落下し,2人を押しつぶした.そして,そのシャンデリアには道化師の格好をした富豪の死体が... 薬屋探偵妖綺談シリーズの4冊目.松山市立中央図書館所蔵....
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2007年10月02日

『洗脳原論』苫米地英人

怪しいタイトルに加えて,カバーもかなりおどろおどろしい本なのだが,タイトルどおり,洗脳のメカニズムが,著者の体験に基づいて説明されている. このところ,この著者の名前を見かけることが急に多くなった気がしたので,とりあえず借りてみた. 著者はオウム事件が起こった頃からワイドショーなどに時々登場するようになったのだが,見かけや紹介のされ方がかなり怪しかった. この本を読んで,正確なプロフィールがようやく分かったのだが,これがまた,かなり怪しいというかユニークな人のようだ....
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2007年09月29日

『化物語 上』西尾維新

階段から落ちてきた病弱なクラスメート「戦場ヶ原ひたぎ」を受け止めた「阿良々木暦」は驚いた. 彼女には体重がほとんど無かったのだ. 秘密を知られた「ひたぎ」は「暦」を脅迫して口止めをするのだが,実は「暦」は... 戯言遣いシリーズで人気作家となった西尾維新の作品.松山市立中央図書館. 戯言遣いシリーズが最後のほうでグダグダになってしまったので,あまり読もうとは思わなかったのだが,かなり評価が高いので読んでみた....
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2007年09月27日

『海馬が耳から駆けてゆく』菅野彰

『あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します』が面白かった&コメントで勧められたので読んでみた.松山市立中央図書館所蔵. 『あなたの町の〜』のように特定のテーマがあるわけでなく,日常生活の面白エピソードを書いている....
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2007年09月24日

『インシテミル』米澤穂信

大学生の「結城理久彦」は車を買うために夏休みのバイトを探していた. コンビニでアルバイト情報誌を読んでいたとき,住む世界の違うお嬢様「須和名祥子」に声をかけられて見つけたバイトは,なんと時給11万2千円. 「人文科学的な実験」だというそのバイトの正体は... 米澤穂信の新刊. どういう話だか予備知識を持たずに作家買いしたわけだが,最初のページをめくると館の見取り図があった.なるほど,「館もの」か. と思いつつ,さらにページをめくると......
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2007年09月23日

『ザ・ギバー』ロイス・ローリー

コミュニティーに暮らす少年「ジョーナス」は,自らの職業を決定する十二歳の儀式で『記憶を受けつぐ者』に選ばれる. コミュニティーに一人だけの存在である『記憶を伝える者』との対話と記憶の伝授を通じて,彼らはコミュニティーのあり方に疑問を抱くようになり... 同僚の奥様に貸していただいた本. 表紙がひげ面の老人の写真で,副題が「記憶を伝える者」だったので,読むまでは実在するネイティブアメリカンの話だと思っていたのだが,実は未来社会を舞台にしたSFっぽい話だった....
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2007年09月18日

『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

長野県にある「鳥の城」と呼ばれる洋館の主「由良昴允」は,超能力探偵「榎木津礼次郎」に花嫁の護衛を依頼した. この主の花嫁となった女性は,結婚式直後に4人連続で殺されており,今度の花嫁こそは守りたいのだという. 急病で目の見えなくなった探偵「榎木津」と共に,鬱病あがりの小説家「関口巽」が洋館を訪れるのだが... 本編を読むのはかなり久しぶりの京極堂シリーズ.同僚に貸してもらった. この前作である『塗仏の宴』を読んだのは大阪にいた頃だから,7年以上ご無沙汰だったことになる. 相変わらずの分厚さで,約750ページもある. あるのだが......
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2007年09月16日

『反自殺クラブ』石田衣良

池袋ウエストゲートパーク(IWGP)のシリーズ5冊目(外伝を入れると6冊目). 短編3本+中編1本の計4本を収録. 池袋という街を舞台にしながら,いろいろな題材を扱っているのが本作の特徴なわけだが,今回も風俗スカウト,ロックスター,中国製の人形,自殺サイトと幅広い. このシリーズは文庫で読むことにしているのだが,だいたいハードカバーで新作がでると,その一つ前の作品が文庫化されるのがパターンだったのだが,今回はハードカバーで7作目が出てから5作目の本作が文庫化された. 他社で出ていた外伝を文春文庫から再発行したのでパターンがずれたのかもしれないが,既に他社発行の文庫で外伝を入手済みの私にとっては...
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2007年09月12日

『追伸・こちら特別配達課』小川一水

21世紀,省庁統合によって郵便行政を行っていた郵政省は総務省に統合されたが,全国2万5千局の郵便局と郵便ネットワークは今も健在. しかし変革の波は,ありとあらゆるものを届けるための部署「特別配達課」にも及んで... 『こちら郵政省特配課』の続編なのだが,郵政省の一部署ではなくなったのでタイトルが一部変更になっている. 前作では,国家権力を十二分に活用して民間業者が太刀打ちできないような機材や装備をガンガン使うという,従来の作者の作風とは違った話だったのだが,今回は立場が逆転,弱者の立場で頑張るといういつもの話に戻っている....
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2007年09月10日

『風が強く吹いている』三浦しをん

走ることが好きだが監督と衝突して陸上から遠のいていた「蔵原走」. 大学に入学したものの住む場所のなかった彼は,4回生の「清瀬灰二」の勧めで,竹青荘というアパートに住むことになる. クセのある住人とも仲良くなったある日,「灰二」は住人10名を全員集めて宣言する. 「俺たちみんなで、頂点を目指そう」 そうして,大部分が陸上の素人である10名は箱根駅伝を目指すことになるのだが... 三浦しをんの作品を読むのはこれで2作目.松山市立中央図書館所蔵. 以前読んだのは直木賞を取った『まほろ駅前多田便利軒』だったのだが,こっちの方が圧倒的に面白かった....
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2007年09月05日

『西の魔女が死んだ』梨木香歩

中学に入って登校拒否になった「まい」は静養をかねて,田舎の「おばあちゃん」の家でしばらく暮らすことになった. イギリス人であり,実の娘から「西の魔女」と呼ばれる「おばあちゃん」は,実は本物の魔女であり,同じ血筋である「まい」も魔女としての修行を始めることになるのだが,その修行は想像していたのとは違っていて... 梨木香歩の作品を読むのはこれで7冊目.あまり厚い本ではなく,文字も少なめなのであっという間に読めた. amazonの書評がすごい数になっており,それなのに4つ星半という高評価の作品なのだが,うーん,確かに一部の女性にはかなり受けるだろうなあ. ...
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2007年09月03日

『殺人は広告する』ドロシー・L・セイヤーズ

わがままな広告主に振り回されて混乱する「ピム広報社」の社内でコピーライター「ヴィクター・ディーン」が転落死した. その後任としてやってきた変わり者の新人「デス・ブリードン」は,「ヴィクター・ディーン」の死について嗅ぎ回るのだが... あらすじだけだと分からないだろうが,ピーター卿シリーズの8作目.松山市立中央図書館所蔵. 広告業界を舞台にしているのだが,作者自身がコピーライターとして生計を立てていた経験があるためか,かなりリアリティがある....
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2007年08月31日

『投資銀行青春白書』保田隆明

外資系証券会社の投資銀行本部に就職した元 女子大生の「ミヤビ」. しかし,経済の知識ゼロの上,浮かれ気分で海外研修を受けてきた彼女を引き受けてくれる部署はなかった. 仕方なく,採用にあたって口添えした「平井」が自分のチームで引き受けることになり,部下の「梶田」を教育係として付けたのだが... ブログ界では有名な元投資銀行マンによる小説仕立てのビジネス書,になるのかなあ.松山市立中央図書館所蔵. 表紙がかなり軽め(ライトノベルっぽい)のだが,中の文体も軽めで,字数も少ないのでサクサク読める.知識ゼロの主人公に先輩が仕事を教えるという形なので,経済についての予備知識もほとんど必要ナシ....
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2007年08月30日

『あなたの町の生きてるか死んでるかわからない店探訪します』菅野彰×立花実枝子

裏表紙に掲載されているコピーがこの本の内容を最も的確に表していると思うので引用. あなたが怖くて入れないそのお店、生きているか死んでるか判定しましょう。 ネットの書評で見かけて,かなり気になっていた本.松山市立中央図書館所蔵. 図書館で見つけるまで実物を見たことがなかったのだが,手にとってちょっと引いてしまった. というのも,この本はエッセイ(菅野彰)+イラスト&マンガ(立花実枝子)で構成されているのだが,その絵の方で自分たちがネコとして描かれており,そのネコが微妙にリアル&和服を着ているので,化け猫っぽいのだ.まあ,読んでいるうちに気にならなくなったけど....
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2007年08月29日

『死体をどうぞ』ドロシー・L・セイヤーズ

旅行に出かけた探偵作家「ハリエット・ヴェイン」は,波打ち際の岩の上で男性の死体を発見する. その後,死体は満潮のために流されてしまうが,「ハリエット」が撮った写真や確保した証拠を元に捜査が始められることに. そして,騒動を聞きつけた探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」がやってきて... ピーター卿シリーズの7作目.松山市立中央図書館所蔵. 前作には登場しなかったヒロインの「ハリエット」が再び登場....
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2007年08月26日

『心を開かせる技術』本橋信宏

インタビューの名手として活躍してはいるが,実は口べたで初対面の人と会うのが億劫で仕方がないような著者.そんな内気な人間による新しいコミュニケーション論,らしい. 私はひきこもり属性の強い内気な人間なのだが,実家が大金持ちというわけではないので,安心してひきこもることもできず,生きていくために外でお仕事をしている. で,仕事柄,人と話をすることもそれなりにあるので,そのときのヒントにでもなればいいかなあと思って読んでみた. ...
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2007年08月25日

『マルドゥック・ヴェロシティ』冲方丁

肉体改造された軍人が集められた研究所.そこで「ボイルド」は無垢なネズミ型万能兵器「ウフコック」と出会って救われた. 研究所廃棄の決定のために選択を迫られた「ボイルド」は,同じ境遇の仲間たちと共にマルドゥック市に向かう.自分たちの新しい「有用性」を求めて... 『マルドゥック・スクランブル』の続編というか,時間的には前日談に相当する作品.前作では,「ボイルド」の「ウフコック」に対する執着が理解できなかったのだが,なるほど,こういう背景があっての執着だったのか....
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2007年08月20日

『百鬼徒然袋 雨』京極夏彦

大財閥の御曹司であり,超美男子である「榎木津礼次郎」は自称「名探偵」. 依頼を解決しようとは露ほども思わず,自分のやりたいことをやりたいようにやるだけなのに,なぜか以来は解決してしまう... 京極夏彦の京極堂シリーズからのスピンオフ作品.同僚に貸してもらった. オリジナルの京極堂シリーズについては,『塗仏の宴』までは読んでいたのだが,うーん,京極堂って,こんな性格だったっけ? もっと暗かったような気がするんだけど....
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2007年08月19日

『東亰異聞』小野不由美

江戸が「帝都 東亰」に変わって29年. その夜は,火炎魔人や闇御前,人魂売りなどの人ならざるものが闇夜に跋扈するものになってしまった. 新聞記者の「平河」は何でも屋の「万造」と共に一連の怪異を追ううちに,名門である鷹司公爵家の相続問題に行き当たるのだが... 色々なホラーも書いているが,私にとっては『十二国記』の作者である小野不由美の作品.カテゴリーとしては伝奇ミステリになるらしい....
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2007年08月15日

『子どもたちは夜と遊ぶ 上下』辻村深月

留学がかかった論文コンクールに応募した「狐塚」と「浅葱」. しかし,コンクールは「i(アイ)」と名乗る正体不明の人物の論文のため,無効になってしまう. その後,同じく「i」を名乗る人物がゲームを開始する.「θ(シータ)へ 待っているよ、次は君の番だ 」 そのメッセージを受け,殺人ゲームを始めた「θ」.その正体は「浅葱」だった... 辻村深月の『冷たい校舎の時は止まる』に続く2作目. 舞台が誰かの精神世界という超自然的な存在だった前作に比べると,かなり現実的な話なのだが,主人公の一人がトラウマを抱えた美形の天才だったりするので,ちょっと漫画チックではある....
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2007年08月13日

『動物園の鳥』坂木司

保険会社に勤める「坂木司」と,ひきこもりプログラマーであり,天才的な推理力の持ち主である「鳥井真一」. そんな二人に持ち込まれた今回の依頼は,動物園の園内で見かける虐待された野良猫の問題. 現場を見るべく動物園を訪れた二人は,そこで昔の知り合いに出会うのだが... ひきこもり探偵とその友人を描いた『青空の卵』,『青空の卵』の続編.松山市立中央図書館所蔵. このシリーズも本作で完結ということで,これまでの連作短編ではなく,1冊で1つの長編になっている. あいかわらずの歪んだ関係なわけだが,それも本作でいちおうの終止符が打たれている....
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2007年08月10日

『五匹の赤い鰊』ドロシー・L・セイヤーズ

スコットランドの田舎町で,嫌われ者の画家が死体で発見された. 事故死に見せかけた他殺だと見破った探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」は,容疑者である6人の画家についての調査を開始する. しかし,容疑者の誰もが曖昧なアリバイしかもっておらず... ピーター卿シリーズの6作目.松山市立中央図書館所蔵. 前作でようやく登場した「ハリエット・ヴェイン」とピーター卿の関係はどうなるのかな?とページを読み進んでみたのだが......
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2007年08月08日

『毒を食らわば』ドロシー・L・セイヤーズ

元恋人を砒素で毒殺した容疑で裁判にかけられた女流作家「ハリエット・ヴェイン」. 彼女に恋をした探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」は,彼女を救うべく,調査に乗り出す... ピーター卿シリーズの5作目.松山市立中央図書館所蔵. この登場人物のおかげでシリーズの作風が変わったほどの重要人物であり,後半のヒロインでもあるらしい「ハリエット・ヴェイン」が登場. 登場したのだが......
投稿者 さい
2007年08月07日

『あの娘は英語がしゃべれない!』安藤優子

ニュースキャスターとして活躍している著者が,アメリカ留学したときの体験をつづった本. もともと大阪にいたころ,近所の図書館で見かけて読もうと思っていたのだが,その後まったく見かけなくなってしまい,いつしか忘れていた本. 先日,松山市立中央図書館で見かけたので借りてきた. 著者が有名人ということを除けば,よくある留学体験記なのだが,ホストファミリーになった家族がちょっと特殊. ...
投稿者 さい
2007年08月04日

『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

基本的にベストセラー物というか,評判が高い新刊は読まないことにしているのだが,巡回しているBlog(複数)でえらく絶賛されていたので,めずらしく新刊のうちに読んでみることにした. 「生物とは何か?」という問いについて,シェーンハイマーという学者の主張である「動的平衡」という概念を紹介するのだが,その概念に辿り着くまでの生物科学の研究の変遷が分かりやすい文体で描かれている. 内容の多くはDNA関連の話なのだが,単にDNAや関連技術の話をするのではなく,それらの発見者のエピソードを中心に書いているところが評価の高い理由なんだろう....
投稿者 さい
2007年08月02日

『「ロボット」心理学』佐々木正悟

帯には「人間はどうして退屈してしまうのか?」とあるのだが,その問いに対して「ネオフィリア」と「ロボット」という概念を使って答えた本. 最初に生協で見かけたときは,「AI(人工知能)の知識を使った心理学の本かな?」と思って手に取ってみたのだが,全然そういう本じゃなかったので買わなかった. その後,著者がLifeHack関連でこのところ有名になっている人だということに気がついたので,改めて読んでみた....
投稿者 さい
2007年07月31日

『仔羊の巣』坂木司

保険会社に勤める「坂木司」と,ひきこもりプログラマーである「鳥井真一」. 「坂木」の努力と「鳥井」の天才的な推理力によって,「鳥井」の世界は徐々に広がっていくが... ひきこもり探偵とその友人を描いた『青空の卵』の続編.松山市立中央図書館所蔵. 微妙に歪んでいた前作だが,本作もやっぱり歪んでいた.うーん,これは前作以上に好き嫌いが分かれるかも....
投稿者 さい
2007年07月28日

『経営の大局をつかむ会計』山根節

名前から分かるように,このところ,世の中に溢れている会計についての本. しかし,これまでに読んだ会計関連の本の中で一番面白かった. 副題は「健全な"ドンブリ勘定"のすすめ」ということで,細かい会計の知識を得るのが目的ではなく,大雑把でもいいから実際に使える知識というか感覚を身につけることを目的とした本. で,そのために一番手っ取り早いのが,実際の企業の財務諸表と格闘することだとして,この本の中でも実際の企業の財務諸表を使っている....
投稿者 さい
2007年07月24日

『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』林總

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』というか「女子大生会計士」シリーズ以来というべきか,めっきり増えた会計関連の知識を物語仕立てで学べるタイプの本. 副題が「読むだけで『経営に必要な会計センス』が身につく本!」ということなのだが,この本でとりあげられているのは会計の中でも「管理会計」という分野が中心. ...
投稿者 さい
2007年07月21日

『スロウハイツの神様 上下』辻村深月

売れっ子脚本家「赤羽環」が大家であるスロウハイツには,彼女の友人でありクリエイターの卵である「狩野壮太」「長野正義」「森永すみれ」,そして若者に絶大な人気を誇る小説家「チヨダ・コーキ」らが幸せに暮らしていた. しかし,彼らを巡る状況は徐々に変化していき,ある日,新たな入居者が現れて... 現時点での辻村深月の最新作になるのかな.三津浜図書館所蔵. あいかわらず微妙に痛い登場人物が多かったりするのだが,それはクリエイターという職業ゆえか....
投稿者 さい
2007年07月20日

『青空の卵』坂木司

保険会社に勤める「坂木司」は友人である「鳥井真一」の部屋を今日も訪れる.ひきこもりのプログラマーであり,料理が上手な「鳥井」を少しでも外に引きずり出すために. そして,「鳥井」に外界への関心を持たせるため,「坂木」は自分の遭遇した小さな謎を語り,それを「鳥井」は... この作者の本を読むのはこれが初めて.松山市立中央図書館所蔵. 最初は同じ作者の違う本を借りようと思っていたのだが,探偵役がひきこもりで社会復帰のために謎を解くという設定が面白そうだったので,本作を借りてみることに.結果として,これが正解だったようで,けっこう面白かった....
投稿者 さい
2007年07月18日

『ひらきこもりのすすめ 2.0』渡辺浩弐

図書館の貸出枠が余っていたので,何か適当な本はないかと思って棚を見ていたところ,「ひきこもりのすすめ」というタイトルに惹かれて借りた本. 松山市立中央図書館所蔵. しかし,タイトルを見間違っていたようで,内容は「ひきこもり」ではなく「『ひらき』こもり」を薦めるものだった. その「ひらきこもり」というのは,部屋に引きこもりながら好きなことをやって,ネットを通じて好きなことについての情報発信をすることで,世界に対して開かれよう,というもの....
投稿者 さい
2007年07月16日

『ベローナ・クラブの不愉快な事件』ドロシー・L・セイヤーズ

元軍人の集まるベローナ・クラブにメンバーが集まった夜,老齢で心臓に持病のあった「フェンティマン将軍」が座ったまま死んでいるのが発見された. 同じ日の朝に亡くなった資産家の妹と交わした遺言のため,将軍の正確な死亡時刻を確定して欲しいとの依頼を受けた探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」だったが... ピーター卿シリーズの4作目.松山市立中央図書館所蔵. 主要な舞台として,タイトルにもなっている「クラブ」が出てくるわけだが,これがどういう物なのかがよく分からない. 同じくイギリスの上流階級が舞台になっている『ジーヴス』シリーズにも出てくるので,イギリスでは一般的な存在なんだろうけど... ということで調...
投稿者 さい
2007年07月15日

『不自然な死』ドロシー・L・セイヤーズ

癌を患っていた老婦人の突然死.不審に思った医師による検視解剖にも不自然な点は発見されなかったという. 興味を抱いた探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」は独自の調査を開始するが,そこに関係者の新たな死の報せが... ピーター卿シリーズの3作目.松山市立中央図書館所蔵. 以前から「もしかして法廷物?」という疑念を抱いていたのだが,法廷物というよりも「法律物」だったようだ....
投稿者 さい
2007年07月12日

『蛇鏡』坂東眞砂子

婚約者とともに故郷を訪れた「長尾玲」は,実家の蔵の中で,自殺した姉が使っていた不思議な鏡を見つける. 一方,遺跡発掘のために町に滞在している大学助手「田辺一成」はこの遺跡が普通の遺跡でないように感じていた. 偶然再会した二人は,鏡が縁となって急接近するのだが... 同僚の奥様に貸していただいた本. 上のあらすじだと,普通の恋愛小説みたいだが,坂東眞砂子の作品である以上,そんなはずはなく,ちゃんとした土着ホラー(?)小説. ...
投稿者 さい
2007年07月10日

『フラッタ・リンツ・ライフ』森博嗣

「クサナギ・スイト」の部下である「クリタ・ジンロウ」は,撃墜された同僚の妻だという女性と親しくなる.しかし,彼女の正体は... 『ダウン・ツ・ヘヴン』の続編なのだが,主人公は違っているし,時間軸的には第1作の『スカイ・クロラ』の直前に当たる作品. 松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2007年07月07日

『泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部』酒見賢一

三顧の礼をもって,「劉備」の軍師に迎えられた「諸葛孔明」.しかし,その進言を「劉備」に受け容れてもらえない「孔明」は,意味もなく平原を燃やしたりしていた.しかし,ついに「曹操」の軍団が攻めてきて... 大笑いさせてもらった『泣き虫弱虫諸葛孔明』の続編.三津浜図書館所蔵. 正直なところ,前作ほどのインパクトはないものの,それでも十分に大笑いさせてもらった. ...
投稿者 さい
2007年07月06日

『死国』坂東眞砂子

20年ぶりに高知県の故郷を訪れた「比奈子」は,初恋の相手である「文也」と再会し,恋に落ちるが,二人の周りには異常な出来事が頻発するようになる.それは18年前に事故死した「莎代里」が起こしていたものだった. 巫女の血筋である彼女を黄泉帰らせるため,彼女の母親が遍路を逆に巡る"逆打ち"を行っていたのだ... 入院中の暇つぶしとして,同僚の奥様に貸していただいた本の一冊. 昔,映画にもなった作品で,座敷牢のようなところに閉じこめられた制服姿の少女が「早くここから出たいがよ」みたいな台詞を言っていたCMが印象的だった. しかし,全部読み通しても,そのようなシーンは全く出てこない. それに,どういうわけ...
投稿者 さい
2007年07月02日

『斜め屋敷の犯罪』島田荘司

宗谷岬の高台に建つ奇妙な建物「流氷館」.会社社長「浜本幸三郎」によって最初から斜めに造られたこの屋敷で,クリスマスの夜に密室殺人が発生する. 不可解な状況に難航する捜査.そして,捜査のために滞在していた警察が監視する中,第二の密室殺人が... 同僚に貸してもらった本なのだが,島田荘司の本を読むのはこれが初めて. 島田荘司と言えば,本格ミステリの代表的な作家で「御手洗潔」シリーズが有名な作家だが,本作は「御手洗潔」シリーズの二作目にあたるらしい.でも,本人が登場するのは後半からだったりする....
投稿者 さい
2007年06月29日

『神の守り人 来訪編+帰還編』上橋菜穂子

ロタ王国で,「バルサ」と「タンダ」は幼い兄妹「チキサ」と「アスラ」を助ける.「アスラ」が命を狙われる理由,それは彼女が「タルマハヤ」をこの世に呼び戻す力を持っているためだった.亡き母の教えのため,その力を使うことに罪悪感を感じない「アスラ」に対して「バルサ」は... 『守り人』シリーズとしては第4作目になるのかな? 今回は前後編の2冊組.三津浜図書館所蔵. ...
投稿者 さい
2007年06月27日

『モノレールねこ』加納朋子

世代も性別も種族(?)も異なる主人公の一人称小説を集めた短編集. 読むのはえらく久しぶりの加納朋子作品.調べてみたら1年ぶりくらいだった.三津浜図書館所蔵. 加納朋子と言えば,日常の謎系のミステリなわけだが,本作は「日常」ではあるけど,「謎」はほとんど無かった. amazonの書評を読んで初めて気がついたのだが,テーマは「家族」らしい....
投稿者 さい
2007年06月25日

『嗤う伊右衛門』京極夏彦

大工仕事をして糊口をしのぐ生真面目な浪人「伊右衛門」は,「御行の又市」の仲介で,民谷家に婿入りし,病で醜くなってしまった「お岩」と夫婦になった.お互いを想いつつも諍いが絶えない二人に,かつて「お岩」に袖にされた上司「伊東喜兵衛」の陰謀が迫る... 入院中の暇つぶしとして,同僚の奥様に貸していただいた本の一冊. 四谷怪談をベースにしているということは知っていたので,夜の病院で読むのはどうなんだろう?と思いつつ読み始めたのだが......
投稿者 さい
2007年06月21日

『さいえんす?』東野圭吾

もともと理系で直木賞作家でもある作者が科学について書いたエッセイ集. 三津浜図書館所蔵. 東野圭吾のエッセイ集というので,『あの頃ぼくらはアホでした』みたいな笑えるものを想像していたのだが,全然違っていた....
投稿者 さい
2007年06月20日

『虚空の旅人』上橋菜穂子

新ヨゴ皇国の皇太子「チャグム」は星読博士の「シュガ」とともに,新王即位の儀を控えた海洋国サンガルを訪れる.サンガルの第二王子「タルサン」たちと交流を深めるチャグムらであったが,その王宮の裏側では,南の大国タルシュ帝国による陰謀が進んでいた... 三津浜図書館所蔵. 『守り人』シリーズの外伝というか,最近でいうところのスピンアウト作品. 『守り人』シリーズの主人公は女用心棒バルサだが,この『旅人』シリーズは皇太子チャグムが主人公ということになるのかな....
投稿者 さい
2007年06月18日

『夢の守り人』上橋菜穂子

女用心棒の「バルサ」は人さらいに狙われていた「ユグノ」を助ける.彼は<木霊の思い人>と呼ばれる精霊に愛された歌い手だった. その頃,呪術師「タンダ」の姪「カヤ」は謎の眠りに落ちていた.治療方法に悩む「タンダ」に対して,師匠の「トロガイ」は<花の夜>について語る... 『守り人』シリーズの第3作.普段は図書館で借りるのだが,この巻だけは某教員の奥様に貸していただいた. ...
投稿者 さい
2007年06月16日

『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹

山の民の娘でありながら名家に嫁ぐことになった千里眼の「万葉」, 万葉の娘で伝説的な暴走族の頭であった「毛鞠」, そして毛鞠の娘で,平凡な存在である「瞳子」. 山陰で製鉄に携わる旧家に生きる3世代の女性たち... 最近ではライトノベルから一般小説に軸足を移しつつある桜庭一樹の作品.三津浜図書館所蔵. 構造だけを見ていくと「地方都市を舞台にした少女が主人公の小説」という作者のいつものパターン. でも,最後の「瞳子」の話はそのとおりではあるものの,他の二つの話の主人公である「万葉」「毛鞠」が普通の存在ではないので,かなり印象が違っていた....
投稿者 さい
2007年06月13日

『雲なす証言』ドロシー・L・セイヤーズ

探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」の兄であり貴族院議員「ジェラルド」が殺人容疑で逮捕された.被害者は妹「メアリ」の婚約者「キャスカート大尉」. 無罪を主張するもののアリバイ証言を拒否する兄と,その証言が信用できない妹を救うべく,「ピーター」は名執事「バンター」と共に各地を飛び回ることに... 『誰の死体?』に続くピーター卿シリーズの2作目.松山市立中央図書館所蔵. 主人公があいかわらずスーパーマンぶりを発揮しているのだが,前作ほど鼻につかなくなっているのは私が慣れてしまったせい?...
投稿者 さい
2007年06月10日

『それゆけ、ジーヴス』P.G.ウッドハウス

イギリスの上級階級の一員で,働かずにブラブラと生活をしている「バーティー」の元に,今日も友人や従兄弟がトラブルを持ち込んでくる.そんなトラブルを執事の「ジーヴス」が見事に解決していく... タイトルから分かるように,『比類なきジーヴス』と同じシリーズ物.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2007年06月08日

『サマー/タイム/トラベラー 全2巻』新城カズマ

幼馴染の「悠有」に突如発現した,3秒間だけ未来に跳ぶ能力.その能力を分析・開発するため,お嬢様学校に閉じ込められている「饗子」,郷土の権力者の息子である「涼」,物騒な噂を多数持っている「コージン」,そしてシニカルな「ぼく(卓人)」はプロジェクトを開始した. その一方,街には放火事件が続発し,そして「悠有」の元に謎の脅迫状が... 帯には「時間改変も並行宇宙もない、ありきたりの青春小説」「宇宙戦争も銀河帝国もない、完璧な空想科学小説」とあって,かなり間口が広そうにも思えるのだが,全然そんなことはなかった. いや,話の本筋は確かに帯にある惹句のとおりなのだが,散りばめられているネタがなあ......
投稿者 さい
2007年06月06日

『野口体操入門』羽鳥操

『ことばが劈かれるとき』で興味を持った野口体操の入門書. 松山市立中央図書館所蔵. 野口体操の創始者である野口三千三の思い出とともに野口体操の原理などの説明がされているパートと,実際に野口体操を写真入りで説明しているパートに分かれている. メインは写真入りの説明だと思うのだが,そこに書かれているとおりにやってみた....
投稿者 さい
2007年06月04日

『ことばが劈かれるとき』竹内敏晴

幼時に耳を病んだため,耳が長いあいだ聞こえず,そのために話すことのできなかった著者が,努力と訓練によって「ことば」と「こえ」を回復し,その体験を治療や教育に活かすまでの過程をつづった本. もともとは鹿野司の科学エッセイで紹介されていた本なのだが,最近,読む本が小説に偏り過ぎな気がしていたので,以前買ったままで積んであった本から小説以外の本ということで選んでみた. タイトルの「劈かれる」だが,これで「ひらかれる」と読む.この「劈く」というのが本書の一つのキーワードであり,「からだが劈かれる=からだが世界に向かって自己を越えること」と定義されているのだが,うーん,ちょっと説明が難しいなあ....
投稿者 さい
2007年06月03日

『アラビアの夜の種族』古川日出男

ナポレオン率いる近代軍隊が近づきつつあるエジプト. 自らの騎士団による撃退を信ずる首脳陣の中,ただ一人敗北を予感していた「イスマーイール・ベイ」は,寵愛する執事「アイユーブ」の計略に従うことを決める. その計略とは,これまで多くの権力者を破滅に追いやった『災厄の書』を翻訳してナポレオンに献上すること. しかし『災厄の書』は実際には存在しておらず,その存在を新たに作り上げるため,「アイユーブ」は伝説的な語り部「ズームルッド」を招く... 出版された当時,えらく評判になっていた作品なのだが,650ページ以上,しかもそのほとんどが上下2段組という大作のため,これまで手をつけられずにいた. 入院のおか...
投稿者 さい
2007年05月29日

『鴨川ホルモー』万城目学

京都大学に入学したばかりの「安部」は食費を浮かすため,サークル活動には興味がないのに新歓コンパを回る毎日. しかし,「京大青竜会」という怪しいサークルの新歓で出会った「早良京子」に一目ぼれした「安部」は,彼女と一緒にいたいがために京大青竜会に入会することに. そして迎えた祇園祭の宵山.ついに京大青竜会の正体が明らかにされた.青竜会とは式神を使って戦う競技「ホルモー」を行うためのサークルだったのだ... 最初に書店で見かけたときから興味を持っており,チェックリストに入れてはいたのだが,なかなか遭遇できなかった. そうこうしているうちに本屋大賞の候補になってしまったので,これは予約を入れないと読め...
投稿者 さい
2007年05月26日

『旅涯ての地』坂東眞砂子

「マルコ・ポーロ」一族が元王朝から故郷ヴェネチアに戻ってきたとき,一行の中に宋人と倭人の血を引く奴隷「夏桂」がいた. 「マルコ・ポーロ」らが追い求める「聖杯」を巡る騒動に巻き込まれ,その渦中の中で「聖杯」を手に入れた「夏桂」だったが,奴隷からの解放を目指す計画に失敗,投獄されることに. そこに救いの手を差し伸べたのは「聖杯」の本来の所有者でもある異端カタリ派の女伝道師「マッダレーナ」であった... 某教員の奥様に貸していただいた本で,上下2段組で550ページという大作だったのだが,入院中の暇な時間を使って1日で読みきってしまった. ...
投稿者 さい
2007年05月24日

『ダウン・ツ・ヘヴン』森博嗣

「ティーチャ」が去った今,会社のエースとなった「クサナギ・スイト」. ただ空で戦うことだけが望みの彼女に対して,会社は他の存在価値を見いだし... 『ナ・バ・テア』の直接の続編. 松山市立中央図書館所蔵. 前作の直接の続編であり,登場人物はほとんど共通だったので,分かりやすかった. ...
投稿者 さい
2007年05月22日

『大河の一滴』五木寛之

作家である五木寛之が自身の人生に対する考え方を述べたエッセイ,という位置づけでいいのかな? 某教員の奥様に貸していただいた本. 今回貸していただいたのは文庫版だったのだが,最初はハードカバーで1998年に刊行されたもの. 当時はベストセラーとしてメディアでも多く取り上げられていたような気がするが,まったく興味がなかったので内容は全然知らなかった....
投稿者 さい
2007年05月19日

『悪魔と詐欺師』高里椎奈

白昼堂々の毒殺,列車による事故死,飛び降り自殺,昼食をのどに詰めての窒息死,手首を切っての自殺,亡き恋人の復讐のための殺害. 住所も職業もバラバラのこれらの事件,その共通点とは? 情報屋「シャドウ」の提示した謎に答えるべく,薬屋探偵の「座木」「リベザル」,そして刑事の「高遠」「御」は協力して謎に挑むことに. そして,その頃,一人単独行動をとる「秋」は... 薬屋探偵妖綺談シリーズも3冊目.松山市立中央図書館....
投稿者 さい
2007年05月17日

『高学歴男性におくる弱腰矯正読本』須原一秀

以前読んだ『超越錯覚』と同じ著者による本で,副題は「男の解放と変性意識」. 『超越錯覚』の感想を書くときに検索してみると,こちらの本の方が取り上げられることが多い感じ.まあ,刺激的なタイトルだからな. 近場の図書館にあるかどうか検索してみたところ,元・中島町の図書館と松山大学の図書館に所蔵されていた.松山大学はともかく,どうして中島町に? ということで,松山市立中央図書館経由で取り寄せてもらった....
投稿者 さい
2007年05月16日

『ひとがた流し』北村薫

アナウンサーで独身の「千波」,小説家でバツイチの「牧子」,同じくバツイチだが現在は再婚して夫である写真家をサポートしている「美々」. 高校からの友人で,現在は家族ぐるみのつきあいをしている3人とその家族に訪れる事件と転機... 松山市立中央図書館所蔵. このところ,「北村薫=日常の謎系の作家」というイメージも徐々に崩れつつあるが,本作も日常の謎系のミステリではなかった. というのも,描かれているのは基本的に日常生活ではあるものの(写真家やアナウンサーの生活を「日常」といえるのかどうかは疑問だが),謎の要素がかなり薄いため....
投稿者 さい
2007年05月14日

『向日葵の咲かない夏』道尾秀介

小学4年生の「僕」は学校を休んだ「S君」の家で彼の首吊り死体を発見する. しかし教師と警察が家に駆けつけたとき,なぜか死体は無くなっていた. その1週間後,「僕」と3歳の妹「ミカ」の前に「S君」の生まれ変わりが現れて,死体を探して欲しいと訴えるのだが... 『シャドウ』『片目の猿』の作者の第二作目にあたる作品.元同僚に貸してもらった. 冒頭から,嫌な雰囲気がひたひたと押し寄せてくるので,嫌な予感を持ちつつ読み始めたところ......
投稿者 さい
2007年05月13日

『あさきゆめみし 全13巻』大和和紀

日本が誇る文学作品『源氏物語』のマンガ版. 某教員の奥様に貸していただいた. いわゆる名作文学とは縁遠い読書生活を送ってきた私なので,『源氏物語』はもちろん未読. そんな私の『源氏物語』像というのは, ロリコンとマザコンを併発したプレイボーイがあちこちの女性に手を出しまくる話 というもの.あながち間違ってはいないと思っていたのだが,実はかなり間違っていた....
投稿者 さい
2007年05月10日

『アルゼンチンババア』よしもとばなな

街はずれの廃屋のようなビルに住む変わり者の「アルゼンチンババア」.母を亡くした「みつこ」は,自分の父親が「アルゼンチンババア」と住んでいるという噂を聞き,その真偽を確かめるべくビルに向かう... 『かげろう絵図』と同じく,入院中に同僚が差し入れてくれた本. やはり選ばれた理由は不明だが,『かげろう絵図』がやたらと分厚かったのに対して,これは挿絵を入れても100ページもない薄い本なので,きっとバランスをとるためだろう....
投稿者 さい
2007年05月08日

『かげろう絵図 上下』松本清張

将軍職を退くも大御所として権力を振るう「徳川家斉」.その愛妾の養父としてこの世の春を謳歌する「中野石翁」とその一党.これらの勢力の一掃を図る老中「水野忠邦」と寺社奉行「脇坂淡路守」. 脇坂を助けるため,旗本の「島田又左衛門」は姪の「縫」を「登美」として大奥に送り込む.一方,又左衛門の甥「新之助」とその友人である医師「良庵」もふとしたことから騒動に巻き込まれることに... 入院中,同僚が差し入れてくれた本. この本が選ばれた理由は定かではないが,文庫ながら上下で1100ページという大作という長さ&「著者が『愉しさを第一に』取り組んだ傑作時代小説」(紹介文より)が暇つぶしにちょうどいいと判断された...
投稿者 さい
2007年05月05日

『レディー・ヴィクトリアン 全20巻』もとなおこ

淑女に唯一許された職業「女家庭教師(ガヴァネス)」になるべく,ロンドンにやってきた少女「ベル」は,女家庭教師としての新生活を始めた途端,殺人犯と間違われて投獄されることに. そこを救ってくれたのが,「ベル」の愛読している雑誌の出版社オーナー「ノエル」と「銀のレディー」と呼ばれる侯爵令嬢「レディー・エセル」. だが,完璧なレディーである「レディー・エセル」は実は貧民街出身の男性で,しかも「ベル」が大ファンである小説家「アージェント・グレイ」だった... 某教員の奥様が退屈な入院生活を慰めるために貸してくれた長編マンガ. 以前も同じ作者の『悠かなり愛し夢幻』を貸してもらって,その甘ったるさに悶絶し...
投稿者 さい
2007年04月18日

『誰の死体?』ドロシー・L・セイヤーズ

資産家の名門貴族の次男坊である「ピーター・ウィムジィ卿」の趣味は初刊本蒐集と犯罪捜査. 知人宅で発見された正体不明の死体と行方不明になった財界の大物という二つの謎を解くため,有能な執事「バンター」とスコットランド・ヤードの警察官「パーカー」とともに捜査に乗り出す... 松山市立中央図書館所蔵. 1920年代に発表された作品で,著者のセイヤーズは「クリスティと並ぶミステリの女王」(背表紙の紹介より)であり,英語圏ではかなり人気があるらしいのだが,そのわりには名前を聞いたことがなかったような. そもそも読んでみようと思ったのは,『犬は勘定にはいりません』の解説で紹介されていたため....
投稿者 さい
2007年04月16日

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹

いんらんな母の存在と自身の美貌のため,肩身の狭い思いをしている「川村 七竈」は,親友の「桂 雪風」とともに,鉄道模型に興じる日々を過ごしていたのだが... 読むのはこれで5冊目の桜庭一樹作品.松山市立中央図書館所蔵. 桜庭一樹といえば,これまでも「地方在住で家庭的に恵まれていない少女が戦う」という作品が多いのだが,これもその系統で,旭川という地方都市が舞台. ライトノベルではなく,角川書店から出版されているハードカバー作品なのだが,古風な言葉遣いをする鉄道マニアの美少女が主人公の話,と聞くと,「ああ,マニア層ねらい打ちだな」と思うかもしれないが,これが全然そうじゃなかった....
投稿者 さい
2007年04月14日

『深い河』遠藤周作

「磯部」は亡き妻の生まれ変わりを探すため, 「美津子」はかつて自分が誘惑した神学生を訪ねるため, 「沼田」は自分を救ってくれた鳥たちへの恩返しのため, 「木口」は戦争中に自分を救ってくれた戦友の供養のため, 彼らはそれぞれの理由で同じツアーのメンバーとなり,母なる河ガンジスのほとり,ヴァーラーナスィへ... 某教員の奥様に貸してもらった本. 読書量はそれなりにあるのに,いわゆる有名文学作品を読んだことがない私にとって初めての遠藤周作作品. ちょっとハードルが高いかなあ,と思いつつ読んでみたところ,それぞれの登場人物の物語が最終的に一つに結びついていくという,私好みのタイプ(=グランドホテル形式...
投稿者 さい
2007年04月12日

『秘密 3巻』清水玲子

ある夏の日,全身の皮を剥がれた大学生の遺体が発見された. 科警研法医第9研究室,通称「第9」のMRIスキャナーは,死者の脳から動物の着ぐるみに殺される映像を再生する.しかし,死者の脳にはその着ぐるみが5年前にも別の殺人を犯していることを示す映像も残っていた. どうして殺された大学生は5年前の殺人を秘密にしていたのか... 卒業生にして元 同僚な人が貸してくれた本. 以前に読んだ1-2巻と同様,あいかわらず死体がガンガン登場するわけで,その手のやつがダメな人にはオススメできないものの,話はやっぱり良くできている....
投稿者 さい
2007年04月11日

『紙魚家崩壊』北村薫

北村薫の短編集. 9つの短編が収められており,同じシリーズのものも2つずつあるが,基本的には全部違う話. 何の予備知識もなしで読み始めたので,いつものような日常の謎系か,きれいな話の短編集だと思っていたら,期待通りの日常の謎系の話から,思ってもみなかったサイコホラー系の話まで,かなりバラエティに富んだ短編集だった. 松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2007年04月07日

『はいからさんが通る 全4巻』大和和紀

大正時代,女学院に通う男勝りの「花村紅緒」は,祖父の代の約束によって,「伊集院少尉」の婚約者となることに. 納得できない紅緒は,婚約を破棄させるため,華族でもある伊集院家に乗り込むのだが... 某教員の奥様に貸してもらった本. TVアニメになったり,南野陽子の主演で映画化されてたりするので,何となく内容は知っている気になっていたのだが,今回,原作を読んでみて,全然知らなかったことが判明. そうか,こういう話だったのか......
投稿者 さい
2007年04月05日

『進化しすぎた脳』池谷裕二

副題が「中高生と語る[大脳生理学]の最前線」ということで,現役の脳科学者である『海馬 脳は疲れない』の著者が,中高生を相手に授業をしたものをまとめたもの. 松山市立中央図書館所蔵. 『海馬』がめちゃくちゃ面白かったので,かなり期待して読んだのだが,ちょっと期待はずれだった....
投稿者 さい
2007年04月03日

『闇の守り人』上橋菜穂子

養父「ジグロ」の最期を伝えるべく,故郷の「カンバル」に向かう短槍使いの「バルサ」は,宝物をもたらす「山の王」の儀式を巡る陰謀に巻き込まれる.一番の短槍使いと「槍舞い」を演じる「闇の守り人」の正体とは... 「守り人」シリーズ第2作.これも三津浜図書館所蔵....
投稿者 さい
2007年03月31日

『精霊の守り人』上橋菜穂子

短槍使いの女用心棒「バルサ」はふとしたことから皇子「チャグム」の守ることを引き受ける. 身体の中に100年に1度だけ卵を産む精霊を宿す「チャグム」の命を狙って,帝の命令を受けた「狩人」と,異世界から現れる天敵「卵食い」が近づく... 荻原規子の「勾玉」シリーズと並び称される和製ファンタジー作品である「守り人」シリーズの第1作. いつもなら松山市立中央図書館で借りるところなのだが,予約がやたらと溜まっていたので,三津浜図書館の方で借りてきた. 以前から読もうとは思っていたのだが,ついつい先延ばしになっていたもの. ようやく読むことができたのだが,どうやらアニメになるそうだ.それで予約が多かったの...
投稿者 さい
2007年03月28日

『一瞬の風になれ 全3巻』佐藤多佳子

兄に憧れて続けていたサッカーを諦めた「新二」は,幼なじみで天才的スプリンターの「連」の走る姿に惹かれて陸上部に入ることに. 当初は遠い目標だったライバルだが,練習に打ち込んでいくうちに,短距離走の選手としての才能を徐々に開花させていく... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本. 帯に「王様のブランチ 2006年のNo.1!」と大きく書かれているものの,私は陸上競技に全く興味がない.なので,それほど期待していなかったのだが......
投稿者 さい
2007年03月26日

『ぼくのメジャースプーン』辻村深月

小学校でかわいがっていたうさぎが殺される現場を見てしまい,心を閉ざしてしまった「ふみちゃん」. 「ふみちゃん」の幼なじみで,相手の行動を縛る能力を持っている「ぼく」は,同じ力を持つ「先生」のところに,力の使い方を教わりに行く. うさぎを殺した犯人に与える「条件と罰」を決めるために... 『凍りのくじら』,『冷たい校舎の時は止まる』で,少々痛いものの,かなり面白い作品を書いてきた辻村深月の4作目.松山市立中央図書館所蔵. 発表時期としては『凍りのくじら』の後になるわけだが,これまた面白い&道徳の教科書に使えそうという希有な作品....
投稿者 さい
2007年03月23日

『比類なきジーヴス』P.G.ウッドハウス

イギリスの上級階級の一員で,働かずにブラブラと生活をしている「バーティー」の元に,今日も友人や従兄弟がトラブルを持ち込んでくる.そんなトラブルを執事の「ジーヴス」が見事に解決していく... 『犬は勘定にはいりません』を読んで興味を持った作品.松山市立中央図書館所蔵. 日本ではそれほど知られていないが,英語圏では非常にメジャーなシリーズらしく,アメリカの検索エンジンにAsk Jeevesというのがあったくらい(現在は名前が変わっている)....
投稿者 さい
2007年03月20日

『ナ・バ・テア』森博嗣

伝説の英雄「ティーチャ」のいる基地に赴任してきた「クサナギ・スイト」. 自身の才能と新型機の性能によって,「ティーチャ」に次ぐ地位を得た彼女のもとに,女性のパイロットが部下として配属してくるが... 『スカイ・クロラ』の続編,というか前日談.松山市立中央図書館所蔵. よく意味が分からなかった『スカイ・クロラ』に比べると,圧倒的に分かりやすい. まあ,あくまでも「比べると」の話なのだが....
投稿者 さい
2007年03月17日

『片眼の猿』道尾秀介

私立探偵の「三梨」は,その特徴的な「耳」で業界でも有名. 産業スパイを見つけるため,その耳を使って盗み聴きをしていたところ,珍しい共通点を持つサングラスの女性「冬絵」の存在を知り,すぐさまスカウト. 彼女を相手のビルに潜入させるが,そこで殺人事件が... 『シャドウ』で見事にだましてくれた道尾秀介の新作. 卒業生にして同僚な人が貸してくれた. カバーにトランプの写真が使われており,そのジョーカーが猿っぽいので,これがタイトルの「片眼の猿」かと思っていたら,実は全然関係なかった....
投稿者 さい
2007年03月15日

『アイの物語』山本弘

ヒトが敗北し,地球の支配者がマシンになった未来. 人々の間を渡り歩いて物語を集めている人間「語り部」は,アンドロイド「アイビス」との戦いで負傷,マシンの都市で療養することになる. 怪我が治るまでの間,「語り部」は「アイビス」の語るヒトとマシンに関するフィクションの物語に耳を傾けることになる... 卒業生にして同僚な人に貸してもらった本. 作者はSFやファンタジーも書く作家なのだが,世間的にはと学会の会長というイメージの方が強いのではないだろうか. しかし,この作品,非常に面白かった....
投稿者 さい
2007年03月09日

『フィッシュ・ストーリー』伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の短編集. 「動物園のエンジン」「サクリファイス」「フィッシュ・ストーリー」「ポテチ」の4本を収録. どれも独立した短編なのだが,もともと作品がリンクしていることで有名な作者なので,これもリンクしまくっている. 伊坂幸太郎ファンの卒業生にして同僚な人に貸してもらった....
投稿者 さい
2007年03月07日

『クリティカル進化論』道田泰司&宮元博章

「ものごとをきちんと考え判断すること」=クリティカル・シンキングのための考え方を説明してある本.松山市立中央図書館所蔵. テーマになっているクリティカル・シンキング,本によってはロジカル・シンキングだとか論理的思考とも呼ばれているが,基本的には全部同じもの. この手の本は一時ブームになったこともあって,山のように出版されている. では,他の本と本書の違いは何かというと,本書の副題は「『OL進化論』で学ぶ思考の技法」を見て分かる人もいるかもしれない. 本書は,『OL進化論』というマンガを使ってクリティカル・シンキングを学ぼうという本なのだ....
投稿者 さい
2007年03月03日

『スカイ・クロラ』森博嗣

戦闘機パイロットとして新しい基地に赴任した「カンナミ・ユーヒチ」. 彼はそこで上司である「クサナギ・スイト」と出会う. カンナミの前任者を殺したというウワサのある彼女はカンナミと同じ「キルドレ」だった... 国立大学助教授(現在は退職したらしい)にしてミステリ作家である森博嗣の作品.ただし,ミステリではない? 松山市立中央図書館所蔵. えらく評価が高いので以前から読んでみたかったのだが,ようやく図書館で遭遇したので借りてみた....
投稿者 さい
2007年02月26日

『ねじの回転』恩田陸

時間をさかのぼって歴史に介入することができるようになった未来. しかし,その介入によって発生したと思われる伝染病のため,人類は滅亡の危機にさらされることになった. 本来の歴史に戻すため,国連のプロジェクトは2.26事件を当事者の協力を得てなぞり直すのだが... メジャーな賞こそ獲っていないものの,多くの作品が映像化されいる有名作家である恩田陸の作品. これだけ有名な作家なのに,私は恩田陸作品をあまり読んだことがない.読んだのは『六番目の小夜子』くらいかな? 別に毛嫌いしているわけでもないのだが,どうも縁がないようで... しかし,この『ねじの回転』は私が好きな時間物の名作という評判なので,期待...
投稿者 さい
2007年02月20日

『天使と悪魔 上中下』ダン・ブラウン

ハーバード大学の宗教象徴学の教授である「ロバート・ラングドン」のもとにCERN所長「マクシミリアン・コーラー」から助力を求める電話がかかった. CERNの物理学者が殺害され,その胸にはラングドンが研究している「秘密結社イルミナティ」の焼印が押されていたのだ... 映画化されて話題になった『ダヴィンチ・コード』の前作に当たる作品で,卒業生にして同僚な人が貸してくれた. どうも私は現代を舞台にした翻訳小説は読むのが遅くなる傾向があるようで,そのせいで,この作品はかなり以前から借りていたものの,なかなか手にとらずに借りっぱなしになっていた. さすがにそろそろ読まなければならないと覚悟を決めて読み始め...
投稿者 さい
2007年02月15日

『ボトルネック』米澤穂信

2年前に転落死した恋人を弔うため,東尋坊を訪れた「嵯峨野リョウ」だが,眩暈のために崖から落ちてしまう. しかし,気がついてみると,リョウは自宅のある金沢市の見慣れた公園にいた.釈然としないものを感じつつ,自宅に戻ってみると,そこには生まれなかったはずの姉「嵯峨野サキ」がいた. どうやら,この世界はサキの代わりに自分が生まれなかった世界らしい... 最近のイチオシ作家である米澤穂信の最新作. ほろ苦い青春ミステリが得意な作者であり,本作の主要登場人物も高校生だし,描かれているテーマも青春物にふさわしい. ただし,この作品,ほろ苦い作品ではなくて,...
投稿者 さい
2007年02月09日

『幻夜』東野圭吾

阪神大震災の朝,「水原雅也」は借金のあった叔父を殺すが,その現場を「新海美冬」に目撃されてしまう. しかし,美冬は雅也のことを警察に通報するどころか,雅也を守るような行動を取る.天涯孤独となった二人は共に東京に出て... ドラマ化もされた,『白夜行』の続編であるとも続編でないとも言われている作品. 単独で読んでも通用するという点では続編ではないのかもしれないが,やっぱり続編だろう,これは....
投稿者 さい
2007年02月06日

『安徳天皇漂海記』宇月原晴明

名ばかりの将軍として鎌倉で和歌に打ち込む「源実朝」は,怪しい術を使う怪人「天竺丸」によって江ノ島に導かれる. そこで実朝が見たものは,壇ノ浦で入水したはずの「安徳天皇」を包み込んだ巨大な琥珀だった. 夢を通じて実朝を誘う安徳天皇を鎮めるため,実朝が下した決断とは... 『黎明に叛くもの』の作者による歴史ファンタジー. 本作に先立つ3作は戦国時代を舞台にしたものだが,本作の舞台は鎌倉時代の日本(第1部)と南宋(第2部)で,それぞれ源実朝とマルコ・ポーロが主人公になっている. ベースとなる史実があって,その裏側がでどんなドラマが繰り広げられていたのかを描くという話の構造は『黎明に叛くもの』と同じ....
投稿者 さい
2007年02月02日

『マリアのウィンク』視覚デザイン研究所

副題は「聖書の名シーン集」ということで,『ヴィーナスの片思い』,『天使のひきだし』,『悪魔のダンス』と同じシリーズの本.やっぱり某教員の奥様に貸してもらった. 名画+ヘタウマなマンガ+解説という構成もシリーズ共通. 聖書はちゃんとした形で読んだことはないのだが,紹介されているエピソードの多くはなんとなく知っているものが多い. おそらく,さまざまな著作物や作品で取り上げられているためなんだろうが,それだけ聖書の影響力が強いということだろう.それに比べると,仏教のエピソードってあんまり知られていないような気がする....
投稿者 さい
2007年01月28日

『冷静と情熱のあいだ Rosso』江國香織

ミラノでアメリカ人の恋人と暮らす「あおい」. 静かで満ち足りた日々のはずなのに,かつての恋人「順正」のことが忘れられず,先に進むことができない... 辻仁成と江國香織が,登場人物の男女それぞれの視点から描いた物語のうち,女性側の物語で,やっぱり某教員の奥様に貸してもらった. 辻仁成と違い,江國香織の作品はこれまで何作か読んできたわけだが,どうも合わないような気がする今日この頃. さて,本作はどうだったかというと......
投稿者 さい
2007年01月27日

『冷静と情熱のあいだ Blu』辻仁成

フィレンツェで絵画の修復士の修行をしている「順正」. やりがいのある仕事と大切な人を持ち,それなりに幸せなつもりだったが,かつての恋人「あおい」との間で交わした他愛もない約束,「30歳の誕生日にフィレンツェのドゥオモに一緒に登る」を忘れることができない... 辻仁成と江國香織が,登場人物の男女それぞれの視点から描いた物語のうち,男性側の物語で,某教員の奥様に貸してもらった. 辻仁成は芥川賞作家であり,作品も多数あるのだが,なんだか気取ったイメージがあって私には合わない気がしていたので,これまで読んだことはなかったのだが......
投稿者 さい
2007年01月24日

『こちら郵政省特配課』小川一水

民間運送業者の宅配便に仕事を奪われていた郵政省だったが,「ゆうパック」「ふるさと小包」などの投入で反撃,昭和60年以降は取り扱い数を回復させていった. そして,平成元年.コストを考えなければいけない民間業者では太刀打ちできないようなサービスを提供するための部署,「特別配達課(通称:トッパイ)」が設立された... 久しぶりというほどでもないが(4ヶ月ぶり?),小川一水の作品. ただし,小川一水名義になってから3作目なので,これまで読んだ小川一水作品とはちょっと違っていた. 主人公が「職業意識に燃える人々」ということには違いがないのだが,所属している組織が違っているのだ....
投稿者 さい
2007年01月18日

『悪魔のダンス』視覚デザイン研究所

副題は「絵の中から誘う悪魔」ということで,『ヴィーナスの片思い』,『天使のひきだし』と同じシリーズの本.これも某教員の奥様に貸してもらった. 名画+ヘタウマなマンガ+解説というパターンもシリーズ共通なのだが,基本的に同じような構成要素でできている天使に比べると,悪魔のほうがバラエティがあって面白い....
投稿者 さい
2007年01月17日

『天使のひきだし』視覚デザイン研究所

副題は「美術館に住む天使たち」ということで,聖書などに出てくる天使のエピソードと絵画を紹介している本. 以前読んだ『ヴィーナスの片思い』と同じシリーズで,やっぱり某教員の奥様に貸してもらった. 同じシリーズなので,名画+ヘタウマなマンガ+解説というパターンも一緒なのだが,ギリシャ神話をテーマにしていた『ヴィーナスの片思い』と比べると,マイナーな絵が多いような気がするのだが,これは気のせいだろうか?...
投稿者 さい
2007年01月15日

『冷たい校舎の時は止まる 上中下』辻村深月

センター試験を控えた12月の雪の日,県下で有数の進学校に閉じ込められた同級生の男女8人. どうやっても外に出ることができず,時間が5時53分で止まってしまった校舎.この現象には10月の学園祭で自殺した級友が関係しているらしいが,その名前をどうしても思い出せない8人. しかし,自殺事件の後に撮った写真には級友が7人しか写っていなかった... 昨年読んだ『凍りのくじら』の著者のデビュー作でメフィスト賞受賞作なのだが,いきなり全3巻という大作.松山市立中央図書館所蔵. 『凍りのくじら』は主人公が痛すぎることを我慢できれば,ミステリとしても面白いし,ちょっと感動作だった. じゃあ,その同じ作者のデビュ...
投稿者 さい
2007年01月12日

『脳が「生きがい」を感じるとき』グレゴリー・バーンズ

脳科学の研究成果を元に,人が「生きがい」を感じるのはどのようなときかを明らかにした本. ネットの書評で見かけて面白そうだったのでチェックしていたところ,松山市立中央図書館に入荷(?)したので借りてきた. この本では「生きがい」=満足感であり,この手の感覚を得られるのはドーパミンなどの脳内物質が関係しているというのがよく知られた説. しかし,この本によると,ドーパミン自体は嬉しいときだけでなく,苦痛などのストレスを受けたときにも分泌されており,ドーパミン=満足感というわけではないらしい. そこで,この本の著者(脳科学者)はMRIの一種を使った実験によって,満足感には線条体という脳の器官が関係して...
投稿者 さい
2007年01月10日

『シャドウ』道尾秀介

癌によって母を失った「凰介」は,母の幼馴染である「恵」と会って奇妙な映像を見る. その数日後,「恵」は夫である「水城」の職場で自殺し,その娘である「亜紀」も交通事故に遭う. そして大学病院に勤める父の「洋一郎」も... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本で,『このミステリーがすごい!2007年版』の第3位らしい. 形式としては,章によって視点が変わる変形一人称小説なのだが,これが非常に上手く使われている....
投稿者 さい
2007年01月09日

『犯人に告ぐ』雫井脩介

マスコミに大々的に取り上げられた連続児童殺人事件. 捜査に行き詰った神奈川県警の上層部はニュース番組を活用した「劇場型捜査」を考案. その実行者として白羽の矢が立てられた「巻島」には,かつて児童誘拐事件で取り返しの付かないミスをした経験が... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本. 警察小説の一種なんだろうけど,どうも私は警察小説を手に取ることが少ないようで,過去の記事を検索してみても横山秀夫の『顔』しかヒットしなかった.確か,これも他の人から借りた本のはず....
投稿者 さい
2007年01月05日

『黎明に叛くもの』宇月原晴明

戦国時代,ペルシャ伝来の暗殺術「波山の法」を身につけた二人の青年が天下二分の夢を誓って山を降りた. 青年の一人は「斉藤道三」として美濃の国主となり,もう一人の青年は「松永秀久」として京の奉行にまでなるが,その前に若き「織田信長」が昇る日輪のごとく現れて... 同じ作者の作品で直木賞候補にもなった『安徳天皇漂海記』が面白いというので,その前哨戦として読んだ作品.松山市立中央図書館所蔵. 主人公の松永秀久というのは,戦国時代の実在の武将で,将軍を殺し,主君を殺し,東大寺の大仏殿を焼き討ちした大悪人として悪名高い人物なのだが,イスラムの暗殺教団の技術と知識を身につけていたという設定. 実在の人物をベ...
投稿者 さい
2006年12月31日

『チキタ★GUGU 1-6巻』TONO

人喰いの妖怪「ラー・ラム・デラル」に家族を食べられてしまい,一人生き残った「チキタ・グーグー」. チキタだけが生き残ったのは,彼が「死ぬほどまずい人間」だから.しかし,まずい人間は百年育てると夢のように美味になるという. 100年後に食べられるために,ラー・ラム・デラルに飼育されることになったチキタだが... 2006年も本(マンガを含む)に関する記事を115個ほど書いた.去年に比べると少し少ないが,それでも年100冊以上というのは何とか維持できたようだ. ということで,去年もやった各部門のベスト1を選ぶことにしたわけだが,今年の少女マンガ部門のベスト1は,この『チキタ★GUGU』....
投稿者 さい
2006年12月29日

『酒仙』南條竹則

没落した名家の末裔である「暮葉左近」はその酒徳の高さを見込んで仙人に命を助けられ,救世主である「徳利真人」として復活する. 救世主として聖酒変換をなすべく,飲んだくれて酒徳を高める日々だったが,その前に魔酒を醸す「三島業造」が現れて... 第5回日本ファンタジー大賞優秀賞受賞作で,ネットで見かけた書評でえらく高く評価されていたので読んでみた. 正直なところ,ストーリー的には,不自然というか,脈絡がない(必然性がない)エピソードもたくさんあって,読み終わっても消化不良なところが多くあるものの... とにかく酒が美味そう! 酒の肴が旨そう! という作品....
投稿者 さい
2006年12月27日

『エビアンワンダー 全2巻+REACT全2巻』おがきちか

悪魔と契約し,願いを叶えてもらった負債を,悪人の魂を狩って返済する,穢れた存在「銀符」. 銀符「フレデリカ」は従者である弟「ハウリィ」,彼女らにつきまとう僧侶「フェイ・イ」と共に旅を続ける. 幼い頃,両親に捨てられた彼女が求めた願いとは... 自分の中で2005年の少女マンガ部門のベスト1だった『Landreaall』の作者によるファンタジー漫画. 掲載誌の休刊によって一度は途中終了,掲載誌を移動して『エビアンワンダーREACT』として再開したのだが,ついにこれも完結. 昨年の少女マンガ部門ベスト1は伊達じゃなかった.名作!...
投稿者 さい
2006年12月22日

『面白南極料理人』西村淳

南極昭和基地から内陸へさらに1000キロ,平均気温マイナス57度,最低記録気温マイナス79.7度,世界でもっとも過酷といわれる観測拠点「ドーム基地」.そこで9人の「オッサン」たちは一年間をどのように過ごしたのか? 海上保安庁に所属するコックである著者による,南極での日々や食生活を描いたエッセイ. ネットで紹介されているのを見てチェックリストに入れておいた本.松山市立中央図書館所蔵. マイナス40度ではバナナで釘が打てるらしいが,それよりさらに寒い世界. なのに,なぜか冒頭のカラーページには,南極の景色やペンギンとともに,屋外で裸になっているオッサンたちの写真が......
投稿者 さい
2006年12月21日

『神様のボート』江國香織

「葉子」は娘の「草子」と共に,一ヵ所に落ち着かない 旅がらす の生活を続けている.それは,いつか「あのひと」ともう一度出会うため... 江國香織の作品の中でもかなり評価が高いもので,某教員の奥様に貸してもらった. 江國香織の恋愛系の作品はどうも私に合っていないという気がしていたので,そのあたりの見切りをつけるべく読んでみた....
投稿者 さい
2006年12月20日

『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』リリー・フランキー

九州の小倉で生まれた「ボク」は,「オトン」と別居した「オカン」とともに筑豊で生活することに.そして,オカンを自由にしてあげなければという思いから,一人暮らしをはじめるものの,やはりオカンに頼りっぱなしだったボクだが,ようやく東京でオカンと一緒に暮らせるようになり... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本で,各方面で大絶賛されている作品. 「母子」「病気」「死」の大三元で,「泣けた」「号泣」という声があちこちであがっているのも分からなくはない. だがしかし... ...
投稿者 さい
2006年12月17日

『世界のホットドリンク』プチグラパブリッシング発行

世界各国から集めた85の温かい飲み物をレシピつきで紹介した本. 松山市立中央図書館所蔵. 名前そのまんまの本なのだが,単なるレシピ集ではなく,その飲み物や材料に関してのエピソード,世界20カ国の人に聞いたホットドリンクの思い出などの読み物も充実している. ひとくちにホットドリンクといっても色々あるということがよく分かるのだが,思ったことも色々あった....
投稿者 さい
2006年12月16日

『乱れからくり』泡坂妻夫

玩具会社の創業者一族の一人である「馬割朋広」から妻「真棹」の尾行を依頼された探偵「宇内舞子」と「勝敏夫」. しかし,その二人の前で馬割夫妻の乗った車に隕石が直撃,朋広は死んでしまう.悲しみに沈む真棹に惹かれていく敏夫だが,そんな彼らの前に次々と事件が... 作者の泡坂妻夫は本格ミステリのベテランとして有名な作家なのだが,この作者の本を読んだのは本作がはじめて.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年12月10日

『黄色い目をした猫の幸せ』高里椎奈

妖怪の存在を隠すため,薬屋と同時に探偵稼業も営んでいる「秋」「座木」「リベザル」の三人. 彼らの元を普通の中学生「良太」が依頼人として訪れた.その依頼は「ある中学生を妖怪に食べさせてほしい」というもの.依頼を無視した三人だったが,その中学生がバラバラ死体として発見されて... 前作『銀の檻を溶かして』に続く薬屋探偵シリーズ第2弾.前作同様,松山市立中央図書館所蔵. これまた前作同様,ぶっとんだ設定なわけだが,それなりに普通に読めてしまったのは私が慣れてしまったせいだろうか......
投稿者 さい
2006年12月09日

『ハゲタカの饗宴』ピーター・タスカ

内部抗争のためにイギリスの名門銀行を退職させられた「マーク」は,投資ファンドの一員として,買収された日本の銀行の再建を目指す. 一方,六本木で探偵事務所を営む「ユミ」の元に,ある銀行頭取の死の謎を解明してほしいとの依頼が舞い込む.その銀行は「マーク」が再起をかけて立て直そうとしている銀行だった... 発売当初(2006年6月)にネットで紹介されているのを見てチェックしていた本.松山市立中央図書館所蔵. 作者のピーター・タスカは著名なエコノミスト(マーケット・アナリスト)なのだが,本作はノンフィクションではなく,その知識を活かしてのフィクション(小説)なのだが......
投稿者 さい
2006年12月07日

『愛蔵版 ベルサイユのばら 全2巻』池田理代子

由緒正しい武家の名門の末娘として生まれたオスカルは,女の身でありながらフランス近衛隊の隊長となる. 共に育ったアンドレとともに彼女が守るのは,オーストリアからフランス王家に嫁いできた王女 マリーアントワネット... という紹介は不要なくらい有名な少女漫画の名作.某教員の奥様に貸してもらったもの. 宝塚の代名詞でもあるくらい有名な作品だし,アニメにもなっていて,ちょっと前もCATVで放映されていたのだが,これまで見たり読んだりしたことはなかった. それでも,それなりにストーリーは知っているつもりだったのだが,かなり違っていて驚いた.女であることを隠して軍隊に入ったものと思っていたら,女であること...
投稿者 さい
2006年11月23日

『銃とチョコレート』乙一

富豪の家から宝物を盗み,カードを残して去っていく怪盗「ゴディバ」と,それを追う名探偵「ロイズ」. そのロイズにあこがれる少年「リンツ」は,父の遺した聖書からゴディバと関係がありそうな地図を見つける. リンツはロイズに地図のことを連絡し,それに応えてロイズがリンツの住む街にやってきた... 乙一の新作,というか,買ったときはまだ新作だったのだが,しばらく積読状態のまま放置されていた. 講談社のミステリーランドという少年少女向けのレーベルから出版されている本なので,基本的には児童文学,というのとはちょっと違うか,まあ,ポプラ社の怪人20面相シリーズみたいな感じの位置づけ.なので,文章も小学生向けで...
投稿者 さい
2006年11月21日

『風に舞いあがるビニールシート』森絵都

短編集の紹介は毎回苦しむので,出版社による紹介文を引用しよう. 愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、今日も思っている。大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語。 うーん,二つめの文はそのとおりだけど,最初の文は表題作にしか当てはまらないんじゃないか? ともかく,『まほろ駅前多田便利軒』とともに第135回直木賞を受賞した作品で,これも卒業生にして同僚な人が貸してくれた本. 全部で6つの短編が収められているのだが,共通するテーマは「価値観」になるのかなあ....
投稿者 さい
2006年11月20日

『マンガ ギリシア神話 全8巻』里中満智子

以前読んだ『ヴィーナスの片思い』と同じくギリシャ神話の本で,やっぱり『ヴィーナスの片思い』と同じく某教員の奥様に貸してもらった本. ただ,『ヴィーナスの片思い』と違っているのは,こちらはマンガだということ. 書かれている内容はほとんど一緒なのだが,マンガのほうが頭に入りやすいかもしれないかも....
投稿者 さい
2006年11月17日

『ブラック・ダリア』ジェイムズ・エルロイ

1947年,若い女性の惨殺死体がLA市内で発見された.被害者がいつも黒ずくめだったことから「ブラック・ダリア」と呼ばれるようになった事件を,「ファイア&アイス」の異名を持つ刑事2人組が追いかけるのだが... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本で,最近になって公開された映画の原作. 私は読んだことはなかったのだが,作者のエルロイは暗黒小説(犯罪などの世界の暗黒面を描いた,暗くて救いのない小説のことらしい)の大家で,この本も「暗黒のLA4部作」の第1作だそうだ....
投稿者 さい
2006年11月16日

『オロロ畑でつかまえて』荻原浩

東北の奥地にあり,過疎に悩む「牛穴村」.起死回生の策として,東京の広告代理店に村おこしを依頼するのだが,それを引き受けたのが倒産寸前の弱小広告代理店で... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本. 最近よく名前を聞く荻原浩のデビュー作なのだが,この作者の本は今まで読んだことがなかった. ...
投稿者 さい
2006年11月14日

『去年ルノアールで』せきしろ

喫茶室ルノアールに毎日通う著者が,ルノアールで出会う人や出来事を起点にして妄想を加速させていくエッセイ集. 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本. 妄想暴走系の面白エッセイなので,系統としては乙一の『小生日記』や穂村弘の『世界音痴』と同じなのだろうが,暗黒度というかネガティブ度が圧倒的に低いので,こちらの方が一般受けするかな....
投稿者 さい
2006年11月12日

『おいしい店とのつきあい方 実践編』サカキシンイチロウ

ほぼ日刊イトイ新聞に連載されているコラム(?)をまとめたもの. と,前作の紹介をそのままコピペしてみたが,中身の基本路線も同じで,レストランでの振舞い方や楽しみ方について書いてある本.松山市立中央図書館所蔵. ただ,タイトルに「実践編」とあるように,私のような下流社会に属している人間でも使えるような知識が前作よりも多くあった....
投稿者 さい
2006年11月09日

『凍りのくじら』辻村深月

読書家で覚めた高校生の「理帆子」の一番のお気に入りは,自分と母を捨てて失踪した父が大好きだった藤子・F・不二雄と『ドラえもん』. 入院中で余命幾ばくもない母の存在を隠しながら,友人たちと適当に距離を置きながら過ごす「理帆子」だったが,その前に二人の男性が現れる.一人はかつて恋人だった「若尾」,そして「理帆子」を写真に撮りたいという「別所あきら」... mixiの読書関連のコミュニティで非常に評判が高かった作品.松山市立中央図書館所蔵. ネットで書評を検索してみたところ,主人公の痛さを指摘するものが多かったが,確かに痛さ大爆発という感じ....
投稿者 さい
2006年11月06日

『犬は勘定に入れません』コニー・ウィリス

過去へのタイムトラベルが可能になった未来.しかし,そのタイムトラベルは過去を変えることができず,過去から何かを持ち帰ることもできないため,学術目的のためにしか使われることはなかった. 大聖堂の再建プロジェクトのために総動員がかけられているオックスフォードの史学部.相次ぐタイムトラベルで意識が朦朧としていた「ヘンリー」は休める場所を求めて,「ダンワージー教授」の研究室を訪ねる.しかし,そこではあるはずのないことが起こっており,その修復のため,「ヘンリー」は19世紀のオックスフォードに送られることに... 以前読んだ『ドゥームズデイ・ブック』と同じ世界設定を使った作品で,共通の登場人物も登場するの...
投稿者 さい
2006年11月03日

『とるこ日記』定金伸治+乙一+松原真琴

副題が「"ダメ人間"作家トリオの脱力旅行記」ということで,自称「ひここもり」の若手作家3人(男2人女1人)が,海外旅行に慣れているわけでもないのに,トルコを旅行したときの記録.松山市立中央図書館所蔵. 「乙一は贔屓の作家である」&「トルコが妙に気になる」私にとっては,読むべくして読むことになった本....
投稿者 さい
2006年10月29日

『ヴィーナスの片思い』視覚デザイン研究所

副題は「神話の名シーン集」ということで,神話(主にギリシャ神話)の紹介をしている本. 某教員の奥様に貸してもらった. この本を借りて,一番よく分からなかったのが,編者の「視覚デザイン研究所」というところ. 見返しのところに他の書名がずらーっと並んでいるのだが,「油絵ノート」だとか「配色エッセンス」だとかの美術・デザイン関係の本ばかり.まあ,「視覚デザイン研究所」という名前からしてそうだよな. なのに,どうして神話の本を?という疑問があったのだが,中身を見て分かった. ...
投稿者 さい
2006年10月27日

『イニシエーション・ラブ』乾くるみ

諸般の事情であらすじが書きにくいので,出版社による紹介文を引用. 大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって…。 ネットの書評で「問題作」「予備知識なしで読むべき」と書かれていたのが気になっていたところ,タイミングよく松山市立中央図書館で遭遇したので,借りてみた. 確かに「問題作」で「予備知識なし...
投稿者 さい
2006年10月26日

『誤読日記』斎藤美奈子

『週刊朝日』および『アエラ』に連載されていた書評をまとめたもの.松山市立中央図書館所蔵. 要するに書評集なのだが,そこは『読者は踊る』や『あほらし屋の鐘が鳴る』の著者,単なる書評ではなく,もちまえの毒舌でバッサバッサと切り捨ててくれている....
投稿者 さい
2006年10月24日

『銀の檻を溶かして』高里椎奈

優しげな青年「座木」,美少年「秋」,元気な男の子「リベザル」の3人は一緒に暮らしながら薬屋を営んでいる.しかし,彼らは実は妖怪で,妖怪の存在を明らかにしないため,奇妙な事件を穏便に解決する探偵稼業も営んでいて... 薬屋で探偵で妖怪が主人公という「薬屋探偵妖綺談」というシリーズ物の第一巻.松山市立中央図書館. 主人公たちの設定があまりにもぶっ飛んでおり,これでミステリになるのか?と疑問に思いつつ読んだのだが......
投稿者 さい
2006年10月19日

『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』江國香織

「いろんな生活、いろんな人生、いろんな人々」を描いた短編集. 松山市立中央図書館所蔵. 短編集の紹介文はいつも困るのだが,あとがきにあるように「愛にだけは躊躇わない――あるいは躊躇わなかった――女たちの物語」というのが一番わかりやすい紹介かもしれない. まあ,要するに色々な男女関係を描いた短編集なわけだ....
投稿者 さい
2006年10月17日

『続 職業外伝』秋山真志

前作の『職業外伝』と同じく,滅びゆく職業人を描いた人物ルポ. 具体的には,イタコ,映画看板絵師,蝋人形師などの8つの職業とその職業についている人々の生涯について書かれている. 前作が面白かったので,続編を借りてきた.松山市立中央図書館所蔵. 相変わらず,「あなたの知らない世界(職業)」を知ることができて面白かったのだが,特に面白かったのが鵜匠と琵琶盲僧....
投稿者 さい
2006年10月13日

『風が吹いたら桶屋がもうかる』井上夢人

牛丼屋でバイトをしている「シュンペイ」の元に,女性たちがやってくる.彼女たちの目当ては「シュンペイ」の同居人である超能力者「ヨーノスケ」.で悩みを解決してもらおうとするのだが,そこにもう一人の同居人である理屈屋の「イッカク」が割り込んできて... 以前読んだ同じ作者の『the TEAM』がそれなりに面白かったので,松山市立中央図書館で借りてきた. が出てくるので,SFっぽいのかといえば全くそうではなく,「日常の謎」系のかなりコミカルなミステリ....
投稿者 さい
2006年10月07日

『雨のち晴れ、ところにより虹』吉野万理子

湘南を舞台にした短編集...としか書きようがないなあ.松山市立中央図書館所蔵 ネットで高く評価されていたので借りてみた. 6本の短編が収められているのだが,舞台が湘南であり,どの話にも共通の登場人物がいる(1本については微妙)のだが, 「味覚の違いに悩む夫婦」 「受験を控えた母子のすれ違い」 「厄年を迎えたキャリアウーマン」 「ホスピスの患者と看護婦」 「海辺での老人と少年の会話」 「親友の結婚式に出席する女性」 と話は結構バラバラ. だけど,全体的に同じような雰囲気でもあるという短編集....
投稿者 さい
2006年10月05日

『職業外伝』秋山真志

「滅びゆく職業や日本の伝統職に就いている人々を、仕事を切り口に書いてゆく人物ルポ」(著者紹介より). 具体的には,飴細工師や幇間(たいこもち),へび屋,見世物師などの12の職業とその職業についている人々の生涯について書かれている. いつものごとく,ネットの書評で気になってチェックしていたもの.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年09月30日

『間合い上手』大野木裕明

メインタイトルだけでは何の本だから分からないだろうが,副題は「メンタルヘルスの心理学から」となっており,一応は心理学の本ということになるのだろうか. 人間関係を「距離的」「時間的」「心理的」という三つの「間合い」という概念を使って分析し,さらには人間関係の調整に役立てましょうという内容. ネットの書評で知って興味を持ったのだが,市立図書館にも大学図書館にも入っていなかった. 仕方がないので,出張に行ったときに書店でチェックしようと思っていたのだが,たまたま県立図書館のOPACを使う機会があったので,ついでに検索してみたらヒットした. ということで,愛媛県立図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年09月26日

『寂しいマティーニ』オキ・シロー

さまざまなカクテルをテーマに,バーで繰り広げられる男と女のドラマを描いた短編集. 松山市立中央図書館所蔵. 以前,ネットでカクテルのレシピを検索していたときに,カクテルを扱った小説のひとつとして紹介されていた本. 正確には,紹介されていたのは同じ作者の別の本だったのだが,図書館で検索をかけてみると,この作者の本はどれもカクテルまたは洋酒関係の本のようなので,本棚にあったものを借りてきた....
投稿者 さい
2006年09月21日

『まほろ駅前多田便利軒』三浦しをん

妻と別れ,東京郊外のまほろ駅前の事務所で便利屋を営む「多田」は,ある夜,高校時代の同級生だった「行天」と出会う.行天に負い目のある多田は,行天を事務所に泊めるのだが,いつの間にか行天は居候 兼 従業員として多田と暮らすことに... 卒業生にして同僚な人が貸してくれた本で,第135回直木賞受賞作品. 三浦しをんの名前はデビュー当時から知っていたけど,今まで読んだことはなかった. デビュー作はかなり軽い感じの小説というイメージがあったのだが(読んでないけど),いつの間に直木賞を受賞するような立派な作家になったのだろう?...
投稿者 さい
2006年09月19日

『ツレがうつになりまして』細川貂々

過労のために鬱病を発症した夫(=ツレ)と漫画家である妻の,発症から回復期までの生活を描いたエッセイ漫画. 鬱病とかとは全然関係のないサイトで鬱病関係ならこの本が一番と評価されていたので,いつかは読んでみようと思っていたところ,某教員の奥様から借りた本の中に入っていた.ラッキー. ...
投稿者 さい
2006年09月16日

『the TEAM』井上夢人

盲目の女性霊能者「能城あや子」の霊視は驚異的な的中率を誇っており,彼女の出演するTV番組は超人気番組. しかし,その的中率の裏には,家宅侵入の天才と女性ハッカーの存在が... 霊能者チームの活躍を描いた連作短編集.松山市立中央図書館所蔵. これもネット経由で知った本で,どういう経緯だったかは忘れてしまったのだが,たぶんハッカーが活躍する本か何かとして紹介されていたんだと思う....
投稿者 さい
2006年09月13日

『初恋』中原みすず

1966年,孤独な女子高生「みすず」は,とあることからジャズ喫茶に入り浸る不良グループと親しくなる.そして1968年,そのグループの中でも異質な存在である「岸」から,とある計画を持ちかけられる... 6月に観た宮崎あおい主演の映画『初恋』の原作. 映画評をネットで検索していたところ,原作の評価がかなり高かったので,いつかは読まないとなあと思っていたところ,卒業生にして同僚な人が貸してくれた. 映画を観た時点での映画に対する私の評価は過去の記事を読んでもらいたいのだが,この原作を読んで,映画に対する評価がかなり変わった....
投稿者 さい
2006年09月10日

『少女には向かない職業』桜庭一樹

山口県下関の島で生活する13歳の「大西葵」は,友人たちの前では明るく振る舞っているが,家では酒びたりの義父に苦しめられている. そんなある日,クラスでは目立たない「宮乃下静香」と親しくなった「葵」は,「静香」から義父の殺すための方法を教えられる... 桜庭一樹の作品を読むのもこれで3冊目.これまで読んだ作品はすべて文庫で,どちらかというとライトノベル系(『ブルースカイ』は早川書店から出ているSFだけど)だったわけだが,本作は東京創元社から出ているミステリ・フロンティアの一冊として刊行された,作者初の一般向け単行本. 松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年09月09日

『てのひらの迷路』石田衣良

IWGPシリーズでおなじみの直木賞作家である石田衣良の初ショートショート集.松山市立中央図書館所蔵. このところ,私の中では石田衣良の評価が下がり気味なのだが,この作家は短編の方が上手いと思っているので(初期の作品は長編もいいけど),ちょっと期待して読み始めた....
投稿者 さい
2006年09月04日

『にょっ記』穂村弘

歌人にしてエッセイストでもある作者によるウソ日記. とはいえ,あんまり日付と内容は関係ないような... 松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年08月30日

『狐罠』北森鴻

店舗をもたない骨董商「旗師」として売り出し中の「陶子」は,やり手の骨董商「橘」に贋作を売りつけられた.二度と贋作をつかまされないため,陶子は橘に目利き殺しを仕掛け,贋作を売りつけようとするが... 読むのはこれで5冊目になる北森鴻の作品. 私の中では「北森鴻=おいしそうな料理が出てくる作品を書く作家」の構図ができあがっているのだが,それ以外にもシリーズ物をいくつかもっており,本作はそのひとつで骨董を扱ったシリーズの一作目.松山市立中央図書館. ...
投稿者 さい
2006年08月28日

『理解という名の愛が欲しい』山田ズーニー

副題が『おとなの小論文教室。?』ということで,これもほぼ日に掲載されたコラムをまとめたもの.松山市立中央図書館所蔵. 『おとなの小論文教室。』についての記事で,違和感を感じた理由として書いた「やりたいことをやれ」論だが,本書では最初の方にこうある. 若い人に伝えなくてはいけないのは、体中が熱く、気持ちが昂揚する「歓びの一瞬」のことではなく。 自分の無意味感から逃れつつ、 空気圧にじっと耐えて、 昨日と同じ今日を、また、同じ凡庸な朝を生きる覚悟、 それをうんざりしても、毎日繰り返し続けていけることこそが、「生きる実感」である。 ということなのではないだろうか? そうだよな,「やりたいこと=歓びの...
投稿者 さい
2006年08月27日

『おとなの小論文教室。』山田ズーニー

私の2005年 活字本 ノンフィクション部門の第一位だった『伝わる・揺さぶる!文章を書く』の著者によるコラム集(エッセイ?). もともとはほぼ日に掲載されていたもので,その関係で読者からのメールの紹介なども多くある. 松山市立中央図書館所蔵. 『伝わる・揺さぶる!文章を書く』のときもそうだったのだが,非常に納得できることが書いてある反面,読んでいてどうも違和感があった. それは,若者向けの本によくある「若いうちはやりたいことをやるべき! 本当にやりたいことを見つけるべき!」的な主張をそこかしこに感じたせいなのだが,私はこの手の無責任な主張が大嫌いだ. というのは,やりたいことをやって生活できる...
投稿者 さい
2006年08月26日

『老ヴォールの惑星』小川一水

これまで何冊も読んでいるSF作家である小川一水の初の短編集.松山市立中央図書館所蔵. 解説者曰く「外部の環境と相互作用する主体」がテーマになっているのではないかという4篇が収められているのだが,もっとストレートに「社会」についての話のような気がする....
投稿者 さい
2006年08月16日

『あなたの人生の物語』テッド・チャン

事故の治療の結果として天才になった男の話(「理解」)や,エイリアンの言語を解明する言語学者の話(「あなたの人生の物語」)や,自然現象として天使が降誕する世界の話(「地獄とは神の不在なり」)など,8篇からなるSF短編集. 2003年に刊行された際に大絶賛されていたのだが,古本屋で見かけたときに一度買い逃し,それ以来なかなか遭遇できなかった. この間,ようやくゲットできたので,読んでみた....
投稿者 さい
2006年08月15日

『MISSING』本多孝好

Missing(見当らぬ, 行方不明の; 欠けている)をテーマにした5本の短編が収められた短編集. いちおう「このミス2000年版」の第10位にランクインしたというので,ジャンルとしてはミステリになるのか. 古本屋で大量に本を買ったとき,105円で売られているのを見つけて何となく買ってみた....
投稿者 さい
2006年08月14日

『泣き虫弱虫諸葛孔明』酒見賢一

「名軍師」の名前を挙げると第一位に出てくるくらい有名な諸葛孔明. しかし,その正体は奇妙な衣装を身にまとい,臥竜伝説を自ら流布する変な男だった? 『墨攻』や『陋巷に在り』などの中国の素材を使った物語が得意な酒見賢一の最新刊ということになるのかな(刊行は2004年).松山市立中央図書館所蔵. 私の中で酒見賢一という人は,ユーモアはあるものの基本的に真面目な作家だったのだが,これを読んで印象が一変してしまった. 500ページ弱あるのだが,読んでる間,ずっとクスクス笑ってたと思う....
投稿者 さい
2006年08月07日

『生首に聞いてみろ』法月綸太郎

病死した芸術家の,自分の娘をモデルにした遺作の首が何者かに切断された.ミステリ作家の法月綸太郎は,娘の叔父から切断事件とそれに前後して現れた不審人物の調査を依頼される.しかし,調査の途中,娘が行方不明になり... 卒業生にして同僚な人が昼休みに読んでいるのを見て,「ブードゥー教か殺人鬼の話?」と尋ねたところ,貸してくれた. ...
投稿者 さい
2006年08月03日

『99.9%は仮説』竹内薫

副題は「思いこみで判断しないための考え方」. タイトルだけで判断すると,ロジカル・シンキングやクリティカル・シンキングなどの発想法・思考法関連の本だと思わなくもないが,それこそ思いこみ. ...
投稿者 さい
2006年07月26日

『夏季限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信

小鳩君と小山内さんは,恋愛関係にも依存関係にもないが,己の本質を隠して「小市民」になるべく,お互いに助け合う関係. 小山内さんがリストアップしてきた<小山内スイーツセレクション・夏>を制覇するべく,夏休み中,甘いものを食べまわる二人だったが... 「日常の謎」系のミステリだった『春季限定いちごタルト事件』の続編.ということで,本作も「日常の謎」系のミステリ. いつもなら図書館で借りてくるのだが,この作者,あまりにも当たりが多いので購入していくことにした....
投稿者 さい
2006年07月22日

『失はれる物語 文庫版』乙一

ちょっと前のこと. ネット上で乙一の『失はれる物語』の書評が出ていた. 以前も記事にしたが,『失はれる物語』はそれまでの短編集の再録+書き下ろし1本で2年くらい前に刊行されている本. それがどうして今頃?と思っていたら,文庫化されたらしい.しかも新作2本付きで. これは買わねば! ということで書店に走って購入したのだが,いろいろと仕事が重なって今まで読めていなかった. ようやく時間がとれたのでページを開いてみると, ...
投稿者 さい
2006年07月21日

『水の迷宮』石持浅海

夜の水族館で残業をしていた飼育係長が不慮の死を遂げて3年.再建に成功した水族館に脅迫メールが届く.繰り返される展示水槽への攻撃と,3年前の夜の異変の関連が見えてきたとき,ついに殺人事件が... 卒業生にして同僚な人に貸してもらったミステリ作品....
投稿者 さい
2006年07月20日

『偶然の確率』アミール・D・アクゼル

世の中にはさまざまな偶然があるが,それを説明するために生まれたのが確率論.その確率論を身近な例をもとに説明をしている本. ネット経由で知った本.松山市立中央図書館所蔵. ギャンブルに勝つ方法や誕生日が一緒の人がいる確率といった,なるほど確率論で計算できそうだといったものから,幸せな結婚をする方法といった,少々???なものまで,さまざまな例が取り上げられている....
投稿者 さい
2006年07月16日

『グーグル Google』佐々木俊尚

副題は「既存のビジネスを破壊する」. 刊行されたのが今年の4月で,店頭に並んだ直後に購入したのだが,読んでる最中に本が1ヶ月くらい行方不明になったりしたため,読み終えたのは今月の上旬. タイトルどおり,グーグルに関する本. これまで検索エンジンに関する本としては『ザ・サーチ』と『検索エンジン戦争』の記事を書いたが,グーグルの「現在」についてはこの本が一番よく書かれているかな....
投稿者 さい
2006年07月12日

『赤×ピンク』桜庭一樹

夜の廃校舎,観客に囲まれた檻の中で,闘う少女たち.見世物としての「女の子の格闘」を行う「まゆ」「ミーコ」「皐月」だが,彼女たちには怪しげな舞台で闘う理由がそれぞれあった... 一貫して「少女」をテーマにしている桜庭一樹の作品.読むのはこれで3作目だが,やっぱり松山市立中央図書館所蔵. ファミ通文庫というライトノベルのレーベルからの出版で,傷だらけのいたいけな女の子がボクシンググローブをつけたまま座っているという表紙. どう考えても,いわゆる「萌え系」の作品だと思われるだろうけど......
投稿者 さい
2006年07月09日

けらえいこの結婚生活物4冊

某教員の奥様に本を4冊貸してもらったのだが,著者はすべて同じ「けらえいこ」で(一つは共著だが),テーマもすべて同じ「結婚生活」. いちおう全部独立しているので,一つずつ記事を書こうかと思ったのだが,どうも書きにくかったので,一つにまとめて書くことにした....
投稿者 さい
2006年07月07日

『ネコソギラジカル 上中下』西尾維新

「世界の終わりが見たい」という理由で,「狐面の男」から「俺の敵」として狙われることになった主人公. 降りかかる火の粉を払うべく,最強の請負人「哀川潤」や骨董アパートの住人たちと共に,刺客「十三階段」に立ち向かうのだが... 「戯言遣い」シリーズ第6弾にして最終作. 最初から最後まで松山市立中央図書館にお世話になったわけだが,どう考えても三巻連続で読まないと内容を忘れてしまって意味不明になると思ったので,刊行から結構な月日が経ってしまった....
投稿者 さい
2006年06月29日

『虹の家のアリス』加納朋子

脱サラして私立探偵事務所を開業した「仁木」.有能な助手にしてお茶くみ担当,しかも現在家出中の「安梨沙」とともに,事務所に持ち込まれた奇妙な事件を解き明かしていく... 前に読んだ『螺旋階段のアリス』の続編で,日常の謎+連作短編形式というのも前作と同じ.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年06月27日

『みんないってしまう』山本文緒

「喪失」をテーマとした短編集. 図書館の貸出枠が1冊余っていたので,薄めでサクッと読める短編集でも,と気軽な気持ちで借りてきた. しかし,最初の短編を読み終えたとき......
投稿者 さい
2006年06月26日

『超越錯覚』須原一秀

この秋に読む!TOPエンジニアが刺激を受けた25冊で紹介されていて気になった本. 気になった理由は二つある. 一つは副題の「人はなぜ斜にかまえるか」というのが面白そうだったから. もう一つは紹介文にある「学生のレポート数千本を題材に論じたユニークな書」というくだり. ストレートに考えると,斜に構えた学生を数千人集めてきて,レポートを書かせ,それを分析した本になってしまうのだが,それはちょっと実現不可能だろう. はてさて,どういう本なのだろうということで,松山市立中央図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2006年06月18日

『プロカウンセラーの聞く技術』東山紘久

臨床心理士である著者が,カウンセリングで重要視される「聞く」技術を一般向けに紹介している本. ネット経由で知った本で,やっぱり松山市立中央図書館所蔵. 私は基本的に引きこもり属性が強く,自分から積極的に話をするよりも,相手に話しかけられて,それに反応する方が楽なので,「話し上手」よりも「聞き上手」を目指している. なので,渡りに船とばかりに借りてみたのだが,私が想像していた「聞く技術」とはかなり違っていた....
投稿者 さい
2006年06月14日

『不思議のひと触れ』シオドア・スタージョン

最近,復刊が相次いでいたスタージョンの短編集.やっぱり松山市立中央図書館所蔵. 以前読んだ『輝く断片』はミステリ中心の短編集だったが,本作はSF中心で10編中8篇がSFまたはファンタジー. 表題作の「不思議のひと触れ」と「孤独の円盤」が名作だというのだが......
投稿者 さい
2006年06月10日

『ダーリンは外国人 1-2巻』小栗左多里

ハンガリーとイタリアの血を受け継いでいるアメリカ人と国際結婚した漫画家(イラストレーター?)によるエッセイ漫画. ちょっと前にベストセラーになったので知っている人も多いと思うが,私は興味を持てない限りベストセラー本には手を出さないので(書店で手にとって見ることもしない),これまで読んだことがなかった. 今回,某教員の奥様に貸してもらって,初めて読んでみた....
投稿者 さい
2006年06月08日

『ブルースカイ』桜庭一樹

17世紀のドイツで,魔女狩りによって唯一の肉親を失った少女が, 2022年のシンガポールで,成熟できない優しいCGアーティストの青年が, そして2007年の日本で,いつもと変わりのない日常を生きる17歳の女子高生が, 世界(システム)にアクセスしたとき,彼女たちの運命は交差し,黒い十字架のようなものが... 以前読んだ『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』が面白かったので,松山市立中央図書館で借りてきた. この本,まずはその装丁が目を惹く.amazonで書影を見ることができるが,書店で実物を手にとって見てもらったほうがインパクトがあるだろう. 『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』が特定ターゲットを狙い撃...
投稿者 さい
2006年06月06日

『二人の紅茶王』磯淵猛

いつものようにネットで見かけてチェックした本だったので,どういう本なのか分からなかったのだが,副題が「リプトンとトワイニングと…」. ならば,紅茶を全世界に広めた人物であるトーマス・リプトンとトワイニング家についての評伝だろう. と思って読み始めたのだが,アイルランドについてのエピソードや旅行記が延々と続く. アイルランドは一人当たりの紅茶の消費量が世界一なので,確かに紅茶には関係があるんだが,紅茶王はどこに行った?...
投稿者 さい
2006年06月02日

『陽気なギャングの日常と襲撃』伊坂幸太郎

人間嘘発見器,天才スリ,演説(と嘘)好き,正確な体内時計をもつドライバー. 4人の銀行強盗たちも銀行を襲っていないときは日常生活を送っているわけだが,その生活は平穏とはいかないようで... 読むのは12作目の伊坂幸太郎作品で,映画化もされた『陽気なギャングが地球を回す』の続編. これも図書館ではなく,卒業生にして同僚な人に貸してもらった....
投稿者 さい
2006年05月26日

『終末のフール』伊坂幸太郎

小惑星の衝突によって地球が滅亡するまで,あと3年. その事実が発覚したときの大混乱が過ぎて,一時的な小康状態になった頃,仙台市北部のマンションに住む人々はどのような日々を過ごしていたのか... 読むのは11作目の伊坂幸太郎作品. いつもなら図書館で借りて読むのだが,卒業生にして同僚な人が読んでいたので貸してもらった....
投稿者 さい
2006年05月25日

『ヨコハマ買い出し紀行 全14巻』芦奈野ひとし

海水面上昇などによって,徐々に滅びようとしている未来の地球. しかし悲壮感なく穏やかに日々を過ごす人間のそばには,人間そっくりのロボットたちがいた. そんなロボットの一人で喫茶店のマスターである「アルファ」と,その周りの人やロボットの物語. うーん,この紹介だと,全く違う話になってしまうな... なかなか紹介が難しいのだが,12年間にわたって描かれ続けていて,ついに最終巻が発売されたマンガ. 全14巻という長い作品なのだが,ストーリーらしいストーリーはそれほどなく,アルファさん(や周囲の登場人物たち)の日常生活を淡々と描いているだけといえば,それだけの作品. しかし,これが全然「それだけ」じゃ...
投稿者 さい
2006年05月18日

『シナン 上下』夢枕獏

キリスト教徒の木工事屋の息子として生まれた「シナン」は,「人が造り出した、最も神がよく見える場所」と言われるイスタンブールのモスク「聖ソフィア」に近づくため,改宗してオスマントルコ帝国の工兵となる. スレイマン大帝と大宰相イブラヒムの知己を得て,各地を巡ったシナンは,「聖ソフィア」を超えるモスクを建造することをめざすのだが... 刊行された当初に書店で見かけて以来,気になっていた本.図書館に行くたびにチェックはしていたのだが,刊行から既に1年半が経過している.うーむ,時の流れるのは早いなあ.松山私立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年05月16日

『箱』ジ・アービンガー・インスティチュート

ライバル企業から業界1位の企業に転職してきて一ヶ月の管理職である主人公は,副社長と1対1でミーティングを行うことになった.そのミーティングで行われる独自のプログラムこそ,その会社を業界1位にしている原動力だというのだが... 松山市立中央図書館で読むべき本リストをチェックしたところ,この本の題名と図書館の分類記号が書かれていた. しかし,どういう経緯でチェックしたのか全く覚えていない.この分類記号からすると外国の小説だよなあと該当の本棚まで移動,本書を手に取ったところ......
投稿者 さい
2006年05月12日

『本当はちがうんだ日記』穂村弘

世界音痴にして人生の経験値が低い著者のエッセイ第四弾. 松山市立中央図書館に予約を入れていたのだが,手元に届いた本を見ると三津浜図書館所蔵になっていた. これまで読んだエッセイと比較すると,『世界音痴』とよく似た傾向の内容で,著者同様,人生の経験値が低く世界音痴の傾向のある私にとっては,けっこう共感できるというか身につまされる内容だったりする. ...
投稿者 さい
2006年05月11日

『ポーの一族 全3巻』萩尾望都

バンパネラの兄妹である「エドガー」と「メリーベル」は,町を支配する名家の一人息子「アラン」と出会う.病弱なメリーベルのため,アランの血を狙うエドガーだったが... 某教員の奥様から借りた少女漫画の歴史的名作. かなり以前に借りていたのだが,諸般の事情で研究室にて保管していたところ,研究室のエントロピーの高さに埋もれてしまって,今まで読めなかった. で,ようやく読み始めたのだが......
投稿者 さい
2006年05月06日

『死神の精度』伊坂幸太郎

死期の迫った人間を観察し,「可=死」か「見送り」かを判断することを仕事とする死神.ミュージックを愛し,空き時間はCDショップに入り浸る死神たちだが,その中に一人,仕事のときは常に雨が降る死神がいた... 読むのはこれで10作目の伊坂幸太郎作品. 『魔王』と一緒に予約したら2冊ともすぐに借りることができた.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年05月05日

『魔王』伊坂幸太郎

自分が念じたことを他人に喋らせることのできる能力を持っていることに気づいた「安藤」は,人心を掴みつつある若き政治家にファシズムの匂いを感じ取り,自分ができることを行うことを決意する... 読むのはこれで9作目の伊坂幸太郎作品. 発売当初の昨年11月ごろ,図書館での予約数のあまりの多さに「読めるのは1年以上先だろうな」と諦めていたのだが,思ったよりも早くに予約が消化されたようだ.松山市立中央図書館所蔵. ...
投稿者 さい
2006年05月03日

『水滸伝 旌旗の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第19巻.松山市立中央図書館所蔵. 108人の好漢も約半分が既に死亡.そして,ついに童貫率いる禁軍の総攻撃が始まり,一人また一人と戦死していく... ついに最終巻.タイトルから分かるように,梁山泊も落城してしまうわけだが,あちこちに張った伏線があまり回収されないまま終わってしまった.これらは続編の『楊令伝』で使われるのだろう. 全19巻ということで,関連する記事も19回書いたわけだが,その副作用が生じている.IMEの汚染だ....
投稿者 さい
2006年04月28日

『1DKクッキン』谷村志穂・飛田和緒

料理が全くできない作家が,料理が得意な元バレリーナに弟子入り. 台所に調理器具がないところから始まって,料理の神様から仮免の砥石をもらうまでの料理修行が書かれた本. 貸出枠が1冊余っていたので,料理関係の手軽な読み物でも借りようということで,適当に選んで借りてきた.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年04月24日

『犬はどこだ』米澤穂信

人生の目的としていた職業に就いたものの,とある事情から辞職せざるを得なかった「紺屋」は郷里の地方都市で人生のリハビリのために犬捜し専門の調査事務所を開業した. しかし私立探偵と勘違いされた事務所にやってきたのは,失踪人捜しと古文書の解読の依頼.そして私立探偵に憧れて押しかけ助手になった後輩の「ハンペー」だった... これで米澤穂信の作品を読むのは6作目.これまで読んだ作品が基本的に「日常の謎」系ミステリだったのに対して,本作は探偵稼業を職業とする人物が主人公ということで,ある意味で正統派ミステリといえるかも.もちろん松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年04月19日

『きらきらひかる』江國香織

妻の「笑子」はアル中,夫の「睦月」はホモ,と互いに脛に傷を持つ身の2人は見合い結婚をしたばかりの夫婦で,「睦月」には妻公認の愛人「紺」(もちろん男性)がいる. 傍から見ると奇妙だが当事者たちにとっては満足な関係なのだが,そこに両家の親が介入してきて... 一説には江國香織の最高傑作ともされている作品.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年04月18日

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

生きること,つまりカネに関係のないことについては悩まない・関わらないを生活信条とすることに決めた「山田なぎさ」が住む片田舎に,有名な歌手を父に持つ美少女「海野藻屑」が転校してきた. 自分を人魚だと言い張る「藻屑」になぜか気に入られて付きまとわれる「なぎさ」だったが... 本作の作者である桜庭一樹は,『All You Need Is Kill』の桜坂洋と共に「W桜」や「二本桜」として一部で注目されている. 桜坂洋の作品が面白かったので,じゃあ,こちらはどうだろう?ということで借りてきた.松山市立中央図書館所蔵. まずamazonの該当ページで書影の拡大画面を見ろ.話はそれからだ....
投稿者 さい
2006年04月16日

『砂漠』伊坂幸太郎

仙台市にある国立大学の法学部に入学した5人の男女. 容姿も性格も全く違うが,なぜか気が合う5人は麻雀や合コン,恋愛などに精を出しながら大学生生活を共に謳歌する日々を送る. しかし,そんなある日,事件が起こり... 読むのはこれで8作目の伊坂幸太郎作品. 最近の作品は人気が高く,図書館でなかなか遭遇しないのだが,これは学生さんが読んでいるのを見かけたので貸してもらった....
投稿者 さい
2006年04月14日

『思わず話したくなる社名&商品名の謎』田中ひろみ

自称「社名研究家」の著者が電話取材などで明らかにした社名や商品名,キャラクター名の由来を「これでもかっ!」とばかりに詰め込んだ本. ネットで感想を見かけて面白そうだったので,それほど期待せずに図書館検索をかけたところ,しっかり収められていた.松山市立移動図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年04月10日

『社会人のオキテ』大條充能

副題は「どんな会社でも自分を生かす50の熱い方法」で,社会の中で生き抜く力を育てるためにどのように仕事・生活を送るべきかを書いてあるぜ. どういう経緯だったか忘れたが,チェックすべきリストの中に入っていたぜ.そんな本でも松山市立中央図書館は所蔵しているぜ.熱いぜ!...
投稿者 さい
2006年04月04日

『お縫い子テルミー』栗田有起

恋に悩む,というのとはちょっと違うな,恋心を抑えて仕事に生きる流しの仕立て屋の女の子を描いた表題作と,親に内緒で留守番のアルバイトをする小学5年生を描いた「ABARE・DAICO」の2作が収められた作品集.松山市立中央図書館所蔵. 面白いと聞いたので,借りてみた. 調べてみると,作者の栗田有起は芥川賞の候補にも何度もなっている人らしい.全然知らなかった.直木賞はともかく,純文学対象の芥川賞は全然興味がないからなあ....
投稿者 さい
2006年03月31日

『クドリャフカの順番』米澤穂信

先輩がいないために活動内容が不明な古典部で唯一引き継がれている活動である文化祭での文集『氷菓』の発行.しかし注文を間違えて,本来の部数の7倍近くにもなる200部を印刷してしまった. 完売を目指して,部の知名度を上げようと奮闘する部員たちだが,そんな中,奇妙な連続盗難事件が発生して... 『氷菓』,『愚者のエンドロール』に続く,古典部シリーズ第3弾.松山市立中央図書館所蔵. シリーズ前2作は省エネ少年の主人公1人称の文庫作品だったが,本作は単行本,しかも1人称なのは同じだが,古典部部員4名のそれぞれの視点による1人称作品,と色々違っている. ...
投稿者 さい
2006年03月30日

『七つの黒い夢』乙一ほか

『スラムオンライン』の記事を書く際に桜坂洋の新刊を検索したらヒットした短編集なのだが,執筆者がすごい. 乙一を筆頭に,恩田陸,北村薫,岩井志麻子とメジャーどころが揃っている. 読んだことはないのだが,西澤保彦もシリーズものを持っていて,結構興味がある作家の一人. 図書館に収められるのはまだ先だろうし,文庫で安い(この作者で400円は特価!)ということもあったので,買って読んでみた....
投稿者 さい
2006年03月29日

『水滸伝 乾坤の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第18巻.松山市立中央図書館所蔵. 前巻に続き,本巻でも童貫率いる禁軍との対決がメイン. その中,ついに楊令が梁山泊に入山し,さっそく大活躍している. 作中,海鰍船という軍艦が出てくる.鰍だけだとカジカなのだが,海がつくとクジラの意味らしい.その名のとおり,巨大な軍艦だ. で,特徴は船底が二重底になっており,底と底の間を細かく区切ってあることで,これによってすこしくらいの穴が空いても沈まない構造になっている. 現在でいうところのダブルハル構造だ....
投稿者 さい
2006年03月26日

『新世紀エヴァンゲリオン 10巻』貞本義行

一時は社会現象にまでなったアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』だが,10周年記念ということでYahoo!で特集が組まれている. そうか,最初のTV放映からもう10年も経つのか. と思って10年の歴史を見てみると,TV放映開始にしてもマンガ単行本発売にしても1995年...今年は2006年だけど,それでも10周年?? と,ちょっと謎なタイミングで特集が組まれているエヴァなわけだが,マンガ単行本の10巻がようやく発売された....
投稿者 さい
2006年03月25日

『スラムオンライン』桜坂洋

Aボタンをクリック。 ぼくはテツオになる。 現実世界に馴染めず,ネット対戦格闘ゲームの世界での最強を目指す「ぼく」は,大学の講義で「布美子」と知り合う. 彼女と共に現実世界の街を歩く一方,バーチャルの街では無敵と噂される「辻斬りジャック」を探す日々. そして,最強の座を賭けた武闘会を順調に勝ち進み,決勝戦を前にした時... 昨年の個人的ランキングの活字フィクション部門で第一位だった『All You Need Is Kill』の作者の単行本としては最新作? 松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年03月22日

『ザ・サーチ』ジョン・バッテル

副題は「グーグルが世界を変えた」. 表紙を写真に撮って載せることも考えたが,ちょっとグレーなのでamazonで見て欲しい. 本体のみだと白地に黒の太ゴシックで本題,青字で副題というシンプルな表紙になっているのだが,本体と一体化された帯つき(googleのカラフルなロゴつき)だと,ここに掲載されている書影になる. この副題で,この書影.どう考えてもグーグルという企業についての本だろうと思って読み始めた....
投稿者 さい
2006年03月21日

『アマゾン・ドット・コムの光と影』横田増生

タイトルには「アマゾン・ドット・コム」とあるが,実際は日本のamazon.co.jpの物流センターでアルバイトとして実際に働いてみたフリーライターによるルポ.副題は「躍進するIT企業 階層化する労働現場」. 松山はそれなりの都市なので日常生活を送る上で不便はあまり感じないのだが,珍しいものを買おうとすると見つからないことがある. そういう時はネット経由で購入することになるのだが,そのときに問題になるのが送料. ある程度の金額になると無料になるところが多いが,アマゾンの場合,これが1500円以上なら無料という思い切った送料設定になっている. これを実現しているのが,本書で描かれている物流センター...
投稿者 さい
2006年03月16日

『からくりからくさ』梨木香歩

染色家見習いの「蓉子」と不思議な人形の「りかさん」は,織物を研究する女子学生「与希子」「紀久」と鍼灸の勉強をしている「マーガレット」と共に,祖母の遺した家で共同生活を始める. そんなある日,「与希子」「紀久」の実家で「りかさん」と同じような人形が見つかり... 梨木香歩の作品を読むのは6冊目.前回読んだ『沼地のある森を抜けて』の記事を書くときに検索していたところ,よく比較対象にされていた. それで興味をもっていたところ,タイミングよく連続して借りることができた.松山市立中央図書館所蔵. 読み終わっての感想なのだが,確かに『沼地のある森を抜けて』と比較されるのがよく分かる....
投稿者 さい
2006年03月15日

『水滸伝 朱雀の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第17巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では童貫率いる禁軍との対決・休戦・再対決,遼への工作,致死軍・飛竜軍の死闘決着,などが描かれている. 北方水滸伝も残すところ,今巻を含めてあと3冊. 水滸伝ということで主要登場人物が108人以上いるわけだが,結構な数が既に死亡. 今巻でも主役級の登場人物がお亡くなりになっている....
投稿者 さい
2006年03月09日

『水滸伝 馳驟の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第16巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では戦力増強のための時間稼ぎと暗殺者との対決,童貫率いる禁軍との初対決などが描かれている. この北方水滸伝,ときどき意味不明なタイトルが出てくるわけだが,今巻の「馳驟」もそう....
投稿者 さい
2006年03月03日

『沼地のある森を抜けて』梨木香歩

化学メーカーで成分分析を仕事にしている「私」は,心臓麻痺で突然死した叔母からマンションと共に「ぬか床」を相続することになった. 先祖代々伝わってきたそのぬか床は相性の合わない人に世話をされると呻くというのだが,相性が合ったのか,美味しいぬか漬けができあがる. しかし,ある日,そのぬか床の中からなぜか卵が現れて... 梨木香歩の作品を読むのは5冊目だが,小説としては3冊目になる.現時点での作者の最新刊でもある.松山市立中央図書館所蔵. で,読み終わっての感想なのだが,なんというか,まあ,すごい小説だった....
投稿者 さい
2006年02月28日

『春になったら苺を摘みに』梨木香歩

著者がイギリスに留学していたときにお世話になった夫人と彼女を取り巻くさまざまな人たちのエピソードを中心に,著者の旅行先での経験などをまとめたエッセイ.松山市立中央図書館所蔵. 梨木香歩の作品を読むのもこれで4冊目. 本作で描かれている婦人とその屋敷が,『村田エフェンディ滞土録』に出てくる下宿のモデルとなったらしい. ...
投稿者 さい
2006年02月25日

『水滸伝 折戟の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第15巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では梁山泊攻略のための総力戦とその戦後処理,そして禁軍の戦闘準備などが描かれている. 前巻で登場した張清たち3人もついに梁山泊入り.これで108人の好漢が全員梁山泊のメンバーとなった(と思う.ちゃんと数えてないけど). 水滸伝と同じような構成の話に,滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』があるが,これは馬琴が水滸伝を参考にして作った,というのは有名な話....
投稿者 さい
2006年02月22日

『家守綺譚』梨木香歩

湖で消息を絶った友人の父に頼まれて,庭付き池付きの家に住み込んで管理をすることになった物書きの「私」.その周囲には狐や狸,河童に小鬼に人魚に木の精,さらには友人の幽霊まで出没して... 梨木香歩の作品を読むのはこれが3冊目.もともとは児童文学作家だった(?)梨木香歩の一般向け小説としての出世作,という位置づけでいいと思うのだが,とにかく評価が高い作品.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年02月20日

『水滸伝 爪牙の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第14巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻は総力戦に備えての訓練とそれに続く戦争がメインで,性格が歪んでしまった息子を抱えた父親の苦悩や,原典にもあった史進の遊郭でのエピソードなども描かれている. 最後の方で総力戦が始まるのだが,それ以外のエピソードが多く,どちらかというと今後の話のための伏線張りばかりで,ストーリー的にはそれほど進んでいない.そのため,好漢も2人しか死んでない. ...
投稿者 さい
2006年02月14日

『水滸伝 白虎の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第13巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では官軍&地方軍による梁山泊への攻撃と梁山泊の水軍を充実させるための苦労などが描かれている. 基本的には戦争関連の話ばかりなのだが,企業小説として読んでみると,また別の見方ができる....
投稿者 さい
2006年02月13日

『輝く断片』シオドア・スタージョン

ネット上で高い評価を受けているので,松山市立中央図書館で借りてくるといういつものパターンなのだが,この作者の作品を読むのは初めて. SF作家として認識していたのだが,実はミステリ作家としても評価されているのだという(そもそもデビュー作はミステリだったそうだ). 本作もSFではなく,ミステリ中心(あとがきによれば「広義の犯罪小説」中心)の短編集で,2006年版『このミステリーがすごい!』 では第4位にランクインしている....
投稿者 さい
2006年02月11日

『水滸伝 炳乎の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第12巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では盧俊義救出作戦と官軍の将軍である関勝の梁山泊攻めなどが描かれている. 盧俊義の秘密が明らかになったり,ただでさえ何でもできる燕青がさらにスーパーマンになってしまったりする巻でもある. タイトルになっている「炳乎」というのが単語が分からなかったので,調べてみると,意味は「光り輝くさま.また,非常に明らかなさま」ということらしいのだが,検索でヒットするのはこの水滸伝か,「戦陣訓」関連が多い. この戦陣訓,調べてみると太平洋戦争中に東条英機が作った兵隊用のマニュアルらしい....
投稿者 さい
2006年02月08日

『水滸伝 天地の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第11巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では梁山泊による城郭解放戦と梁山泊のリーダーの一人である晁蓋の暗殺などが描かれている. 梁山泊のリーダーは宋江というのが一般的なのだが,そもそも梁山泊に本拠を構えたのは晁蓋なので(その前に巣食っていた山賊から乗っ取った),初期梁山泊のリーダーは晁蓋だ. で,原典では晁蓋が途中で死に,その後を宋江が継ぐ形になっているのだが,北方水滸伝では最初から宋江と晁蓋の2人が同格のリーダーとして活動していた....
投稿者 さい
2006年02月03日

『東京DOLL』石田衣良

深夜のコンビニで出会った少女「ヨリ」に新作ゲームのインスピレーションを感じた孤高の天才ゲームデザイナー「MG」(マスター・オブ・ゲーム). モデル契約を結んだ彼女を深夜の東京の街を舞台に撮っていくうちに,お互いにパートナーがいるにもかかわらず,2人は急速に惹かれあっていく. そして,大切な人の不吉な未来だけを見る能力を持つヨリは,MGと彼のゲーム会社が崩壊していくビジョンを見る... かなり以前に古本屋で購入していたのだが,ようやく読了....
投稿者 さい
2006年01月30日

『螢坂』北森鴻

住宅街の中にひっそりと営業しているビア・バー「香菜里屋」. マスターである工藤の料理と推理に今日も常連たちは酔いしれる. 以前読んだ『花の下にて春死なむ』『桜宵』に続く第三弾.形式も前作と同じ連作短編集で,やっぱり前作と同じく5つの話が収められている. 前作を読み終わってから,松山市立中央図書館に行くたびに棚をチェックしていたのだが,いつ行っても貸出中.仕方がないので予約して借りてきた. ...
投稿者 さい
2006年01月29日

『水滸伝 濁流の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第十巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では梁山泊軍と呼延灼率いる官軍の対決が描かれている. 呼延灼といえば「連環馬」という,鎖で繋いだ馬に乗った重装備の騎兵で突撃をかける作戦で有名なわけだが,いたるところでオリジナリティを出している北方水滸伝だけに出てくるかどうか心配していたのところ,ちゃんと出てきた. で,もう一つ,呼延灼といえば「鞭」.あだ名が「双鞭」というだけあって,両手で2本の鞭を使うのだが,面白い話がある....
投稿者 さい
2006年01月26日

『てるてるあした』加納朋子

念願の高校入学の直前,夜逃げをする羽目になった主人公. 両親から離れ,一人で遠い親戚を頼ることになるが,そこで待っていたのは周囲から魔女とも閻魔大王とも呼ばれる元教師の老婦人だった... 個人的に評価が高かった『ささらさや』と同じ町が舞台で,登場人物も共通している. でも,前作を読んでいなくても全く問題なく読めるので,続編というよりも姉妹作という感じかな.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年01月24日

『水滸伝 嵐翠の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第九巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では罠に嵌められた林沖,新たな山塞の建設,柴進の救出作戦などが描かれている. 原作では柴進の救出作戦は妖術合戦になるのだが,この北方水滸伝では妖術・仙術の類は全く出てこないので,至極真っ当な救出方法になっている. で,今巻で気になったのは楊令の年齢詐称疑惑....
投稿者 さい
2006年01月23日

『愚者のエンドロール』米澤穂信

2年生のクラスが文化祭で上映するミステリー映画を見せられた古典部の面々. しかし,その映画は被害者が密室で腕を切り落とされて死ぬ場面で終わっていた. 実はその映画,脚本家が途中で病に倒れてしまったため,結末が不明なままだったのだ. 映画を完結させるため,脚本家が考えていた結末を探すことになった古典部の面々は,映画制作に携わったクラスのメンバーから各自の考える結末を聞くことにするが... 以前記事にした『氷菓』の続編.時期的には『氷菓』での謎解きと,その経緯を文集としてまとめるまでの間になるのかな.前作と違い,三津浜図書館所蔵....
投稿者 さい
2006年01月22日

『東大で教えた社会人学 お金に学ぶ』草間俊介+畑村洋太郎

東大 工学部の講義を書籍化した『東大で教えた社会人学 人生の設計篇』の続巻. 前巻と同様,松山市立中央図書館所蔵. 前巻は講義全体のダイジェスト版ということで人生設計に関する一般的な内容に終始しており,より専門的・具体的な内容は続巻で,ということだった.その続巻が本作なわけだが......
投稿者 さい
2006年01月19日

『ぐるりのこと』梨木香歩

児童文学の作家で最近は一般向けの小説も書いている著者によるエッセイ. 以前読んで面白かった『村田エフェンディ滞土録』と部分的につながっている『家守綺譚』を読みたかったのだが,あいにく貸し出し中だったので,こちらを松山市立中央図書館で借りてきた. タイトルになっている「ぐるりのこと」というのは「身の回りのこと」だろうから,気楽なエッセイだろうと気軽に読み始めたのだが......
投稿者 さい
2006年01月17日

『美人画報ハイパー』安野モヨコ

以前読んだ『美人画報』の続編.松山市立中央図書館所蔵. 漫画家である著者が美女になるために各種の美容法やダイエット法に挑戦するというのが元来のコンセプト(でも,前巻の具体的な内容をすっかり忘れてしまっているぞ). 本作でもそれは変わっていないのだが,どうやらそういう努力が実を結んだのか,「整形したの?」と言われるくらい美しくなったらしい. 巻頭に写真が掲載されていて,確かに色白でゴージャス系の女性になっているのだが,「使用前」の写真がないので,どれくらい美しくなったのかは分からなかった....
投稿者 さい
2006年01月14日

『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男

1943年,アリューシャン列島のある島から撤退した日本軍は4頭の軍用犬が置き去りにしていった.そしてイヌたちは波乱に富んだ運命に翻弄されつつも,本能の命ずるままに自らの血統を残していき,そして... 同じ作者の『アラビアの夜の種族』を借りようと思ったが無かったので,直木賞の候補にもなったこの作品を借りてきた.松山市立中央図書館所蔵. ...
投稿者 さい
2006年01月09日

『水滸伝 青龍の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第八巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では梁山泊軍VS祝家荘&官軍の対決が描かれている. 祝家荘戦で重要な役目を果たすキャラに解珍・解宝という二人組がいて,本巻の主役はこの二人みたいなものなのだが,裏の主役とでもいえるのが猪....
投稿者 さい
2006年01月08日

『水滸伝 烈火の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第七巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では宋江たち5人VS官軍1万5千人の対決,史進率いる小華山の一党の梁山泊入り,魯達の鎮関西殺しなどが描かれている. ...
投稿者 さい
2006年01月07日

『水滸伝 風塵の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第六巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では秦明・花栄の梁山泊入りと三山合併,危ない目にあったのにまだまだ続く宋江の旅などが描かれている. ...
投稿者 さい
2006年01月06日

『氷菓』米澤穂信

「やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に、だ」をモットーとする省エネ高校生「折木奉太郎」は,姉のアドバイス(命令?)で古典部に入ることに. 部員がいないために廃部の危機にあった古典部,その誰もいないはずの部室には同じ一年生の新入部員「千反田える」がいた... この作者の本は『さよなら妖精』『春季限定いちごタルト事件』に続いて三冊目. これまでの本と同様,高校生が主人公で「日常の謎」系のミステリ.松山市立中央図書館所蔵. ...
投稿者 さい
2006年01月04日

『水滸伝 玄武の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第五巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では江州で絶体絶命になった宋江の救出作戦,北方に消えた魯智深の行方,楊志の危機などが描かれている. ...
投稿者 さい
2005年12月31日

『Landreaall 1-7巻』おがきちか

2005年も終わりということで,このBlogに書いた本の記事を数えてみたところ,だいたい130個ほどあった.この中にはマンガも含まれているが,単純計算で3日に1個程度か. 実際には読んだけど記事を書いていないものもあるので,活字本のみで3日に1冊程度,マンガを含むと2日に1冊強くらい読んでることになるのだろうか. これだけ読んでいれば「趣味:読書」と書いても文句は言われないだろう. ついでなので今年読んだ本のベスト1を選んでみたのだが,少女マンガ部門のベスト1がこの『Landreaall』....
投稿者 さい
2005年12月27日

『水滸伝 道蛇の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第四巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では宋江の江州行きと,それによる多数の出会いが描かれている. ...
投稿者 さい
2005年12月24日

『水滸伝 輪舞の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第三巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では元軍人の楊志が山賊になる顛末と,宋江が役人から罪人となるエピソードなどが描かれている. ...
投稿者 さい
2005年12月21日

『彼方なる歌に耳を澄ませよ』アリステア・マクラウド

裕福な歯科医であるアレグザンダーは,ボロアパートで暮らすアル中の兄キャラムの様子を見るために毎週長時間のドライブをしている. アルコールなしでは満足に立つこともできない兄のため,酒を買いに行く途中,アレグザンダーは自分と兄の過去,そして18世紀末にスコットランドからカナダに渡ってきたハイランダーの末裔である「クロウン・キャラム・ルーア(赤毛のキャラムの子供たち)」と呼ばれる自分たち一族のことについて思いを馳せる... ネットの書評で絶賛されていたので,松山市立中央図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2005年12月19日

『水滸伝 替天の章』北方謙三

北方謙三による『水滸伝』の第二巻.松山市立中央図書館所蔵. 本巻では武松の虎退治,晁蓋ら7人による賄賂強奪と梁山泊入山というメジャーなエピソードが描かれている....
投稿者 さい
2005年12月18日

『水滸伝 曙光の章』北方謙三

言わずと知れた『水滸伝』を北方謙三が翻案したもの.松山市立中央図書館所蔵. 私にとって北方謙三という作家は「ハードボイルド作家」&「人生相談の人」で,特に後者の名台詞があまりにも印象的だったため(気になる人は「北方謙三 人生相談」でググってみよう),これまで作品を読んでみようという気にはならなかった. しかし最近ではハードボイルド作家というよりも歴史物の作家として活躍していて,しかも評価がかなり高い. なので,ハードボイルド物はともかく,歴史物は一度読んでみようかなと思っていた. そんな折,これまで取り掛かっていた『水滸伝』が完結し,しかも司馬遼太郎賞を受賞したというニュースを見かけた.ちょう...
投稿者 さい
2005年12月14日

『検索エンジン戦争』ジェフ・ルート&佐々木俊尚

本書は検索エンジンの発展の歴史を広告収入型ビジネスモデルという切り口で描いた本.松山市立中央図書館所蔵. 前半は検索エンジン上で表示されている広告の仕組みや価格決定メカニズム,さらには少しでも検索結果の上位に表示させるためのSEO(検索エンジン最適化)テクニックについて書かれている. 後半は検索エンジン業界の移り変わりをgoogleの登場を軸に描いており,今後の検索エンジン各社の戦場となるだろうデスクトップ検索や商品検索についても触れられている....
投稿者 さい
2005年12月10日

『読ませる技術』山口文憲

コラムニストである著者がカルチャーセンターでのコラム・エッセイの書き方教室を基に書いた,うまい文章を書けるようになるのではなく,まずい文章を書かなくするための本. いつものように松山市立中央図書館で借りてきたのだが,どういう理由で読もうと思ったのかが不明. 館内の端末で検索して借りたくらいだから,たまたま遭遇したのではなく,ネットでとりあげられていたのを読んだのだろうけど......
投稿者 さい
2005年12月07日

『きょうの猫村さん1』ほしよりこ

村田家政婦より犬神家に派遣された家政婦「猫村ねこ」. 料理上手でマッサージが得意な彼女は,どこからどうみても猫だった... ネット上で1日1コマずつ公開されていたマンガを一冊にまとめた本.学生さんが貸してくれた....
投稿者 さい
2005年12月06日

『灰色の輝ける贈り物』アリステア・マクラウド

カナダの東部にあるケープ・ブレトン島を舞台に,その地に生きる漁師や鉱夫とその子供たちの絆と断絶を描いた短編集. ネットで同じ作者の『彼方なる歌に耳を澄ませよ』という小説の存在を知ったので,その前哨戦として松山市立中央図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2005年11月30日

『村田エフェンディ滞土録』梨木香歩

1899年のトルコ・イスタンブール.かの地の歴史文化を学ぶために招かれた村田は,英国人のディクソン夫人の屋敷で,ドイツ人のオットー,ギリシャ人のディミトリス,トルコ人のムハンマドと共に生活をしている. ただでさえ国際色豊かな屋敷だが,ビザンティンの衛兵やお稲荷様,さらにはエジプトの神様までやってきて... 同じ作者による『家守綺譚』の評判が高く,本屋大賞にノミネートされたりもしたのだが,これまで読んだことがなかった. じゃあ読んでみようかと思ってはいたのだが,要チェックメモに書いていなかったため,図書館に行っても何度もチェックし忘れていた. 松山市立中央図書館で貸出冊数を埋めるための本を探して...
投稿者 さい
2005年11月25日

『冷蔵庫との対話』アクセル・ハッケ

機械が苦手で悲観主義的な中年男性の,勝ち気な妻のパオラ,かわいい息子のルイス,そして廃棄されることに怯えながらも電子レンジを憎悪する昔なじみの冷蔵庫のボッシュとの生活を描いたエッセイ集. ネットの書評などで興味を惹かれたものについては書名をメモっているのだが,この本もその一つ.しかし,メモっているのが書名だけなので,どうして興味を惹かれたのがよく分からない. ...
投稿者 さい
2005年11月21日

『All You Need Is Kill』桜坂洋

謎の侵略者「ギタイ」との戦争を続ける未来世界,初陣を迎えた主人公は敢え無く戦死.しかし,次の瞬間,主人公は出陣前日に戻っていた. どんなに逃げても襲ってくる死と繰り返される時間のループ.それを認めたとき,主人公は決意する... いわゆるライトノベルなのだが,ネット上でとても評価が高かった作品. 以前から読みたいと思っていたのだが,ようやく古本屋で発見した....
投稿者 さい
2005年11月20日

『リセット』北村薫

太平洋戦争に突入しようとする時代の神戸,女学校に通う「真澄」は友人の従弟である「修一」と出会う.戦争がその暗い影を落とす中でも友人たちと青春を謳歌していた真澄だが,激化する戦争はついに二人を引き裂いてしまう. 『スキップ』『ターン』と続いた「時と人 三部作」もついに最後.時を飛び越え,時を繰り返した前作までに対して,本作では... ...
投稿者 さい
2005年11月15日

『ターン』北村薫

駆け出しの版画家である「真希」はある夏の午後,ダンプとの衝突事故に遭うが,気がつくとそこは自宅.しかし,その周囲からは同居の母を含む,あらゆる生物が消えていた.しかも,どんな1日を過ごしても,15時15分になると一日前の自宅に戻ってしまう.誰もいない孤独な世界で同じ日を繰り返し続けたある日,突然電話が... 『スキップ』に続く「時と人 三部作」の第2作め.前作が25年を飛び越したのに対して,本作は同じ1日を繰り返す主人公を描いている....
投稿者 さい
2005年11月12日

『スキップ』北村薫

昭和40年代の初め,女子高2年生の「わたし」が目覚めると,そこは25年後の世界.しかも自分は夫と17歳の娘のいる42歳の国語教師だという. 17歳のこころに42歳の身体というギャップを抱えたまま,高校2年までの記憶しかない「わたし」は,国語教師として,高校3年生の担任として,生きていくことに... 日常の謎系のミステリーで有名な北村薫のもう一つの代表作である「時と人 三部作」の第1作....
投稿者 さい
2005年11月10日

『秘密 1-2巻』清水玲子

その清廉潔白さから「神父」とまで言われたアメリカ大統領が休暇中の別荘で刺殺された. その事件の重大性から,死者の脳からその人の見ていた映像を映し出すMRIスキャナーを利用した捜査が行われることになる. 音声までは再生できないMRIスキャナーを補うため,読唇術のスペシャリストであるケビンが捜査に協力することになるが,そこで彼が見たものは... 学生さんが面白いと言っていたので松山市立中央図書館で借りてきたマンガ....
投稿者 さい
2005年11月09日

『アヒルと鴨のコインロッカー』伊坂幸太郎

大学入学のため,仙台市に引っ越してきた「椎名」は,奇妙な隣人「河崎」と知り合いになる.そして,心を閉ざした留学生にプレゼントするため,本屋を襲撃して広辞苑を奪う片棒を担ぐ羽目に... その2年前,かつて「河崎」と交際していたことを後悔するペットショップ店員「琴美」はブータンからの留学生「ドルジ」と共に行方不明のペットを探していたが,その途中でペット狩りを行う男女と遭遇する... 伊坂幸太郎作品を読むのはこれで7作目.松山市立図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年11月07日

『敗者のゲーム』チャールズ・エリス

メインタイトルだけだと何の本だかわからないだろうが,副題は「なぜ資産運用に勝てないのか」.その名のとおり,資産運用の本で,個人投資家の参考書としては古典とされるくらい非常に有名な本. 以前から読みたかった本なのだが,松山市立図書館の中でも移動図書館所蔵になっている. 移動図書館所蔵の本でも現物は地下3階にあると端末では表示されるのに,借りるためには予約が必要&当日に借りられないという面倒くささを誇っていたので,今まで借りていなかった.ネット予約システムができたので,そちらで予約して借りてみた....
投稿者 さい
2005年11月06日

『嫁洗い池』芦原すなお

八王子の郊外に住む作家の「ぼく」のところには,同郷の友人である刑事が頻繁に訪ねてくる.しかし,その目的は「ぼく」ではなく,「ぼく」の奥さんが作る手料理とその推理力で... すみません,前回のをそのままコピペしました,ということで『ミミズクとオリーブ』の続編.松山市立中央図書館所蔵(これもコピペ)....
投稿者 さい
2005年11月03日

『ミミズクとオリーブ』芦原すなお

八王子の郊外に住む作家の「ぼく」のところには,同郷の友人である刑事が頻繁に訪ねてくる.しかし,その目的は「ぼく」ではなく,「ぼく」の奥さんが作る手料理とその推理力で... ネットで「料理が美味しそうな小説」として紹介されていた作品.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年10月27日

『偽善系 やつらはヘンだ!』日垣隆

人権ママや郵便局,大学教育,少年法,裁判制度などなど,正しいと思わされてきたことに「やつらはヘンだ!」と理路整然と反論する本. 以前読んだ『何でも買って野郎日誌』が面白かったので,同じ著者の代表作を借りてきた.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年10月26日

『グラスホッパー』伊坂幸太郎

轢き殺された妻の復讐のために非合法な商売を行う会社の一員となった「鈴木」,見つめあった人を自殺させる能力を持つ殺し屋の「鯨」,反抗しながらも相棒の命令で女子供も容赦なく殺す「蝉」. 三人の男たちはそれぞれの理由で伝説の殺し屋「押し屋」を追いかけることに... 伊坂幸太郎作品を読むのもこれで6作目.松山市立中央図書館所蔵. 刊行順でいくと,『チルドレン』の後の作品なのだが,そのテイストはかなり違っている....
投稿者 さい
2005年10月24日

『春季限定いちごタルト事件』米澤穂信

小鳩君と小山内さんは,日々の平穏と安定のため「小市民たれ」をモットーにお互いを助け合う同志. しかし,なぜか二人の前には常に謎があらわれ,本質が「名探偵」の小鳩君はそれを解く羽目に.彼らが目立たない小市民の生活を手に入れるのはいつの日か... 『さよなら妖精』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた. 系統としては北村薫や加納朋子と同じ「日常の謎」系のミステリ....
投稿者 さい
2005年10月20日

『何でも買って野郎日誌』日垣隆

ネット上の書評で,山ほどブランド物を買う人(で,稼ぐ人)みたいな紹介がされていたのに興味を持ったので,松山市立中央図書館で借りてきた. この著者の本としては『偽善系』というのがあちこちで話題になっているのを見かけてはいたのだが,今まで読んだことはなかった. というのも,なぜか動物学者(=日高敏隆)と混同していたことが大きいのだが,この著者の本業はジャーナリストで,それも結構な硬派な人らしいということが分かった. ...
投稿者 さい
2005年10月19日

『ブルータワー』石田衣良

脳腫瘍に冒され,残り少ない日々を高層マンションですごす主人公. そんなある日,耐え難い激痛の後に意識を取り戻した主人公は,自分が変異型インフルエンザが蔓延する200年後の日本で,身分階級によって住む場所が定められた高さ2000メートルの塔の支配階級のひとりとなっていることに気がつく. 激痛のたびに,余命わずかな現代の日本と,階級闘争の激化する未来世界を行き来する主人公は,本当に予言された救世主「嘘つき王子」として世界を救うことができるのか... IWGPでお馴染みの石田衣良が初めて書いたSFファンタジー.松山中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年10月18日

『東大で教えた社会人学 人生の設計篇』草間俊介+畑村洋太郎

東京大学 工学部の人気講義である「産業総論」の一部を書籍化したもの. 東大工学部出身だがなぜか商社に就職した変わり種のOBが講師となって,「技術者に必要な社会常識と経済知識」を技術者のタマゴに講義したもので,そこに失敗学で有名な元・東大教員がコメントをつけて補足するという形式で書かれている....
投稿者 さい
2005年10月14日

『さよなら妖精』米澤穂信

1991年,大学受験を控えた主人公たちはユーゴスラヴィアから日本を学びに来た少女と出会う. 宿泊先を失った少女に宿を紹介したことをきっかけに,少女と親しくなった主人公たちは,異邦人の視点から日常生活を見直すことになる. そして,2ヶ月の滞在期間が過ぎようとしたその時,少女の祖国で内戦勃発の知らせが... 同じ作者の『クドリャフカの順番』が面白いという話なので,その前哨戦として松山市立中央図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2005年10月13日

『東京ガールズブラボー』岡崎京子

札幌育ちのオシャレ女子高生サカエは両親の離婚のために東京へ引っ越すことに. 憧れの東京生活に夢は膨らむが,住むことになったのは「お婆ちゃんの原宿・巣鴨」. それにもめげず,サカエは級友やボーイフレンドたちを巻き込みながら,80年代の東京を爆走する! 『リバーズ・エッジ』と共に学生さんが貸してくれた本. 読み終わって思ったのが,...
投稿者 さい
2005年10月12日

『リバーズ・エッジ』岡崎京子

学生さんが貸してくれたマンガ.岡崎京子の最高傑作とされ,評価も非常に高い. 通常なら,あらすじを書くのだが,これがちょっと書きにくい. 醒めているが比較的普通の主人公,イジメの対象になっているゲイの同級生,摂食障害の高校生モデルの三人が河原に隠された死体によってつながっていく話なのだが,他にもドラッグや妊娠,オタク,援助交際,絞殺などなど,ショッキングなネタが満載. しかし,これが妙に淡々としている.ストーリー自体を考えてみると,結構激しいと思うんだけど.これは絵柄の影響もあるんだろうけど,意図的に抑えた感じで描いているのだろう....
投稿者 さい
2005年10月11日

『若者のリアル』波頭亮

「最近の若い者は...」という愚痴は大昔の遺跡にも見つけられるというが,最近の若者研究はなぜか若者擁護の立場の結論になっていることに違和感を覚えた著者による現代の若者分析の書. 経営コンサルタントでもある著者はその経験と視点から現代の若者を分析し,このままだと国を滅ぼしてしまうことになると結論づけ,その対策についても述べている. 松山市立中央図書館所蔵. ...
投稿者 さい
2005年10月09日

『陰陽師 全13巻』夢枕獏+岡野玲子

王朝文化花開く平安の都を舞台に,当代随一の陰陽師である安倍晴明と,高貴の生まれながら雅楽のことしか頭にない源博雅が,都を守護するため,跋扈する魑魅魍魎と対峙する. 当初は夢枕獏による小説の漫画化だったのだが,途中からオリジナル色がどんどん強くなっていき,幾何学や神秘学,さらにはエジプトの話まで登場するという,非常にぶっ飛んだ作品になってしまったが,このたび完結....
投稿者 さい
2005年10月05日

『おいしい店とのつきあい方』サカキシンイチロウ

ほぼ日刊イトイ新聞に連載されているコラム(?)をまとめたもの. ほぼ日の連載を読んでいるわけではないのだが,タイトルを覚えていたところ,松山市立中央図書館でたまたま見かけたので借りてきた. 著者は外食産業のコンサルタントで,その仕事柄,頻繁に外食をするわけだが,その経験をもとにレストランでの振舞い方や楽しみ方について書いてある本....
投稿者 さい
2005年10月03日

『ヒトクイマジカル』西尾維新

「死なない研究」をしている助教授に誘われて,モニターのバイトの面接のため,人里離れた研究所に面接にやってきた主人公一行. そこには,ひょんなことで知り合った,殺し屋にして名探偵の「一人で二人の匂宮兄妹」の姿が... 「戯言遣い」シリーズ第5弾. シリーズとしては次作(3巻もの)で終了らしいのだが,本作は最終作での敵役の顔見せ&導入部という感じか. やっぱり松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年10月02日

『モノの世界史』宮崎正勝

原始時代から現代まで,人類が作り出してきた「モノ」に焦点を当て,それらの「モノ」をつなぐ形で歴史を概観した本. 「火」「畑」から始まり,「暦」「豆腐」「ペスト」「ジャガイモ」「背広」「冷凍技術」「エレベーター」,そして最後の「インターネット」まで,さまざまな「モノ」の由来と発展,そしてその背景にあった歴史について書かれている....
投稿者 さい
2005年09月30日

『独り暮らしをつくる100』川上ユキ

ちょっと前から断続的に引越しを検討中なのだが,その情報収集をしているときに知った本. ちょっと検索してみると異常なくらい評価が高かったので,松山市立中央図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2005年09月27日

『白夜行』東野圭吾

大阪の廃ビルの中で質屋の主人が殺害される.容疑者と思われる男性は死亡し,共犯者と疑われた女性はガス中毒で事故死したため,事件は迷宮入り. 共犯者と疑われた女性の娘は美しく成長していくが,その周辺には彼女にとって都合のいい事件が頻発する.そして,その影には暗い眼をした被害者の息子の姿が... 東野圭吾作品を読むのは『分身』以来だが,最高傑作との声も高い作品だ.松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年09月24日

『電子の星』石田衣良

池袋ウエストゲートパーク(IWGP)のシリーズ4冊目(外伝を入れると5冊目). ハードカバーでは5冊目が既に出ているが,このシリーズは文庫で読むことにしているので,自分的には最新刊. すみません,3冊目の書き出しをコピペして修正しました.手抜きじゃないです. 書き下ろし中編があった3冊目と違って,雑誌掲載された短編4本で構成されている.売れっ子になってしまったので書き下ろしは難しいのだろうか. 個人的にIWGPは短編の方が合っている気がするので,そのあたりはどうでもいい....
投稿者 さい
2005年09月23日

『レインレイン・ボウ』加納朋子

9人しかいなかったソフトボール部のチームメイトが7年ぶりに再会する.再会の場はチームメイトの一人の葬儀.しかし,葬儀に参加したのは7人だけで,故人と一番仲の良かった人物が出席していなかった.7人はそれぞれの生活に戻っていくが,そこに現れる故人の影,そして出席しなかった人物が行方不明になったという知らせが... 加納朋子作品を読むのもこれで12作目.いつものように松山市立中央図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年09月15日

『リキュールの世界』福西英三

名前のとおり,リキュールのことについて色々と書かれた本. この手の酒関連の本は「写真がいっぱいのタイプ」と「酒に関するウンチクがいっぱいのタイプ」に大きく分けられるが,これは後者の方....
投稿者 さい
2005年09月05日

『斎藤家の核弾頭』篠田節子

超管理社会となった未来の日本.特A級市民の斎藤総一郎の妻となった美和子だが,総一郎は裁判官の職を失い,自身も育児と妊娠に苦しみながら,崩壊寸前の自宅に大家族で暮らす毎日.そんなある日,一家は政府の命令によって東京湾の人工島への移住を余儀なくされる.しかし移住先の生活にも馴染み始めた頃,再び政府による移住命令が... 篠田節子の小説を読むのもこれで3冊目.松山市立中央図書館所蔵. タイトルからコメディを想像して借りたのだが......
投稿者 さい
2005年09月04日

ブックバトン

先日,薄暗い研究室でゴソゴソと不審な活動をしていたところ,知り合いの学生さんが訪ねてきた.なんだろう?と思ったら,ブックバトンを渡してくれた. ということで,やってみることにしたのだが,仕事柄,普通の人よりも本とは縁が深いので,今回は仕事関係の本は除外. あと,マンガも含めると収拾がつかないので,マンガも除外してある....
投稿者 さい
2005年09月03日

『天才柳沢教授の生活 全12巻』山下和美

Y大経済学部教授、柳沢良則。 道路は右端を歩き、横断歩道以外では道を渡らない。 安くてうまい"あじの開き"のためなら、足を棒にしても歩き続ける。 本書は、道路交通法を遵守し、自由経済の法則に忠実な学者の、克明で愉快な記録である。 基本的に大学教員というのは変わり者なわけだが,それをさらに誇張して描いたマンガ. むかし,それこそ自分が大学教員になるとは思っていなかった頃に途中まで読んだときの印象はこんな感じのものだった. ところが,某教員の奥様が話題にしていて,特に「昭和編」が圧巻だったというので,「そんなにいい作品だったかな?」と思っていたところ,古本屋で文庫版の第1期(1-8巻)が売られてい...
投稿者 さい
2005年08月25日

『悠かなり愛し夢幻 全14巻』もとなおこ

過去に自ら「能力」を封印したウェンスタイン伯爵家の直系として生まれた美言と華聖.しかし,裏切り者のために長である祖父や母を失ったショックで美言は記憶をなくしてしまう. 若くして長とならねばならない美言を守るため,華聖は伯爵位を継ぎ,失われた炎水晶を集めることを決意する. そして8年後,父を失って天涯孤独になった美言は華聖と再会し,共に暮らすことに... 某教員の奥様から借りた少女漫画. 少女漫画はそれなりに読んでいるし,特にアレルギーもないのだが......
投稿者 さい
2005年08月23日

『マルドゥック・スクランブル 全3巻』冲方丁

大企業に所属する賭博師シェルによって爆殺された少女娼婦バロット.しかし,彼女は委任事件担当官によって蘇生され,人工皮膚を利用した電子干渉能力と空間認識能力,そしてネズミ型万能兵器にして相棒であるウフコックを武器に,事件の当事者としてシェルと対決することに... 以前紹介した『第六大陸』を押さえて第24回日本SF大賞を受賞した作品. その筋では評価が高かったのだが,あらすじ&本屋での立ち読みの結果,急いで読む必要もないだろうと判断したのだが,古本屋で安く売られていたのに遭遇したので購入....
投稿者 さい
2005年08月22日

『重力ピエロ』伊坂幸太郎

遺伝子の調査などを行う会社に勤める「私」と,落書きを消す仕事をしている弟の「春」が暮らす街で連続放火事件が起きる. 放火と落書きに関係があると主張する弟に巻き込まれて,「私」,さらには入院中の父親までが連続放火事件の調査に乗り出すが... 伊坂幸太郎作品を読むのはこれで5作目か.松山市立三津浜図書館で借りてきた....
投稿者 さい
2005年08月20日

『愛と経済のロゴス』

大学での講義(=比較宗教論)が書籍化された『カイエ・ソバージュ』全5冊の3巻目. 前巻までは松山市立中央図書館で借りいたのだが,この巻と5巻はなぜか三津浜図書館にしかないので,そちらまで行って借りてきた. 今巻のメインテーマの「経済と愛」.某講義を思い出す学生さんもいるかもしれないが,今巻では,経済活動の奥底には欲望が存在しており,それは愛も同様,つまり経済と愛は欲望を通じてつながっている,とされている....
投稿者 さい
2005年08月19日

『天使』佐藤亜紀

第一次世界大戦直前のオーストリア,その天性の「感覚」を顧問官に見出されたジェルジュは,諜報員としての教育を受け,戦乱の欧州各国に潜入する.ジェルジュが対峙するのは同じ「感覚」を持った能力者... 作者の佐藤亜紀は日本ファンタジーノベル大賞出身者で,メジャー受けはしないものの,その筋では評価が高い作家.この作品も芸術選奨新人賞とかいうのを受賞している. でも,実はこの作者の作品を読むのはこれが初めて.ちなみに松山市立三津浜図書館所蔵....
投稿者 さい
2005年08月15日

『デザートはあなた』森瑤子

広告代理店のプランナーである主人公は名だたるプレイボーイ. 自慢の手料理で美女をもてなした後の決め台詞は「デザートはあなた」. 主人公がハンサムだわ,仕事はできるわ,金持ちだわ,キザだわで,男性としては全く感情移入できない作品のはずなのだが,これが面白かった. その理由の一つは,女性を口説くのに片っ端から失敗するコミカルさだろうけど,もう一つは主人公が仕事を通じてスペインの聖家族教会に取り組む彫刻家を支援しようとするという試みが描かれているためだろう....
投稿者 さい
2005年08月09日

『観用少女 全2巻』川原由美子

ミルクと砂糖菓子,そして何よりも愛情を栄養として,美しく育つ観用少女と,それを巡る人々の物語を描いた一話完結の短編集.某教員の奥様から借りたもの. 今回貸してもらったのは文庫化されたものだったのだが,文庫化される前のもの(ワイド版 全4巻)を1巻だけ読んだことがある.そのときは「絵はきれいだし,話もヒネリが効いているんだけど,何だか好きになれないなあ」というのが率直な感想だった. だが,今回,全話まとめて読んでみたところ,かなり印象が変わった....
投稿者 さい
2005年08月04日

『熊から王へ』中沢新一

大学での講義(=比較宗教論)が書籍化された『カイエ・ソバージュ』全5冊の2巻目.前巻同様,松山市立中央図書館所蔵. 今巻では,前巻でも出てきていた「対称性」というのが鍵となっている. 人間は狩猟・漁労・採集を通じて自然界からさまざまなものを手に入れているわけだが,それを一方的に奪ったままにするのではなく,獲物の作法に従って解体・葬送することで,あるいは牝や仔は獲物としないなどの決まりを守ることで,自然との間に対称的な関係を成立させてきたのであり,それを伝えるためにさまざまな神話や民話があるとしている....
投稿者 さい
2005年08月01日

『リエギエンダ物語 全3巻』もとなおこ

同僚の奥様から借りた本,というかマンガ. リエギエンダという小さな街で紅茶雑貨店を開いている店主と,その店を訪れる客(&街の住人)の物語. 1巻の冒頭のカラーページ&最初の話がメルヘン全開!という感じだったので(=クマやシカの紳士と女の子が月夜のお茶会で空を飛んでしまう),「うーん,これはちょっと...」と正直思わなくもなかったのだが,その後の話は問題なく楽しめた. なぜだろうと,つらつら考えていたら,「メルヘンとファンタジーの違い」とか「イメージとストーリーの違い」とかに辿り着いた....
投稿者 さい
2005年07月26日

『チルドレン』伊坂幸太郎

大学生の鴨居と陣内は閉店間際に飛び込んだ銀行で銀行強盗に巻き込まれるが,そこで同じく人質になった全盲の永瀬と知り合う... 伊坂幸太郎作品を読むのもこれで四作目. 基本的にはある一人の登場人物を中心にした連作短編集なのだが,作者は「短編集のふりをした長編小説」と言っているらしい. 確かにそれぞれの短編があちこちでリンクしているので,長編小説としても読めるかもしれないが,読んでみるとそんなことはどうでもよくなるくらい面白かった....
投稿者 さい
2005年07月25日

『瞬間情報処理の心理学』海保博之 他

タイトルのとおり瞬間の情報処理についての色々書いてある本で,いわゆる認知科学の本.副題は「人が二秒間でできること」.松山市立中央図書館所蔵. 二部構成になっており,第一部では一瞬だけしか見ていないものを正しく把握できる理由や瞬間の判断のメカニズムなどの原理的な話が取り上げられている. 第二部は「瞬間情報処理の質を高めるコツ」ということで,わかりやすい文章や速読法,さらには瞬間的に買う気にさせる広告の話や買わせるための店舗設計やディスプレイ方法などが取り上げられている. ...
投稿者 さい
2005年07月23日

『サイコロジカル 上下』西尾維新

天才・玖渚友のかつての仲間を救出するため,山奥の謎めいた研究所を訪れた主人公一行.奇妙な研究員との遭遇の後,面会した当の本人は救出を拒む. その理由を考える一行だが,その翌日,コンピュータ・システムによって守られた密室の中で殺人事件が起こる... 「戯言遣い」シリーズ第4弾にして,初の上下巻.やっぱり松山市立中央図書館所蔵. 相変わらずの言語感覚とライトノベル的概念が続出なので,ダメな人には徹底的に合わないだろうなあ....
投稿者 さい
2005年07月21日

『女たちのジハード』篠田節子

適齢期を過ぎて社内のお局となっている康子,条件のいい男性との結婚を目指して日々努力するリサ,得意の英語で自立を目指す上昇志向の強い紗織.同じ中堅保険会社に勤めるOLたちの未来は... 以前読んだ『夏の災厄』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた.ちなみに直木賞受賞作. 前回読んだ『夏の災厄』がハードで男性的な話だったので,そのノリを期待していて読み始めたのだが......
投稿者 さい
2005年07月19日

『コッペリア』加納朋子

ある人形師の造った人形に魅せられた青年,その人形師の造った人形にそっくりな劇団女優,その人形師を見出した事業家であり劇団女優のパトロンでもある男性.ある人形師とその人形を中心に,三者の思惑が絡み合う... 加納朋子の10冊目の単行本にして,作者初の長編らしい.そう言われてみると,確かに今まで読んだのは連作短編か中編ばかりだな.ちょっと意外だった. 作者お得意のちょっとユーモアを交えた日常の謎を期待していると,ちょっと足元を掬われるかもしれない. どちらかというと『ガラスの麒麟』や『いちばん初めにあった海』系の,ちょっと不気味な雰囲気が漂っているのは,重要な小道具として出てくる人形のせいだろうか...
投稿者 さい
2005年07月16日

『クビツリハイスクール』西尾維新

「人類最強の請負人」に騙され,名門女子高に潜入して依頼人である女子高生を脱出させる手伝いをすることになった主人公「戯言遣い」. しかし,その学校は普通の学校ではなく,脱出させるのは命がけの仕事になる. 理事長に直談判するべく理事長室に向かった一行だが,当の理事長は密室の中でバラバラ死体になっていた... 「戯言遣い」シリーズ第3弾.やっぱり松山市立中央図書館所蔵. なかなか遭遇しなかったので予約したのだが,それでも届くまでにはかなりの時間がかかった.特に予約が溜まっていたというわけでなく,前の貸出者がなかなか返却しなかっただけのようだが......
投稿者 さい
2005年07月13日

『螺旋階段のアリス』加納朋子

会社の「転職退職者支援制度」を利用して,昔からの夢だった私立探偵を開業した主人公.その前に現れたのはパートタイムでの助手を希望する不思議な少女と,当初の夢とは全然違った依頼の数々だった... 加納朋子作品を読むのもこれで10冊目.作者的には8作目になるのかな. 作者お得意の日常の謎+連作短編形式ということで,安心して読めることは読めるのだが......
投稿者 さい
2005年07月04日

『人類最古の哲学』中沢新一

大学での講義(=比較宗教論)が書籍化された『カイエ・ソバージュ』全5冊の第1巻であり,タイトルにもなっている「人類最古の哲学」というのは「神話」のこと.松山市立中央図書館所蔵. 同じように非合理的なものに見えても,神話は後に発生した「宗教」と違って常に現実世界を意識したものであり,石器時代以降の人類はこの神話という様式を用いて,自然の秩序や人生の意味と行った哲学的な思考を行ってきたと著者は主張する. そこで著者はレヴィ=ストロースの用いた構造主義的アプローチによる神話分析を... と難しいことを書いても仕方ないし,読むだけならこんな能書きを知らなくても大丈夫. なにせ,誰でも知っている『シンデ...
投稿者 さい
2005年06月29日

『夏の災厄』篠田節子

春だというのに夏のような暑さが続く頃,古くからの集落と新興住宅地が混在する埼玉県のある市で奇妙な症状の患者が多発するようになった. それらの患者は日本脳炎と診断され,市や医療機関は従来の法律と治療法に従って対処を行うが,その発病率の高さや明らかにならない感染ルートは日本脳炎のそれらでは説明ができないものだった... どういう経緯だったか忘れたが,面白いという情報を仕入れたので,松山市立中央図書館で借りてきた. あらすじからも分かるように,いわゆる疫病物なわけだが......
投稿者 さい
2005年06月28日

『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』山田真哉

各方面で話題になっている新書で,周囲の教員も多数読んでいたりする. この手の話題本は確実に古本屋に回ってくるので,よっぽど読みたい場合や衝動買いの神が降りてこない限り,書店では買わないことにしている. そろそろ古本屋でも見かけるようになってきたので,機会があったら買おうかと思っていたところ,学生さんが読み終わったというので借りてみた. メインタイトルだけで判断すると「さおだけ屋」の話だけで新書一冊分も書けるのかと思うかもしれないが,サブタイトルが「身近な疑問からはじめる会計学」ということで,さおだけ屋の話は最初だけで,住宅街の中の高級フランス料理店や割り勘の支払い役などの全7エピソードを通じて...
投稿者 さい
2005年06月25日

『現実入門』穂村弘

「人生の経験値」が異常に低い著者が,人生で初めてのことにチャレンジしていくという体験記的エッセイ. そもそも穂村弘のエッセイを読むきっかけになった本であり,作者と同じく人生の経験値が低く,世界音痴の傾向がある私としては,かなり期待の高い一冊....
投稿者 さい
2005年06月24日

『異国伝』佐藤哲也

「その昔、とあるところにそれは小さな国があった。あまりにも小さいので地図に載ったことがなかったし、旅行者向けの案内書にも載ったことがない。」という書き出しで始まる,「あ」から「ん」までの45文字で始まるタイトルを持った45編の掌編集. この作者が書いた『熱帯』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた. さて,肝心の中身だが...これが難しい.一番最初に収められた「愛情の代価」がなかなか雰囲気がある作品で良かったので,「こういう話ばっかりなのかな」と思って読み進めたところ,2つめの「威光の小道」は全然違う作風.しかし,これはこれで面白いなあと思って次の「鬱々の日々」を読むと,これまた違う味...
投稿者 さい
2005年06月22日

『スタア・バーへようこそ』岸久

世界のカクテル・コンクールのロングドリンク部門で日本人初のチャンピオンになったバーテンダーによるバーの入門書,というかエッセイか? どういう経緯だったか忘れたが,ネットで存在を知って読みたくなり,図書館を検索したのだが見つからない.ということで,初めて図書館にリクエストしてしまった.なので松山市立中央図書館所蔵. 基本的なカクテルの種類から始まり,スタンダード・カクテルと著者が経営するスタア・バーのアレンジ版の違い,お酒の種類とバーテンダーの裏方仕事,さらにはこの世界に入るきっかけと心構えなど,バーについての知識を得るだけでなく,読み物としても楽しめる一冊に仕上がっている....
投稿者 さい
2005年06月20日

『分身』東野圭吾

自分を避けていた母の不可解な死に疑問を持った鞠子はその謎を調べるため,北海道から東京へと向かうが,訪ねた先で初めて会った人に見覚えがあると言われる. 一方,母から禁止されていたTV出演を強行した双葉は自分のことを調べている男の存在を知るが,その矢先に母が交通事故死する.母の死と父のことについて聞くため,母の知人に会いに東京から北海道に向かう双葉だが,初めて訪れた北海道で,やはり初めて会った人に知人のように声をかけられる... 学生さんが面白かったということで貸してくれた作品. 東野圭吾の作品は何冊か読んでいるが,医学系(『宿命』とか『変身』とか)の作品を読むのは今回が初めて....
投稿者 さい
2005年06月18日

『ささらさや』加納朋子

突然の交通事故で最愛の夫を亡くしたサヤは,生まれたばかりのユウスケを奪おうとする義父一家から逃れるため,伯母が残してくれた田舎の家に引っ越すことに. 赤ちゃんを抱えた慣れない生活でさまざまなトラブルに巻き込まれるサヤだったが,ユニークな住人たちと,幽霊になっても彼女を助けてくれる夫に見守られて... ということで,加納朋子作品を読むのもこれで9作目. 私の中では「加納朋子≒乙女チック」という図式が出来上がっているのだが,本作も道具立てからすると,かなりの乙女チック度を誇っている.なんたってハンサムで頭が良い夫(ちなみに映画会社の社長の息子)が死んでからも愛する人たちを見守るという話だ....
投稿者 さい
2005年06月17日

『太陽の簒奪者』野尻抱介

水星を材料にして突如形成され始めた巨大なリングによって,日照量が激減した地球はリングの破壊を計画する.異星文明との遭遇に憧れていた女性科学者は,異星文明が造ったと思われるリングを破壊して人類を救うため,宇宙へと旅立つ... 非常に評価が高いSF小説で,いわゆるファーストコンタクト物. この著者の作品については,これまでもライトノベルの方でかなり読んできたのだが,そのノリを期待したのがまずかったのか,ちょっとハード過ぎ&淡々とし過ぎで,あまり楽しめなかった....
投稿者 さい
2005年06月16日

『桜宵』北森鴻

住宅街の中にひっそりと営業しているビア・バー「香菜里屋」. マスターである工藤の料理と推理に今日も常連たちは酔いしれる. 以前読んだ『花の下にて春死なむ』の続編.形式も前回と同じ連作短編集で,今回は5つの話が収められている. 前作では「うーん,解決したのかなあ?」的な話が多かったのだが,本作ではその傾向は少し薄まっている感じがする. その意味では,前作よりも面白く読めたのだが,話の掲載順に問題があるようで,読み進んでいくにつれて「...」となっていき,最後には「うわぁ...」となってしまった....
投稿者 さい
2005年06月15日

『ホテルカクタス』江國香織

いちおう小説の部類だと思うので,いつものスタイルなら紹介文から書き始めるのだが,普通に紹介文を書いてしまうと,BlogPetのグラハムによる電波系な記事と思われてしまいかねない. 『ホテルカクタス』という名前のアパートには「帽子」と「きゅうり」と「数字の2」が住んでいて,競馬に行ったり,誕生日を祝ったり,里帰りしたりしました. ほら,電波系でしょ. ...
投稿者 さい
2005年06月12日

『福祉を変える経営』小倉昌男

著者は「クロネコヤマトの宅急便」で有名なヤマト運輸の元社長であり,現在ではあって当然の存在になっている宅急便(宅配便)事業を開発した人. ビジネスの世界を引退してからはヤマト福祉財団を設立し,福祉の世界に経営を導入しようと活動をしている. この本は福祉に経営を取り入れることの必要性と財団で行っているセミナーの内容を紹介したもの. 「福祉の世界にこそ経営が必要である」という主張については全面的に賛成なのだが,この本を読む以前に財団の活動を取り上げたTV番組を見たことがあったし,経営のことについても経営学をある程度学んだ人ならば当然のことばかりなので,そういう方面では新しい発見はあまりなかった. ...
投稿者 さい
2005年06月11日

『勝負の分かれ目』下山進

取引所の電子化がもたらすチャンスにいち早く着目し,通信社から金融情報企業への転身を図ったロイター. そのチャンスに気づきながらも通信社であることに固執した時事通信. 早くから情報化の利点に気づき,ロイターにライバルと認められた日経新聞. 強者連合として生まれながら時流の流れに取り残されていった,ある意味で日本を象徴しているようなQUICK. その独自の商品の優秀さと若い企業特有のバイタリティで追撃するブルームバーグ. 情報ベンダー企業の盛衰を描いたルポルタージュであり,国際経済の動きから企業の戦略,情報化,労働組合,ジャーナリズムまで,さまざまテーマを含んだ非常に読み応えのある一冊....
投稿者 さい
2005年06月09日

『伝わる・揺さぶる!文章を書く』山田ズーニー

傍から見ると私の本の選び方は訳が分からない,支離滅裂に思われるかもしれないが,自分自身ではそれなりのスジが通っているつもりだ. で,そのスジの中には「こういう本には手を出さない」というスジもあって,実はこの本はその「読まないスジ」にバッチリはまっていた.そのため,書店で並んでいるのを見ても手にも取らなかった. その後,ネットでえらく絶賛しているのを複数読んだので,古本屋にて105円で購入.出張のときに読んでみた....
投稿者 さい
2005年06月04日

『蒲生邸事件』宮部みゆき

予備校受験のために上京した主人公は泊まっていたホテルの火災に巻き込まれるが,時間旅行能力を持つ男に助けられる.しかし,辿り着いた先は二・二六事件が起きる直前の東京だった. 男が回復するまで,元陸軍大将のいる屋敷に身分を隠して世話になることになった主人公だったが,銃声と共に屋敷の主は死亡.それまでの言動などから自殺かと思われたが,自殺ならば現場に残されるはずの銃が残っていなかった... ネットでの感想などを読む限り,えらく評価が分かれている作品.大阪出張のお供として持って行き,西梅田で読み終えた....
投稿者 さい
2005年05月27日

『ワイド版 風雲児たち 全20巻』みなもと太郎

今回の大阪出張の成果の一つ. 以前から『風雲児たち』という漫画の存在は知っていた. 歴史ギャグ漫画であり,もともとは幕末を描く予定だったのだが,そのためにはアレも描いておかなければ,コレも描いておかなければ...ということで,結局は関ヶ原から話がスタートし,いつまで経っても本来の目的である幕末に辿り着かないということで有名だったからだ. あと,横山光輝の『三国志』を読むと,巻末にちょっとだけ宣伝が載っていたことから(同じ雑誌に連載されていたため),名前は知っているという人も多いと思う. とはいえ,歴史ギャグ漫画というカテゴリー自体が謎だったし,絵柄的にもイマイチだったので,長い間読んだことが...
投稿者 さい
2005年05月24日

『一年間10万円 つくる、食べる、もてなす 365日全記録』魚柄仁之助

古道具屋店主 兼 食文化研究家(?) 兼 その他色々である著者が1年間でどんなものを作ってどんなものを食べたかの記録. 生活コストのことが気になっていたときにタイトルに惹かれて借りてきた.松山市立中央図書館所蔵. 刊行自体は1999年なのだが,友人に食べたものの記録をFAXで送ったものが由来である点や,毎日の出来事&作った・食べたものの記録である点など,現在あちこちで書かれている日記型Blogと非常によく似ている.そういうことを考えると,元祖Blog本なのかもしれない. ちなみに,食費を抑えるための参考書には不適当(もらい物が多い)だし,レシピ本として使うにはちょっと不足(同じ著者の他の本の方...
投稿者 さい
2005年05月23日

『いちばん初めにあった海』加納朋子

加納朋子の4冊目の作品.以前書いた『ガラスの麒麟』は4作目ではなく5作目らしい. 連作短編集ではなく2編の中編で構成された1冊. 表題作の中編は,『ななつのこ』や『ガラスの麒麟』と同じ,作中作をうまく組み合わせた作品.作中作やら現実やら回想やらが何の前触れもなく始まるため,読んでいる最中に訳が分からなくなってグラグラしてきたが,最終的には落ち着くところに落ち着いた感じ. 読み終わって「関西弁っていいなあ」と思ってしまったわけだが,作中に出てくるような関西弁は若い人は使わないと思うぞ(大阪出身者の感想)....
投稿者 さい
2005年05月22日

『東京アンダーワールド』ロバート・ホワイティング

終戦直後の混沌とした東京を舞台に,進駐軍崩れの外国人や政治家,ヤクザ,娼婦,プロレスラーなどの有象無象がヤミ社会で繰り広げた饗宴を描いたルポルタージュ,になるのかなあ. まあ,なんというか,日本に対するイメージがガラガラと音を立てて崩れていくような本だった. 生まれてからずっと日本にいる私でもそうなんだから,日本にきたことがない外国人がこの本を読んでイメージする日本というのは,かなり凄いことになっているような気がする. どのあたりまでが本当で,どれくらいの誇張があるのかどうかは分からないけど,幾分かの真実は確実に含まれているんだろう. この手のことにはできるだけ近寄らないようにしているんだが,...
投稿者 さい
2005年05月17日

『陽気なギャングが地球を回す』伊坂幸太郎

人間嘘発見器,天才スリ,演説(と嘘)好き,正確な体内時計をもつドライバー. ひょんなことから知り合った4人のメンバーの裏の仕事は銀行強盗. 今回の仕事も成功したかに思えたが,逃走中に別の強盗と遭遇し,車ごと現金を奪われてしまう.現金を奪い返すために活動を開始したが... 『ラッシュライフ』『オーデュポンの祈り』に続いて,伊坂幸太郎の作品を読むのもこれで三作目. これは面白かった! この作者の話としては,『ラッシュライフ』の黒澤の話が一番好きだったのだが,そのノリで1冊書いてみました,という感じ. この調子で同じ登場人物による続編もぜひ書いてもらいたい. デビュー作(サントリーミステリー大賞で佳...
投稿者 さい
2005年05月15日

『もうおうちへかえりましょう』穂村弘

『世界音痴』に続く穂村弘のエッセイ第二弾.やっぱり松山市立中央図書館で借りてきた. 基本路線は前作と同じなのだが,文学・短歌関係の雑誌に掲載されたエッセイが多いためか,前作よりもダメ人間っぷりの露出が低くなっており,私としては面白味ダウンという感じ. そもそも私が穂村弘のエッセイを読もうと思ったのは,最新刊の『現実入門』が面白そうだったためなのだが,これで最新刊に至るまでのエッセイを全て読んだことになるので,ようやく読む準備が整った. ということで,図書館で予約してみた.早く入荷しないかな. 最後に気に入った箇所を引用. 「この世界」からはみ出してしまっていることに苦しむのには意味があり、その...
投稿者 さい
2005年05月12日

『約束』石田衣良

身近な人の死や病によって喪失感や苦しみに捕われた人たちが,そこから立ち上がっていくさまを描いた短編集. 内容および形式的に『スローグッドバイ』や『1ポンドの悲しみ』と同じ系統に属している感じ.私はこれらが両方とも好きなので,図書館で遭遇するのを首を長くして待っていたのだが,先日ブックオフで見かけたので購入してきた. で,内容のほうなのだが,amazonのレビューに「甘く優しい」けど内容が軽くてプロットが安直という批評があったけど,確かにその傾向が強いと思う.全体的に淡々としているし,読んでいてストーリー展開が予想できてしまうのだ....
投稿者 さい
2005年05月07日

『花の下にて春死なむ』北森鴻

住宅街の中にひっそりと営業しているビア・バー「香菜里屋」に今日も常連が集う. 彼らのお目当ては,度数の異なる4種類のビール,季節の旬をとらえた美味しい料理,そしてマスターである工藤の人柄と推理力... しまった,同じ作者の『メイン・ディッシュ』と紹介文がほとんど同じだ! というわけで,『メイン・ディッシュ』と同じく料理人を探偵役にして,『メイン・ディッシュ』と同じくそこに常連さんが謎を持ち込むという,『メイン・ディッシュ』と同じく連作短編集. ちなみに『メイン・ディッシュ』と同じく松山市立中央図書館で借りてきた. と書いてしまうと,『メイン・ディッシュ』と同じじゃないか!と思われるかもしれない...
投稿者 さい
2005年05月06日

『自由を考える 9・11以降の現代思想』東浩紀・大澤真幸

基本的に私の読書傾向は偏っているわけだが,このところは図書館を利用することが多いため,以前よりも読書の幅は広がっている. とはいえ,読んだ本の中で取り上げられていた本を読んだり,面白かった本の作者の違う本を読んだりと,何らかの形でつながっているイモヅル式読書法であるため,これだけだと選ぶ本に偏りが出てくる. これを補完するのが「書店で見かけた」や「ネットで見かけた」などに端を発するランダム式読書法なのだが,個人の嗜好のフィルタがかかっているとはいえ,これらの2系統で選んだ本がピッタリ一致することはあまりない. しかし,時にはこれが一致することがある.最近だと『星の王子さま』がそれだったのだが,...
投稿者 さい
2005年04月30日

『ガラスの麒麟』加納朋子

晩冬のある日,女子高生が通り魔によって殺害された. その少女の書いた童話の挿絵を依頼されていたイラストレーターは,事件によって仕事を中止を余儀なくされるが,その事件以来,一人娘の様子がおかしくなる.自分は殺された女子高生であり,犯人の顔を知っているというのだ... 加納朋子の4作目に当たる作品.松山市立中央図書館所蔵. 作者お得意の連作短編集なのだが,話によっては主人公が違っていたりもする. しかし,どの話も登場人物がどこかでつながっていて,名探偵役の保健室の先生が謎を解いていくという構造になっている. で,最終的にはそれらが全部つながって一つの話が完結するという,私好みのスタイルの作品....
投稿者 さい
2005年04月29日

『心理学化する社会』斎藤環

トラウマやアダルトチルドレンといった精神医学由来の概念が多用される現代社会を,現役の精神科医が分析した本.松山市立中央図書館で借りてきた. 音楽や映画におけるトラウマの扱われ方について概観した後,トラウマ概念についての説明と現在の扱われ方への苦言,カウンセリング・ブームの背景にあるもの,事件報道と精神鑑定,脳ブームと,現代社会のさまざまな現象について分析している. 軽い気持ちで読み始めたのだが,思ったよりも歯応えがあった.しかし,これでも作者の本としては読みやすいほうなのだという.うーん,ラカンだとか解離性障害だとか,その手の概念をちゃんと押さえていれば理解しやすかったんだろうけど......
投稿者 さい
2005年04月27日

『オーデュポンの祈り』伊坂幸太郎

外界との交流が1世紀半以上途絶えていた島で,島民の拠り所となっていたカカシが殺された.未来を知っているカカシがどうして殺されたのか? 交流が途絶えてから2人目の来訪者に図らずもなってしまった主人公は,奇妙な島民との交流を通じて,カカシ殺害の謎を追うことに... 『ラッシュライフ』に続いて読んだ伊坂幸太郎作品だが,順番としてはこれがデビュー作になるのかな.これも松山市立中央図書館で借りた. 『ラッシュライフ』にも「神様」のような現実離れした存在が出ていたが,本作はそれに輪をかけて現実離れしている.未来を知っているカカシもそうなのだが,150年以上外界との交流がほとんどないにも関わらず,車が走って...
投稿者 さい
2005年04月26日

『豊かさの精神病理』大平健

『やさしさの精神病理』が面白かったので,そちらの冒頭で4部作として挙げられていたシリーズの最初の本作を借りてきた.松山市立中央図書館(書庫)所蔵. 著者は,それほど重篤な症状があるわけではないのに気軽に精神科医を訪れる「よろず相談の患者」が増加しているが,それらの多くは,自分や他者といった人について語ることは苦手だが,ブランド品や食べ物,さらにはペットといったモノについては雄弁になる「モノ語りの人びと」だという....
投稿者 さい
2005年04月24日

『沙羅は和子の名を呼ぶ』加納朋子

いつものように松山市立中央図書館に本を返しに行き,そのままで本を借りてしまうわけだが(いわゆる「悪魔の連鎖」),この頃は加納朋子のコーナーを常にチェックしている. できるだけ発表順に読みたいので,次は『いちばん初めにあった海 』か『ガラスの麒麟』を読みたいのだが,端末では館内にあることになっていてもなぜか本棚には存在していない.仕方ないので,前回読んだ『月曜日の水玉模様』の次の作品である本作を借りてきた. いつものようにミステリーだと思って読み始めたら,これがミステリーというよりはちょっと不思議な要素(幽霊とか異世界とか)を含んだ短編集で,しかも作者得意の連作短編集ではなく,完全にバラバラな短...
投稿者 さい
2005年04月22日

『やさしさの精神病理』大平健

以前読んだ『自己コントロールの檻』で取り上げられていた本. 中で引用されていた「やさしさがオレたちの礼儀なんですよ」という若者の言葉が気になったので読んでみた.松山市立中央図書館所蔵. 現代には「やさしさ」が溢れているが,若者のいう「やさしさ」というのが従来の「やさしさ」と違っているのではないかという問題意識で書かれた本. 精神分析医である著者が実際にカウンセリングした事例をもとに構成されている本で,非常に読みやすく面白かった....
投稿者 さい
2005年04月19日

『ラッシュライフ』伊坂幸太郎

「金で買えないものはない」と豪語する事業家,独自の美学を貫く泥棒,神様の解体を描く青年,愛人の妻の殺害を計画する精神分析医,銃を拾った失業者.仙台を舞台に,5人の関係するそれぞれの物語は微妙に絡まりあい,そして... 前回の直木賞候補にもなった作者の第2作目らしい. 構成と○○の仕掛けには驚かされたが,そこまで凝るのならタイトルまで拘ってもよかったんじゃないだろうか.いくつか無理やりなエピソードがあったりもするんだけど,「ラッシュライフ」というタイトルは内容を適切に表現していないような気がする.同名のジャズがあるらしく,もしかするとそちらを知っていれば印象は違ってくるのかもしれないけど. 話的...
投稿者 さい
2005年04月18日

『メイン・ディッシュ』北森鴻

小劇団の看板女優「ねこ」の自宅に,座付き作者「師匠」を筆頭に劇団の仲間が今日も集まる.彼らのお目当ては「ねこ」の同居人「ミケ」の料理と名推理... Yahoo!の掲示板で知って,面白そうだったので松山市立中央図書館で借りてきた. 形式としては私が好きな連作短編集で,読む前は「ねこ」と「ミケ」が主人公の話ばかりが掲載されていると思っていた. でも,2本目に料理が重要なネタになっていること以外は関係のない話が挿入されており,「あれ? あれれ?」と思いつつ読み進めていったのだが......
投稿者 さい
2005年04月16日

『世界音痴』穂村弘

先日,書店にてタイトルに惹かれて『現実入門』という本(エッセイらしい)をパラパラと読んでみたのだが,どうも面白そうだったので,同じ作者の第一エッセイを読んでみた.松山市立中央図書館所蔵. 内容だが,30代後半の独身,母と同居していて一人暮らしの経験はなく,献血をしたこともないが,夜中に菓子パンをもしゃもしゃ食べるサラリーマン歌人(当時)の著者による告白的エッセイ. タイトルにもなっている「世界音痴」(多くの人にとって「自然」にできることが「不自然」になってしまう人のこととでも言えばいいの)の傾向が私にもあるので,ある部分は非常に共感できるのだが,ある部分は微妙な狂気を感じてしまい,読んでいて非...
投稿者 さい
2005年04月14日

『前田建設ファンタジー営業部』前田建設工業株式会社

マジンガーZの格納庫を現実に作ることは可能なのか? 可能だとすればその値段は? 後期はどれくらいかかるのか? そういうことを真面目に検討した本. このところ,ウェブの内容をまとめて書籍化したものが多いけど,これもその類で,もともとは前田建設のウェブサイトに掲載されていた業務紹介のための企画. 読む前に想像以上に現実的な話ばかりだったのだが,おかげで土木技術にちょっと詳しくなってしまい,先日も城山で花見をした帰りにロープウェイの駅舎の工事現場を見て,「これはコンクリート吹付けとロックボルトかな」などと呟いてしまった. あと,自社だけでは作れないところについては,他社に検討をお願いしているのだが,...
投稿者 さい
2005年04月12日

『アキハバラ@DEEP』石田衣良

あるサイトがきっかけでITベンチャーを起業した社会不適合のオタク3人.格闘美少女,元引きこもり,天才プログラマーといった新たなメンバーを得て,新しい検索エンジン「クルーク」を不眠不休で開発するが,悪名高いIT企業の社長がそれに目をつけた... 石田衣良作品かつITベンチャーの話ということで,購入条件は十分満たしていたのだが,これまで買うかどうか迷っていた.というのも, あまりにも帯が軽薄 なのだ(紀伊国屋書店による表紙の写真).これはちょっと受け付けないかもと思い,これまで購入を見合わせていたのだが,出張の際の古本屋巡りでそれなりの価格で見かけたので買ってみた. ...
投稿者 さい
2005年04月11日

『黄金旅風』飯嶋和一

まだ鎖国が始まっていない江戸初期,国際情勢と江戸幕府の方針転換に翻弄されながらも,ジャンク船を使っての中国・東南アジア方面との貿易の拠点として繁栄する長崎に,海外派兵の野心に燃えた大名が奉行として赴任してきた. その圧政から民を救うべく,「不肖の放蕩息子」と「南蛮人切りの悪童」が立ち上がる... 書店で平積みになっている時に,その装丁のあまりの素晴らしさ(というか派手さ?)に目を惹かれ,そのときから気になっていた作品.2005年の本屋大賞にノミネートされたくらいだから(受賞はできなかった),きっと面白いのだろうと松山市立中央図書館で借りてきた. 朱印船貿易だとか奉書船,糸割符制度など,日本史で...
投稿者 さい
2005年04月10日

『豹頭王の試練 グイン・サーガ100巻』栗本薫

別の小説を目当てに書店に行ったところ,既に販売されていたのですかさず購入&読了. 8日発売なので9日に出ていてもおかしくはないんだけど,松山における出版物の時差を考えると来週かなと思っていたのだが. このシリーズについては98巻発売のときの記事である程度書いているので,これ以上付け足すこともないのだろうけど,それでも100巻達成というのはやっぱり前人未到だよなあ. 80巻前後のときには「この調子では200巻使っても完結しそうにないなあ」と思っていたのだが,本巻で○○○と○○○○がついに邂逅したことだし(あんなところで「つづく」というのは極悪すぎるヒキだと思うが),もしかすると150巻くらいで完...
投稿者 さい
2005年04月09日

『月曜日の水玉模様』加納朋子

OLの主人公は通勤電車の中である青年の特徴に気づく.曜日ごとに決まったネクタイをして決まった駅で降りるのだ. しかし,その青年が曜日に関係なく月曜日のネクタイをしたまま,主人公と同じ駅で降りて,主人公の周辺を監視するようになって以来,周囲でビル荒らしのウワサが... 曜日ごとのタイトルが付いた7作の連作短編集.いつものごとく松山市立中央図書館で借りてきた. これまでハズレのなかった加納朋子作品であり,個人的に好きな形式の連作短編集ということで結構期待していたのだが,ちょっと期待はずれだったかな. いや,面白いことは面白いんだけど,ちょっと軽いというかなんというか... 主人公の背景とか中で展開...
投稿者 さい
2005年04月04日

『クビシメロマンチスト』西尾維新

殺人鬼による連続通り魔殺人事件が起きている京都. 主人公は同じ大学のほとんど知らないような級友からの強引な誘いで,まったく面識のない級友の誕生会に出席することになる. 誕生会はそれなりに楽しく終わったのだが,その翌朝,誕生会の主役が謎の記号とともに絞殺死体で発見され... 以前読んだ『クビキリサイクル』の続編.やっぱり松山市立中央図書館で借りてきた. 前作が思ったよりも「ミステリー」だったので,本作もそうなのかと思いながら読んだのだが,結論から言うと,ミステリーでスパッと騙されたいという人は読まないほうがいいだろう.(そういう人は『葉桜の季節に君を想うということ』を読もう). じゃあ,ダメな作...
投稿者 さい
2005年04月02日

『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

ガードマンやパソコン教室の講師をやりつつ,ジムで身体を鍛えて出会い系サイトにも入り浸っている元私立探偵の主人公は自称「何でもやってやろう屋」. ジムの知り合いから悪徳商法と保険金殺人についての調査を依頼されたり,鉄道自殺をしようとした女性を助けたり,飲み友達の娘の行方を捜したりと波乱に富んだ生活をおくっているが... 読者や有識者が選ぶミステリー関係の賞の2003年度をほぼ総ナメにした作品. 以前から読みたかったのだが,巡り合わせが悪くてなかなか借りられなかった.やっぱり松山市立中央図書館所蔵. 私が読んだ感想のほとんど全てが最後の方のドンデン返しに引っかかったとあったので,それなりに用心して...
投稿者 さい
2005年03月31日

『掌の中の小鳥』加納朋子

とあるパーティーで偶然知り合った男と女が偶然入ったバー「エッグ・スタンド」. いつしか常連となった二人は,女性バーテンダーと常連の老紳士を交えて,現在そして過去に直面した謎めいた話を披露する... 『ななつのこ』『魔法飛行』『スペース』の作者である加納朋子の第2作目に当たるのかな? 基本的に一話完結の連作短編集で,洒落た感じのミステリー.人が死んだりしないという点でも以前読んだ加納朋子作品と共通. で,これも非常に面白かった.どうやら加納朋子作品とは相性がいいようだ. いつものように,いくつか気に入った箇所を引用.ちょっとネタバレ気味なところもあるので,これから読もうという方は見ないほうがいい...
投稿者 さい
2005年03月28日

『キング・アーサーと円卓の騎士占い』ウォルター・バーグ

今回,アーサー王伝説に関する本を読むきっかけになったのは「ボールス」なる人物への興味だったのだが,その元になったのがこの本(正確には文庫化される前の本). ある日,恒例の古本屋巡りを刊行している最中のこと. 「円卓の騎士占い」なる面妖なタイトルの本を見つけてしまった. この手のイロモノ的な占いは大好き(ネタ的にであって信じるわけではない)なので,早速手に取ってみたところ,生年月日によって「円卓の騎士」12名が割り当てられるというありがちな占いだったのだが,私の「円卓の騎士」は「ボールス(Bors)」なる人物であった. ボールス? 誰だそれは? 他の円卓の騎士についても,半分くらいしか分からなか...
投稿者 さい
2005年03月27日

『アーサー王 最後の戦い』ローズマリ・サトクリフ

サトクリフのアーサー王伝説三部作のラスト.これも松山市立中央図書館で借りてきた. 聖杯探索の結果,多くの円卓の騎士を失ったアーサー王.そこに禁忌の子であるモルドレッドが現れ,残りの円卓の騎士の結束を乱していく.その結果,アーサーはランスロットと戦うことに... これで三部作も最後なのだが,第一作で張られた伏線がようやく回収されることに加え,これまで仲間だった円卓の騎士同士が戦わなくてはいけないという悲劇の要素もあり,これは面白かった. ボールスも最初から最後まで登場し,それなりに活躍しているのだが,永遠のNo.2的な役柄に終始しているため,それほど印象に残らない. 腕も立つし,頭も良さそうなん...
投稿者 さい
2005年03月26日

『アーサー王と聖杯の物語』ローズマリ・サトクリフ

サトクリフによるアーサー王伝説三部作の二作目.これも松山市立中央図書館で借りてきた. ガラハッドの登場によって150名全員がついに揃った円卓の騎士たちは,聖杯を求めて冒険に出るのだが,聖杯に近づくことのできたのはほんの数名だった... 本作では騎士たちが聖杯(キリストの血を受けた杯)というキリスト教に深く関係した神秘的存在を探す旅に出るわけだが,聖杯を見ることができた騎士の条件がよくわからない. 不義の罪を犯しているランスロットが近づけないというのは分かるし,聖杯探索のために生まれたようなガラハッドと純粋なパーシヴァルが成功するのもいいとしよう. 問題はボールスだ.一作目に比べると活躍している...
投稿者 さい
2005年03月25日

『アーサー王と円卓の騎士』ローズマリ・サトクリフ

とあることから,円卓の騎士の「ボールス」という人物に興味が湧いた. 円卓の騎士はアーサー王伝説に出てくるわけだが,アーサー王伝説といえば,ゲーム好きの人なら「エクスカリバー」とか,最近では「ナイツオブラウンド」(私自身はやってないのだが弟がやっているのを隣で見ていて「いわゆる袋叩き?」と思ってしまった)などで,漫画好きの人なら『ライジング・インパクト』の元ネタとして知っているかもしれないが,実際にオリジナルを読んだことのある人は意外と少ないんじゃないだろうか. 私自身も周辺知識は色々とあるものの,オリジナルは読んだことがなかったので,この機会に読んでみることにした. とはいえ,後述するようにオ...
投稿者 さい
2005年03月21日

『ドゥームズデイ・ブック』コニー・ウィリス

以前読んで面白かった『航路』の作者の作品.松山市立中央図書館で借りてきた. 最初は『犬は勘定に入れません』を読もうかと思っていたのだが,これは本作『ドゥームズデイ・ブック』の続編になるというので,まずはこちらを借りてきた. 過去へのタイムトラベルが可能になった未来,オックスフォードで歴史を研究する女子学生は恩師の反対を押し切って準備不足のままで14世紀へのタイムトラベルを行うが,その直後からオックスフォードで謎の伝染病が発生し,過去へ旅立った女子学生のバックアップができなくなってしまう. 一方,過去へやってきた女子学生も直後に病に倒れ,未来に帰還するための方法を見失ってしまう......
投稿者 さい
2005年03月20日

『美人画報』安野モヨコ

どこかのビジネス系のBlogで「部屋を片付けるきっかけになった」と紹介されていたのに興味を引かれたので,いつものごとく松山市立中央図書館で借りてきた. ちなみに,端末では館内にあることになっているのだが,いくら探してもその場所が見つからず,結局は予約して借りてきた. この本の著者は作品がドラマの原作にもなっているくらいの人気漫画家で,私も名前は知っているし,その絵柄も分かるのだが,作品を読んだのはこれが初めて. 中身は化粧やファッションといった「女の世界」のことが中心で,とりあえず男性である私としてはこれまで知らなかった世界についての情報が得られたわけだが,あんまり興味がないので,既に忘却の彼...
投稿者 さい
2005年03月16日

『反社会学講座』パオロ・マッツアリーノ

最近はウェブで公開されたページがまとめられて書籍化されることが非常に多くなっているが,この本もその一つ. カバーの袖にはこう書かれてある. 反社会学の目的は二つです。 第一に、社会学という学問が暴走している現状を批判すること。 第二に、不当な常識・一方的な道徳・不条理な世間体から人間の尊厳を守ること。 これだけを見ると,非常に真面目な本のように思うかもしれないが,表紙や著者のプロフィールを見れば,全然そうでないということが分かるだろう. 内外のさまざまな統計資料などを使って,一般的に常識と言われていること(少年による凶悪犯罪の増加やパラサイトシングルが社会に及ぼす悪影響など)は実は嘘だというこ...
投稿者 さい
2005年03月15日

『自己コントロールの檻』森真一

バイオリズムによって単純に左右されてしまう自分の感情に不甲斐なさを感じていた頃,どこかのBlogで紹介されていたので読んでみた. 副題に「感情マネジメント社会の現実」とあるので,「これを読めばバイオリズムに左右されずに感情をコントロールできるようになるかも」と思って,図書館検索をかけたところ,松山市立図書館の移動図書館所蔵でヒットしたので借りてきた. しかし,借りてきてみてビックリ,思っていたのとは全然逆の本だった. そもそも著者は社会学者であり,私のように感情マネジメントを求める現代人と現代社会について分析した本だったのだ....
投稿者 さい
2005年03月12日

『復活の地 全3巻』小川一水

地球の消滅によって惑星ごとに科学力や経済力が大きな格差が生じてしまった遥かな未来,ようやく惑星統一を成し遂げ,宇宙に進出しようとしていた惑星の帝都を大震災が襲った. 急遽,摂政となった皇女は,震災直後の緊急対策に活躍した若き官僚を大抜擢し帝都復興を命じる.しかし,政府との対立や軍部の暗躍,さらには守るべき市民からの反感のため,復興事業は遅々として進まず... 『第六大陸』『導きの星』の作者による「国家再生ドラマ」. 宇宙船が出てきたりするのでジャンルとしてはSFなのだろうが,それほどSFっぽくはなく,人間ドラマの要素の方が大きく,後述するように,とても「熱い」小説. しかも,単に熱いだけの小説...
投稿者 さい
2005年03月08日

『羊たちの沈黙』トマス・ハリス

大阪出張シリーズ. とはいうものの,単に移動中および空き時間に読んだというだけなんだが... ジュディ・フォスター&アンソニー・ホプキンス主演で映画化されたために非常に有名. 私もビデオで1回,TV放映時に1回の計2回見ているはずだが,映画では分からなかった細かい点(どうしてクラリスが事件解決に懸命になるかとか)がよく理解できた. 映画だとクラリスとレクター博士が話をしているうちに犯人が明らかになったような印象があったけど(少なくとも私の記憶の中ではそんな感じだ),原作ではかなり趣が違っている. レクター博士の出す手がかりは非常に少なく,発見した証拠などをあちこちの専門家が協力して(非協力的な...
投稿者 さい
2005年03月05日

『煙か土か食い物』舞城王太郎

アメリカのER(救命病棟)で働く外科医の元に,福井県に住む母が連続主婦殴打生き埋め事件の被害者になり意識不明の重体との連絡が入る. 急遽,福井に戻った主人公は,復讐のために,旧友や兄弟の力を借りながら犯人を探すのだが... あらすじとしてはこれで間違っていないのだが,半分くらい(半分以上?)は暴力に満ちた家族の思い出話で,残りが現在の犯人探し. メフィスト賞を受賞しているのだから一応はミステリーなのだろうし,密室や見立て,暗号解読などのミステリー的要素も出てくる.でも,これはミステリーとは言わないだろう?...
投稿者 さい
2005年03月01日

『雨の降る日曜は幸福について考えよう』橘玲

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』で一躍有名になった著者が日経新聞に連載していたコラムをまとめたもの. 内容的には著者のこれまでの本を読んでいれば特に目新しいものはないので,読む必要はないと思われる. 個人的には,この著者のベストは『ゴミ投資家のための人生設計入門』(今だと『世界にひとつしかない「黄金の人生設計」』として文庫化されている)だと思うので,この本を読む時間があればそちらをオススメする....
投稿者 さい
2005年02月27日

『貧乏真髄』川上卓也

以前,ソースの賞味期限について検索したときにヒットしたのが耐乏PressJapan. 最近流行の節約術を紹介しているサイトというのではなく,積極的に「貧乏」という生活スタイルを実践していこうというサイトなのだが,その内容を書籍化したのがこの本. やっぱり松山市立中央図書館で借りてきた.ちょっと前の本にもかかわらず,借りようと思ったら既に借りられていたので,それなりに需要はあるらしい. 話はちょっとズレるが,私は現在あちこちで喧伝されている「スローライフ」なるものが大嫌いだ. といっても,その中身が嫌いなのではなく,そういうものを「流行」として「消費」している状況が嫌いなのだ.本来のスローライフ...
投稿者 さい
2005年02月25日

『嗚呼、香ばしき人々』切込隊長@山本一郎

副題が「ニッポン経営者列伝」ということで,切込隊長による最近の経営者(一線を退いた人もチラホラいる)の人物評. 切込隊長の本なので通常ならば買っているのだが,連載雑誌が『SPA!』だったので,ちょっと違うかなと思って新刊本での購入は保留,ネット古本屋に入荷案内メールを設定しておいたのだが,松山市立中央図書館の返却棚で発見したので借りてきた. 基本的にいつもの毒舌で経営者を斬っている(時には褒め殺している)のだが,私は会社の戦略や組織には興味があっても,経営者個人にはあまり興味がないので,「ふーん」という感じだった. まあ,世間で悪評高い経営者であっても,実はロジックとしては真っ当である場合もあ...
投稿者 さい
2005年02月24日

『ロスト』イアン・フィリップス

電柱や店頭などに迷子のペットを探すポスターが貼られていることがあるが,世界中からそういうのを集めて一冊の本にしたのがこの本. 吉野朔実のブック・エッセイで紹介されていて,「ないだろうな」と思って検索したら見つかった.恐るべし,松山市立図書館. ちなみに所蔵は移動図書館扱いになっているので(実物は書庫にあるようだが),コミセンの図書館で借りるためには予約手続きをしなくてはならない.面倒くさい....
投稿者 さい
2005年02月21日

『バーチャル・ドリーム』渋沢和樹

通産省からコンピュータ・セキュリティに関する外郭団体に出向していた主人公は,日本のゲームソフト会社のロシア支部でクラッカーによるコンピュータ・ウィルス被害に遭遇する. クラッカーによる次なる攻撃を予想した主人公は,この事態を通産省で以前から練られていた計画を実行するチャンス(それは自らが出世するチャンスでもある)と考え,ゲームソフト本社にセキュリティ対策要員として常駐する. 予想どおりに攻撃は起きたものの後手後手に回ってしまう主人公だが,ゲーム開発に夢を持って携わる人々たちと接するうちに,次第に変わっていく... 以前読んだ『経済小説がおもしろい。』で紹介されていた小説.松山市立図書館で借りて...
投稿者 さい
2005年02月20日

『夏のロケット』川端裕人

新聞記者の「ぼく」は過激派が起こしたミサイル爆発事故の現場写真に,高校時代に所属していた天文部ロケット班で作った部品を見つける. 久しぶりに昔の仲間(今では商社マン,ロックスター,研究者として活躍)に連絡を取ってみると,彼らは自分たちの力だけでロケットを打ち上げるプロジェクトを行っていた. 「ぼく」は爆発事故との関係を探るという名目でプロジェクトに参加するのだが... 以前紹介した『The S.O.U.P.』『リスクテイカー』の作者のデビュー作. 専門知識(今回はロケットの構造や開発史について)をキッチリ押さえながらストーリーを展開していくという作風はデビュー作からだったようだ. ストーリーは...
投稿者 さい
2005年02月17日

『スペース』加納朋子

三部作のラストに相当するのだが,直接の関係があるのは前半の「スペース」だけで,シリーズとしてはこれで完結している.これも松山市立中央図書館で借りてきた. 「スペース」は前作同様,主人公「駒子」と瀬尾さんの間のやりとりが中心なのだが,瀬尾さんに渡される手紙が,元々は他の人に向けて書かれたものという点は違っている.シリーズ全体の直接のエンディングがあるので,形としてはこれがシリーズ最終作かな. 後半の「バックス・ペース」は「スペース」のサイド・ストーリーという位置づけなのだろうが,このシリーズの最後にふさわしい話. 巻頭に作者自ら以前のシリーズと続けて読んで欲しいとあるし,今回読むきっかけになった...
投稿者 さい
2005年02月16日

『魔法飛行』加納朋子

三部作の二作目(シリーズ名はなんだ?). 主人公の「駒子」が前作で知り合った瀬尾さんに宛てた手紙で謎を提示し,それが瀬尾さんからの返事で明かされるという前作と同じ形式を踏襲しているのだが,その後に差出人不明の謎の手紙が出てきて,その謎の手紙を含めた全ての謎が最後で明かされるという,前作と同様に凝った形式の作品集.今回は3篇(短編)+1篇(全体としての長編)の計4編が楽しめる. 途中に挟まれる謎の手紙なのだが,この内容がちょっとメタ小説(=小説世界の登場人物が自分たちが小説世界の登場人物だと自覚している小説,という理解でいいのかな?)っぽくなっており,読んでいる方は混乱してしまうのだが,そういう...
投稿者 さい
2005年02月15日

『ななつのこ』加納朋子

加納朋子の作品は以前から読もうと思っていたのだがなかなか読む機会がなく,今まで来ていた.先日,どこかのBlogで三部作がまとめて紹介されていたので,まとめて松山市立中央図書館で借りてきた. 短大生の主人公が,『ななつのこ』という児童文学(なのか?)に感動し,その作家に出したファンレターの中に書いた日常生活で直面した謎が,作家からの返事の中で解明されるという形式で進む話. 全7話の連作短編になっているのだが,その短編の中で「作中作としての『ななつのこ』」が紹介されるので,全体としては7+7の14話の話(謎)が出てくる.しかも,現実世界(小説世界?)の7話もつながって一つの話を形成しているので(連...
投稿者 さい
2005年02月11日

『回転翼の天使』小川一水

フライト・アテンダント(いわゆるスチュワーデス)になるのを夢見ていた主人公が何とか就職できたのは社員2名,所有機は最大搭載人数4名の小型ヘリコプター1機だけの弱小ヘリ会社.もちろん機内での接客業務などあるわけもなく,泥まみれになっての測量などの雑用ばかり.最初は不満だらけの主人公だったが,本業そっちのけで行うレスキュー活動をきっかけにして,自身の仕事に本格的に向き合い,成長していく. 『第六大陸』や『導きの星』の小川一水の作品.系統としては『第六大陸』に近いのだが,SFだった『第六大陸』と違って,現在を舞台に現実の技術(=ヘリなど)を前提に書かれている. ヘリを使ったレスキューを取り巻く現状(...
投稿者 さい
2005年02月07日

『クビキリサイクル』西尾維新

離れ小島にメイドたちと住む財閥令嬢の趣味は各分野の天才女性を招待すること.5人の天才を招待したある日,自分たち以外に人がいない「密室」の島で,招待客の一人が首無し死体となって発見される. 天才技術者の付き添いとして島にやってきた「ぼく」は次なる殺人を防ぐため,容疑者を「密室」に隔離することを提案するが,その「密室」の中でまたもや首無し死体が発見される... 私はメフィスト系(と一括りにできると思っていたのだが,検索してみると「ファウスト系」という区別もあるらしい)は苦手というか,ミステリーはミステリー,ライトノベルはライトノベルで区別して読みたかったので,最初から敬遠していたのだが,貸出枠が1...
投稿者 さい
2005年02月04日

『28歳からのリアル』人生戦略会議

昔,店頭で手にとってみたときは面白くなさそうだったのでそのままスルーしたのだが,ネット上で妙に評判が高いので改めて読むことにした. 読んだ感想だが,やっぱりどうして評価が高いのかが分からない. 28歳の平均的な数字(年収とか貯金額とか結婚式に必要な予算とか)を挙げた上で,現実を容赦なく突きつけている点が評価されている理由らしいが,こういうのって,その気になれば自分でいくらでも調べられると思うんだが. おそらく,そういうことを調べようと思わない人が読めるような体裁にしたのが評価が高い理由なんだろうなあ. 個人的にはこちらよりも『ゴミ投資家のための人生設計入門』の方がオススメ.今なら『世界にひとつ...
投稿者 さい
2005年02月04日

『王国の鍵 全6巻』紫堂恭子

ファンタジー物三連投.今回は漫画. 隣国との戦争の最中,父王と兄が同時に戦死.内乱を防ぐため,世界を支配する力を持つといわれる秘宝「王国の鍵」を探し出した者が王位を継承することが決定される. 他の候補者と同様,第二王子である主人公も兄の戦友と共に「王国の鍵」を探す旅に出るが,その前に伝説の存在である「竜人」と「竜使い」が現れ... 「竜」「宝探し」「王位継承争い」そして「王子さま」とファンタジー物でメジャーな,つまりはベタな材料が揃っているわけだが,ストーリーも「主人公が艱難辛苦を乗り越えて成長する」というある意味では非常にオーソドックスなものだと言える. じゃあ,陳腐で面白くない話なのかとい...
投稿者 さい
2005年02月03日

『月光界・逢魔が時の聖地 全3巻』麻城ゆう

前日に続いてファンタジー物第二弾. 私は世界観が共通したシリーズ物が大好きなのだが(思い起こせばムアコックの『永遠のチャンピオン』シリーズが原因か?),この作者の「月光界シリーズ」もそういう路線で好きだ. この月光界シリーズ,出版社の倒産に巻き込まれるなどのトラブルもあったりしたが,結構な数の本が出ている.そのうち,出版社の倒産の影響で版型を改めて刊行されたものを除けば全部持っているはず. 全シリーズ合わせると20冊以上にもなり,最初の本の刊行は1990年.おおっ,15年も付き合ってたのか! しかし,今回刊行された3巻をもって,直近のシリーズだけでなく,月光界を舞台にしたシリーズも完結だという...
投稿者 さい
2005年02月02日

『禁涙境事件』上遠野浩平

『禁涙境事件』上遠野浩平 上遠野浩平の事件シリーズ第4弾.剣と魔法の世界を舞台にした推理小説であり,帯にも「極上のMISTERY×FANTASY」とある.しかし魔法とミステリーというのはどうも相性が悪い. 「ノックスの十戒」「ヴァン・ダインの二十則」というのがある.これは探偵小説,つまりミステリーでやってはいけないことを記したものなのだが,超自然的・神秘的なものを使うのは止めましょうとある.読者がそれらの理屈を分からない以上,それを使って謎を構築(解明)するのは卑怯だということなんだろう. でも,この事件シリーズはその世界設定からして超自然的・神秘的なものばっかり....
投稿者 さい
2005年01月30日

『リスク』井上尚登

特にチェックしていたわけではないのだが,松山市立中央図書館に行ったときにたまたま目に入ったので借りてきた. この作者の本を読むのは『キャピタルダンス』に続いて2冊目なのだが,本作はリスクに関連した3つの短編が収められた短編集だ. 実直な郵便局長だった亡父がネット証券に手を出していた理由を知るため,自身も株取引に手を出す「お金持ちになる方法」,社宅の廃止をきっかけに一戸建て住宅を購入するべく情報収集に精を出す「住宅病」,ロボット開発・リストラ・ウィルスの三題噺の「十五中年漂村記」,の3本なのだが,「お金持ちになる方法」が一番面白かったかな. 以前読んだ『キャピタルダンス』がビジネス物であることに...
投稿者 さい
2005年01月28日

『航路 上下』コニー・ウィリス

とあるウェブサイトで「10年に1冊の傑作」「はやくも今年のNo.1が決定」などと絶賛されていたので,松山市立中央図書館で借りてきた. ちなみに今回借りてきたのは2002年出版のハードカバーの方だが,2004年12月に文庫化されている. 臨死体験を科学的に究明するために聞き取り調査を行う女性認知心理学者(=ヒロイン)は,新しく病院にやってきた神経内科医から,臨死状態中の脳の状態を調べるプロジェクトへの協力を求められる. 臨死体験者に誘導質問を行って「作話」させる作家に閉口していたヒロインはプロジェクトに協力するが,被験者不足から自らが被験者となることを決意.化学物質によって人為的に引き起こされた...
投稿者 さい
2005年01月23日

『珈琲相場師』デイヴィッド・リス

何かの広告で石田衣良が絶賛していたので松山市立中央図書館で借りてきた. 17世紀のアムステルダム,破産の危機に追い込まれた相場師である主人公は新しい商品である「コーヒー豆」で大儲けしようと企む.妨害するライバル,信用しきれない協力者,さまざまな思惑と疑惑が絡まりながら,計画実行の日がやってくる... 2004年度の『このミス』にもランクインしていたらしく,かなり評価が高い作品. しかし,人によってかなり評価が分かれているというのも事実で,個人的にはイマイチだった.ストーリー自体は面白いのだが,主人公がなあ... 立派なのか,情けないのか,色ボケなのか,人物像がちょっと一致しない.まあ,実際の人...
投稿者 さい
2005年01月21日

『立喰師列伝』押井守

『攻殻機動隊』などで有名なアニメ監督である押井守による小説...なのか? 「立喰師」という,特殊技能(おもに弁舌)によって無銭飲食を行う(架空の)職能集団を設定し,それを通じて戦後の日本の変化を描こうとしている...のか? どうにも評価が難しい作品で,これは失敗かなと思いながら読んでいたのだが,外食産業の発展とともに「立喰師」が「フリーランスとしてのプロフェッショナル」へと変化したそうで,その流れで展開される牛丼とハンバーガーという二大ファストフードに挑戦する話は非常に面白くかった. これは他の話が民俗学的な味付けだったのにたいして,この2つの話だけがファストフード・システムという経営学的な素...
投稿者 さい
2005年01月20日

『「お金」と「市場」のカラクリ』ジョエル・クルツマン

どこかのBlogで評価が高かったので三津浜図書館で借りてきた. 副題が「投資の世界はこう動いている」なのだが,投資テクニックがどうこうというのではなく,その背景にある貨幣や市場,価値と価格の違いなどについて書かれている. 平易な言葉と例え話で話が展開されており,読みやすいとは思う. この本を読みながら思ったのだが,このあたりの内容を本などで既に一通り押さえている私からすると「これは信用創造のことだな」とか「これは貨幣の三機能だな」などと,概念がスッと浮かんでくるし,よく理解できた. しかし,そういう概念を理解していない人にとっても同じように分かりやすいのだろうか? 研究費で購入して,誰か学生に...
投稿者 さい
2005年01月15日

『OZ 全4巻』樹なつみ

『星の王子さま』で砂漠と麦畑が出てきたので,久しぶりに『OZ』を読み直してみた. 砂漠化が進む核戦争後のアメリカ大陸を,兄に会うために科学の都「OZ」を目指して旅をする世間知らずの天才少女「フィリシア」と,それを守る若き傭兵「ムトー」,そして狂った人工知能をもつ機械人間「1019」を中心にし,天才である妹にコンプレックスをもつ姉「ヴィアンカ」やムトーの部下の傭兵「ネイト」,人間に近づくことを求める人造人間「1024」などを巻き込みながら重厚なストーリーが展開していく. そこかしこに見せ場があるのだが,何といっても最終巻の盛り上がりが凄い(その分,本も厚い).特にラストは,もう... ああ,ハリ...
投稿者 さい
2005年01月14日

『星の王子さま』サン・テグジュペリ

昨日からの殺伐モードを少しでも緩和するべく,インベーダーゲームともぐらたたきをミックスしたプログラムを作ってみたり,夜中にコンビニ巡りをしてみたり,『CIPHER』を読み直してみたりしてみた. おかげで,ほぼ通常モードに戻りつつあるのだが,駄目押しということで,以前から積読になっていた『星の王子さま』を読むことに. 名作の誉れの高い作品なので大丈夫だと思うのだが,私は同じく名作の誉れの高い『アルジャーノンに花束を』を読んで,感動の涙を流すどころか怒りに震えるという,ちょっと通常とは違ったメンタリティをしているようなので,少々不安もあった. で,感想なのだが......
投稿者 さい
2005年01月13日

『お厚いのがお好き?』フジテレビ出版

関東ローカルで放送されていたフジテレビの深夜番組をまとめた本.三津浜図書館で借りてきた. タイトルだけではどういう内容か分からないだろうが,この「厚い」というのは本の厚さのことで,なかなか手に取りにくい哲学書や名作文学を紹介している. それだけだと単なるあらすじ本になるのだが,そこはフジテレビ,マキャベリの『君主論』をラーメンに,モンテスキューの『法の精神』を六本木ヒルズに,と独特の見立てで内容を噛み砕いて(曲解して?)紹介してくれている....
投稿者 さい
2005年01月11日

『エンディミオンの覚醒 上・下』ダン・シモンズ

正月休みの課題その3. 前作『エンディミオン』の続きで,本作ですべての謎が解明されるとのこと. 既に正月休みは終わっているが,授業開始までには何とか読み終えようということで,9日と10日はひたすら読んでいた. というのも,やたらめったら分厚いのだ. 前作の『エンディミオン 上・下』と比べて1.5倍近くのページ数になっており,その分厚さはついに比較対象である単三電池を抜かしてしまった....
投稿者 さい
2005年01月11日

『エンディミオン 上・下』ダン・シモンズ

正月休みの課題その2. 『ハイペリオン』二部作の続編で,上下巻で完結という形式にはなっているが,これも真の意味では完結しておらず,次の作品とで二部作を構成している.つまり,四部作の三番目の作品と考えた方がいい. で,やっぱり分厚い. 比較対象の単三電池で比べると分かると思うが,前作よりもちょっと厚くなっている. ということは,これも読むのに時間がかかりそうだなあ......
投稿者 さい
2005年01月11日

『ハイペリオンの没落 上・下』ダン・シモンズ

去年の6月末に記事を書いた『ハイペリオン 上・下』の続編. 前作が風呂敷を広げまくったまま消化不良で終わってしまったので,早く続きを読みたかったのだが,こまめに古本屋をチェックしていても,この上巻だけが手に入らなかったのだ. この正月休み中に全巻読破したかったので,結局,古本屋を諦めて新刊本を購入した.その直後にネットの古本屋から入荷メールが届くという悲劇があったりもしたのだが,そのことはとりあえず置いておこう. この作品は『ハイペリオン』の続編なのだが,読んだのは既に半年以上前なので,細かい内容を忘れてしまっていた.こういうときは前作から読み直すべきなのだろうが... 結構分厚いのだ(単三電...
投稿者 さい
2005年01月08日

『トポスの知』河合隼雄・中村雄二郎

以前読んだ宮沢章夫のエッセイで紹介されていたので松山市立中央図書館で借りてみた. 副題が「箱庭療法の世界」ということで,砂が入った箱の上に色々なものを置くことを通じて状況の改善を図る心理療法である「箱庭療法」の紹介をしている本. 巻頭に実際に作られた箱庭の写真が掲載されてあるので,それを適宜参照しながら本文を読み進めることになる.写真をカラーで掲載するにはこのスタイルしかなかったのだろうけど,ちょっと忙しい. 箱庭療法については映画の一シーンか何かで見たことがあるくらいなのだが,単に精神状況を判断するための手段だと思ってた.しかし,これが実際には治療効果が高いのだそうだ. 「理屈は分からないが...
投稿者 さい
2005年01月04日

『ぼくは勉強ができない』山田詠美

『放課後の音符』と同じく山田詠美の青春物. ユニークな母と祖父に育てられ,早くから自分自身の価値観を確立した主人公の高校生活を描く作品. あちこちで非常に評判が高い作品なのだが,確かに面白かった. 『放課後の音符』と同じく主な登場人物は高校生なのだが,恋愛が中心テーマだった『放課後の音符』と違い,こちらは生き様というか価値観が中心テーマで,恋愛はその一部という感じ. まあ,そんな堅苦しいことを考えなくても,爽やかで痛快な主人公の活躍がリズム感溢れる文章で描かれているのを楽しむだけでも十分だと思う. 以下は気に入った箇所の引用....
投稿者 さい
2004年12月31日

『ジャイアンツ・ハウス』エリザベス・マクラッケン

吉野朔実のブック・エッセイで紹介されていた本. 巨人症の少年と図書館司書の女性のラブ・ロマンス,ということになるのだろうか? 身長差と年齢差,そしてヒロインの性格ゆえに一筋縄ではいかない恋愛模様になっているのだが,ヒロインが恋愛感情を自覚して行動を決意するまでの第一部,タイトルにもなっている「巨人の家」を作って少年の世話を焼きながら少年に近づいていく第二部,そして少年(20歳になっていたが)の死後の第三部,と三部構成になっている. 普通なら,この手の小説には手を伸ばさないのだが,「あまり恋愛小説が好きじゃない人のための恋愛小説」という吉野朔実の紹介文と,その吉野朔実が絶句したヒロインの最後の方...
投稿者 さい
2004年12月26日

『繁栄と衰退と』岡崎久彦

以前紹介した『投資情報のカラクリ』の著者である切込隊長が自分のBlogでお奨め図書として挙げていたので,松山市立中央図書館で検索してみたら当然のごとくヒットした.やっぱり恐るべし,松山市立中央図書館. 副題が「オランダ史に日本が見える」で,刊行が1991年(雑誌連載は1990年?).バブル崩壊したといえど,それなりにニッポン絶好調で諸外国から嫌われていた日本と,軍事を軽視して貿易に専念することでこの世の春を謳歌していた17世紀のオランダを重ねて描いている....
投稿者 さい
2004年12月22日

『十皿の料理』斉須政雄

吉野朔実のブック・エッセイで紹介されていた本.松山市立中央図書館で借りてきた. 著者は「コート・ドール」という有名フランス料理店のシェフで,この人が書いた『調理場という戦場』を以前読んだことがあるのだが,その本はフランスでの修行時代の話が中心だった. 今回の本(刊行はこっちの方が古い)は現在店で出している料理のことが中心で,それに関係して修行時代のことについても触れられているという感じ.併せて読むと面白いと思う. 料理の作り方についても書かれているんだが,食材やスパイスが一般家庭ではなかなか揃わないだろうし,細かい分量が書かれていないから,レシピ本として使えるのは一部の家庭&料理に慣れている人...
投稿者 さい
2004年12月18日

『未来のうてな 全5巻』日渡早紀

『オフィス北極星』&『時間をとめて待っていて』を買うついでに購入.ほとんど興味はなかったんだが,あまりにもお買い得だったものでつい... 世間的に日渡早紀といえば『ぼくの地球を守って』の作者として有名なんだろうけど,このシリーズも同じく前世もの.前世ネタが好きな作者なんだろうか. しかし,最初はそんな素振りを全く見せず(伏線は張られてるけど),普通のラブコメのような話で文庫版1冊分が過ぎている. 2巻目の途中からはそれっぽい話になるのだが,これを連載時にリアルタイムで読んでいた読者はいきなりの話の展開の違いについていけたのだろうか... 全巻を通して読んでみての感想なのだが,話があちこちに拡散...
投稿者 さい
2004年12月17日

『失はれる物語』乙一

乙一の小説は基本的に買うことにしているのだが,これは買っていなかった.というのも,既に持っている本に収められている作品の再録が中心で,書下ろしが1本しかなかったためだ. 作者もあとがきで書いているが,こういう本が成立してしまうということがライトノベルというジャンルが置かれた立場を表しているのだろうが,完全に再録本にしないで1本だけ書下ろしを入れるというのが角川書店の商売上手なところだろう. しかし,そういう戦略にみすみす嵌るのも癪なので,今回も松山市立中央図書館のお世話になった.常に貸出中だったのは人気があるためか,それとも私のように考えて図書館で済ます人が多いためか... で,内容の方だが,...
投稿者 さい
2004年12月14日

『いま、会いにゆきます』市川拓司

2003年3月に刊行された本なのだが,つい最近映画化されたこともあって,いまだにベストセラーのリストに載ってたりする. その関係であちこちで紹介もされているので,妻に先立たれた父子の元に妻が期間限定で戻ってくるという内容はなんとなく知っていると思う. しかし,主人公の男性が身体に問題を抱えており,そのために通常のシングルファーザー父子よりも生活が困難であったり,戻ってきた妻が記憶喪失だという設定があったとは知らなかった. まあ,こういう設定がなければストーリーとして非常に起伏の少ないものになってしまうもんな. 話の方は,冒頭のアーカイブ星がどうこうというメルヘンチックなくだりを読んだときは少々...
投稿者 さい
2004年12月13日

『蜃気楼の旅人 グイン・サーガ98巻』栗本薫

ご存知ではない方のために解説しておくが,巻数は入力間違いではない.本当に98巻だ. 豹頭の戦士を主人公とした全100巻の超長編ファンタジーとしてスタートしたのだが,どう考えてもあと2巻で完結するはずはない(その点は作者も認めてる).ちなみに正編以外に外伝が20巻くらい出ているので,シリーズ合計としては既に100巻を超えている. このシリーズは早川文庫から出版されているのだが,ここには『ペリー・ローダン』という300巻を超える非常識な長編SFシリーズもある.しかし,『ペリー・ローダン』が複数の著者によって書かれているのに対して『グイン・サーガ』は単独の著者による最長シリーズであり,ギネスブックに...
投稿者 さい
2004年12月11日

『荒野の天使ども 全2巻』ひかわきょうこ

『時間をとめて待っていて』の前シリーズで,同時に買うことができなかったのだが,別の古本屋でゲットしてきた. やっぱり西部劇で主人公も一緒なのだが,『時間をとめて待っていて』の9年前の話なので,主人公のダグラスは17歳,ヒロイン(だよな?)のミリアムにいたっては8歳だ. ヒロインが8歳ということでラブロマンス度は低いが(そちらの方は『時間をとめて待っていて』でどうぞ),そちらに力を入れてない分,ストーリーの完成度が非常に高い.そのまま映画にしてもおかしくないくらい. 以前読んだのがやっぱり十数年前なので,細かい内容はすっかり忘れていたのだが,今回読み直してみて,ストーリーテリングの妙に改めて感心...
投稿者 さい
2004年12月10日

『熱帯』佐藤哲也

書評系のウェブで紹介されていたのがきっかけで読んだ本.松山市立中央図書館で借りてきた. そもそもこの作品に興味を持ったのは,熱帯になった東京で悪戦苦闘するシステム開発者のハードな話だと思っていたためなのだが,図書館で現物を手にとってみて驚いた.青い海の写真の上に丸々としたくらげみたいなイラストという非常にファンシーな装丁だったのだ. もしかして思っていたの内容とは違うんだろうかと思いつつ読み始めてみたところ,とある南の島の奇妙な風習とその島の滅亡の話から始まり,その島民の末裔である主人公(なのか?)が勤める謎の国家機関「不明省」のついての説明が続く....
投稿者 さい
2004年12月08日

『時間をとめて待っていて 全3巻』ひかわきょうこ

『オフィス北極星』と同じく,このシリーズも読み返したくて探していたのだが,『オフィス北極星』を見つけた古本屋で発見.しかも格安.ラッキーだった. タイトルだけでは絶対にわからないと思うが,実は西部劇の漫画だったりする.少女漫画で西部劇というのは他にはないのではないかと思って調べてみたら,そんなこともなかった.それでも少年漫画に比べると少ないことに変わりはないか.「拳銃使って撃ち合い」では女性ファンがつきにくいだろうしねえ. ちなみにこの作品では「拳銃使って撃ち合い」はあるが,基本的に人が死なないので,血なまぐさいのがダメな人も安心して読めると思う....
投稿者 さい
2004年12月07日

『オフィス北極星 全10巻』真刈信二・中山昌亮

学生・院生時代に貸本屋で借りて読んでいたのだが,最近になって急に再読したくなったので,古本屋を探し回ってゲットしてきた. ニューヨークでリスク・コンサルタント(企業や個人が訴訟を起こされないようにアドバイスしたり,起こされた場合には被害を最小限に(時にはゼロに)するために働くコンサルタント)を開業した日本人ゴーが,個性豊かな依頼人と彼らが巻き込まれたトラブルに立ち向かう物語. 訴訟社会のアメリカが舞台ということで,法廷シーンや法廷戦術がたくさん出てくるのだが,この物語の本質はそこではないと思う. 経済的あるいは法廷戦術的に不利だとしても,それぞれの信念や価値観を曲げない登場人物たちの生き様こそ...
投稿者 さい
2004年12月06日

『人間の土地』サン=テグジュペリ

私は「ご趣味は?」と聞かれたら「読書です」と答えても恥ずかしくない程度の冊数は読んでいるつもりだが,いわゆる「読書人」とは程遠い存在であることは自覚している. というのも,私は自分の楽しみのためだけに本を読んできたため(もちろん仕事関連は別),読んだ本のジャンルがかなり偏っているのだ. 最近はその傾向もすこしは是正されてきたような気もするが,世間で話題になった本であっても,私自身が面白そうだと感じない限り自発的に手に取ることは今でもない. 過去に話題になった本,つまり古典的名作についてはその傾向がさらに強くなるため,これまで読んだ本(作品)の中で,文学全集に載っているような文学作品が占める割合...
投稿者 さい
2004年12月04日

『ブラック・ティー』山本文緒

小さな「罪」をテーマにした短編集.裏表紙にある紹介文には「胸に手をあててみれば思いあたる軽犯罪」とあるんだけど,それは軽犯罪どころの話じゃないだろうというのも混じっている.学生さんに借りた本. それほど分量があるわけではないのだが,諸般の事情から最初の4編をまず読んで,次の日に残りの6編を読んだ. まずは前半4編.もちろんテーマは「小さな罪」なのだが,どことなくコミカルな感じも漂っていたりして,読後感も爽やか. 山本文緒の短編集は以前も読んだことがあり,「いい話」系と「ブラック」系の両方を書けることは知っていたのだが,その分類でいくと4編連続で「いい話」系....
投稿者 さい
2004年11月30日

『負け犬エンジニアのつぶやき』扇田夏実

女SE、役職ナシ、若さナシを負け犬エンジニアといいます。 タイトルからして『負け犬の遠吠え』にあやかった本という扱いをされてしまうんだろうけど,私は『負け犬の遠吠え』を読んだことがないので中身がどれくらい類似しているのかは分からない.松山市立中央図書館で借りてきた. 本の内容だが,専門教育を受けたわけではないが新卒でSEとして就職,その後12年間働き続けた女性のエッセイというか体験談. TVを見ながら1時間程度で読めてしまうくらい軽い本なのだが,この軽い口調で語られる体験談の裏側にはかなり厳しいものがあるように思う. この著者は12年間のエンジニア生活で燃え尽きた(というか燃料供給を絶たれてし...
投稿者 さい
2004年11月29日

『下妻物語』嶽本野ばら

内田恭子主演で映画化されたのでご存知の方も多いだろうから内容は省略. しかし,CMなどで断片的にしか知っていない人は,主人公である桃子(内田恭子の役)の性格にビックリすることだろう.少なくとも私はビックリした.「人は見かけによらぬもの」とは言うが,はあ... ストーリーとしては非常に古典的で,見事なまでに予想通りの展開ばかりなのだが,これがめちゃくちゃ面白かった.学生さんに貸してもらったのだが,自分でも買ってしまいそうなくらい. 作者の嶽本野ばらという人は「耽美系作家」というイメージしかなかったので,貸してもらわない限り手に取ることはなかっただろうけど,もう1冊くらい読んでみようかなあ. (1...
投稿者 さい
2004年11月28日

『放課後の音符』山田詠美

『A2Z』に続く山田詠美の本,2冊目. 不倫小説(ってジャンルがあるのか?)だった『A2Z』と違い,こちらは青春小説で,高校生の「私」とその周囲の女子高生の恋愛を描いた連作短編集. で,読んでいったわけだが...うーん,なんと言えばいいんだろうか... 「甘い」のとはちょっと違うな,「幼い」というのも違ってるし,「キザ」と言いたいような気もするが,それならむしろ「耽美」という方が近いような気もするし,うーん... あえて表現するなら「三十路男が読むと『うきゃー!』となってしまう」感とでも言えばいいのだろうか... まあ,面白さとは別の次元で,どうも違和感があるわけだ....
投稿者 さい
2004年11月27日

『犬は電信柱が好き』吉野朔実

吉野朔実によるブック・エッセイの第4弾. 第1-3弾と同様に松山市立中央図書館で借りてきて,第1-3弾と同様に薄かったので,第1-3弾と同様に1時間もしないうちに読み終えた.でも満足. 2冊ほど気になる本があった.それほどメジャーっぽくないので全然期待せずに松山市立図書館で検索したら,両方ともあった.恐るべし,松山市立図書館. 『シービスケット』も面白そうだが,こちらは映画化されてるからそっちで観よう....
投稿者 さい
2004年11月25日

『成功する読書日記』鹿島茂

このBlogに本の感想を書くようになってから,ネット上で公開されている書評をよく見るようになった. で,そこで評価が高いものや面白そうな本を買ったり図書館で借りたりして読んでいるわけだが,今回の本もそういう本の一つ. 『勝つための論文の書き方』『悪女入門』の著者ということもあって,松山市立中央図書館で借りてきた. 内容の大部分はどこかの雑誌に連載されていた読書日記.これは読書傾向が私とかなり違うため,あまり面白くなかった. ただし,そこへの導入として読書日記を書く上での注意みたいなのが書かれており,こちらはかなり参考になったのだが,主張自体は非常にシンプル. とにかく「質より量」 量を確保する...
投稿者 さい
2004年11月23日

『イン・ザ・プール』奥田英朗

以前書いた『空中ブランコ』の前作にあたる作品(この本も学生さんに借りた).注射好きで子供のような精神科医の伊良部一郎と彼の病院を訪れる患者たちを描いた連作短編集というスタイルは変わっていない(というか,こっちの方が先か). 伊良部医師が患者をそそのかしてハチャメチャになった結果,ストレスが解消されて病気が治るという基本構造も変わっていないので,ある意味マンネリなのだが,『空中ブランコ』の方が人情話的な要素が強いかな. 個人的にはケータイ依存症の高校生の話(「フレンズ」)が面白かった.そういえば,この話だけ構造が他の話とちょっと違ってるな....
投稿者 さい
2004年11月16日

『投資情報のカラクリ』切込隊長@山本一郎

これまでの記事の中でも株主優待の話題が時々出ているが,私も社会人の端くれとして株式投資に少々手を染めている. 株式投資にはさまざまなスタイルがあるのだが,私は色々と調べる&考えるのが面倒くさいし,銀行利率よりも高い程度のリターンを得られればいいという考え方をしている. なので,配当&株主優待重視で銘柄をスクリーニングし,できるかぎり株価が変動しないか,割安だと思われるものを購入,それを売らないというスタイルでやっている.それっぽい言葉で表現すると,インカムゲイン目的でファンダメンタル重視,バリュー株中心のバイ&ホールド戦略をとっているわけだ. 本業が本業なので,きっと大儲けでウハウハなんだろう...
投稿者 さい
2004年11月11日

『三千世界の鴉を殺し 9巻&10巻』津守時生

祝・新刊同時2冊刊行記念ということで,今回は『三千世界の鴉を殺し』を. 現在の私の成立に大きな影響を与えた本というのがとりあえず3冊あるのだが,そのうちの一つが『喪神の碑』というシリーズ小説(だから正確には2冊+全5冊のシリーズ=7冊か). ジャンルとしてはスペースオペラ,つまり娯楽色の強いSFで,「その手の小説がどうして大きな影響を与えるんだ?」という疑問も湧くだろうし,内容を知っている人からすれば「どんな影響を受けたんだ(笑)?」となるだろうけど,実際に影響を受けているんだから仕方がない. で,この『三千世界の鴉を殺し』は『喪神の碑』と同じ世界を舞台にした話で,内容的にもかなり重なっている...
投稿者 さい
2004年11月10日

『Good Luck』アレックス・ロビラ他

カバーがかかっていない状態で借りたので最初は気がつかなかったのだが,緑色のきれいな装丁の本で,書店のベストセラーコーナーに大量に平積みにされていたので,見かけた人も多いはず. 本としては自己啓発本に属するのだろうか.寓話を通じて人生に必要なことを教えるというスタイル.以前流行った『チーズはどこへ消えた?』系の本だと思う. この本で言われていることは至極真っ当なこと(例:幸運をつかむためには下ごしらえが必要)ばかりなので,特に新鮮味はないかもしれない. 本自体も薄いし,字も大きいので,字数もかなり少ない.まあ,値段も1000円と安めではあるが,それを高いと思うか安いと思うかは人それぞれだろう.借...
投稿者 さい
2004年11月08日

『女ひとり寿司』湯山玲子

以前,雑誌で紹介されていたのを見て以来,読みたいと思っていた本なのだが,図書館での巡り合わせが悪く,なかなか借りることができなかった.先日,ようやく戻ってきたところをゲット. 西原理恵子のエッセイだったと思うのだが,「昼ごはん仲間から外されるくらいなら死んだ方がいい」という女子学生の話が読んだことがある. それを読んだときは「なるほど,女の子は大変だな」と思ったものだが,その後,大人になっても女性が一人で外食をするのは結構キビシイということを知った. 時代は流れ,現在では女性が「ひとりごはん」できる店が各種メディアで紹介されるようになったことから判断するに,女性が一人で外食をすることは市民権を...
投稿者 さい
2004年11月06日

『万国「家計簿」博覧会』根岸康雄

松山市立中央図書館で借りた本. エジプト,アルゼンチン,ロシアなど世界13カ国のミドルクラスの家庭(実際にはミドルクラスでもちょっと上のほうが多い)を取材し,その収入や支出から各国のライフスタイルの違いを描いた本. その国におけるミドルクラスの家庭に取材することになっているのだが,その生活水準は国によってかなり違っている.特に貯蓄額および貯蓄についての考え方は国によってかなり違っており,日本の常識とはかなり乖離がみられる.その背景には社会保障というか,何か問題が発生したときの対処の違いがあるんだろう. 各国の事情が色々と分かって面白いのだが,もう少し見せ方を工夫すればもっと楽しめたと思う. 元...
投稿者 さい
2004年11月05日

『妻を帽子とまちがえた男』オリバー・サックス

これも吉野朔実のブック・エッセイで取り上げられてた本. 著者は「神経科」という領域があるのかどうかわからないが,神経学が専門のお医者さん.映画『レナードの朝』の原作者でもあり,映画ではロビン・ウィリアムスが演じていたらしい(観てないので). 臨床医という職業柄,先天的または後天的な神経損傷によって正常ではない行動・反応をとる人々に多数接しており,それらの経験や考察をまとめたのがこの本...と単純には言い切れない本だよなあ... 症状とそれにまつわる患者のエピソードが中心なのだが,それについての医学的説明もかなりあるし,その一方で著者の考え方や患者に対する深い共感の念,さらには哲学のようなものも...
投稿者 さい
2004年11月03日

『牛への道』宮沢章夫

以前読んだ吉野朔実のブック・エッセイで取り上げられていた本なのだが,よく見に行くホームページの作者も褒めていたなあと思い,松山市立中央図書館で借りてきた. 見開き1ページほどの短いエッセイの集合体で,どれも日常生活をほんの少しズレた角度から見て,それについて思考を展開していくことで独特の世界を作り出している. しかし,これを面白いと感じるかどうかは,かなり人によって違うと思う. ネット上では爆笑すること必至みたいな書かれ方をしているのだが,個人的には爆笑とまでは行かなかった. でも,思わず笑ってしまったエッセイもあるし,笑うまで行かなくても面白かったものも多い.また,そういうエッセイの間に哲学...
投稿者 さい
2004年11月01日

『見知らぬ遊戯 鑑定医シャルル』藤本ひとみ

学生さんに貸してもらった本なのだが,私にとって藤本ひとみと言えば何といっても『ハプスブルクの宝剣』(家族と民族を捨ててハプスブルク王家に仕えたユダヤ人の愛と友情と絶望と再生の物語)! それ以外にも『ミーハー英雄伝』(世界史上の偉人についての歴史エッセイ?)であったり,『黄金拍車』(ジャンヌ・ダルクの時代にタイムスリップした高校生の話:別名で執筆)であったりで,私の中では藤本ひとみ=歴史小説家になっている(そういえば,買ったけど未読のやつもあるな). なので,この作品も18世紀くらいを舞台にした歴史物だと思って読み始めたのだが,数ページ読んだところで「YMCAを合唱」とあった. YMCAを合唱?...
投稿者 さい
2004年10月30日

『リスクテイカー』川端裕人

ビジネススクールでは劣等生だった元銀行員の日本人と元(現役?)ロックンローラーのユダヤ人が,物理学専攻の大学院生(中国系)の力を借りて,ヘッジファンドを設立.最新物理学の知識に基づく予測モデルを用いて,他のファンドを凌駕するパフォーマンスを叩き出すが... 以前紹介した『The S.O.U.P』の著者による「金融青春小説」.同じ金融青春小説としては石田衣良の『波のうえの魔術師』が挙げられるだろうが,それに比べると,本作の方がかなり読みにくいと思う. それは,シンプルな株式取引と複雑なデリバティブという題材(舞台)の違いにも由来するのだろうが,本作は専門用語をきっちりと説明した上で,それをそのま...
投稿者 さい
2004年10月28日

『導きの星 全4巻』小川一水

宇宙に進出し,文明レベルの低い異星人と遭遇した地球人は,彼らの文明の発展を観察・支援する事業を開始する.その任務のため,銀河の最果てにやってきた主人公と三体のアンドロイドは,失敗を重ねながらも異星人を支援し,文明を発展させていくが... ということで,シリーズの紹介によると「ハートフル文明育成SF」だそうだ. 「ハートフル」と銘打つにしては少々血腥い面もあるが,JAROに投書するほど事実と違ってはいないかな. 以前紹介した『第六大陸』の著者の作品で,やっぱりベースはSF. だけど,ほとんど獣の状態から最終的には宇宙航行が可能なレベルまで文明を発展させるというストーリーの関係上,鋼鉄の鍛え方とか...
投稿者 さい
2004年10月27日

『顔』横山秀夫

仲間由紀恵の主演でドラマ化されていたが,どういう話かは全く知らなかった. 似顔絵婦警だった主人公が,とある出来事のためにその仕事から外され,警察内の色々な部署を転々とする話...という紹介でもあながち間違っていないよな.どういう仕事になっても似顔絵作成という専門能力を使って活躍しているけど. この作者の作品を読んだのはこれが初めてなのだが,警察小説には定評がある作家らしい. どうやら以前勤めていた地方紙で警察廻りをしていたそうで,一般の人が知らないような警察の内情にも詳しいため,そのあたりをリアルに描けるからだろう. とすると,この作品の一つのテーマの一つになっている警察における婦警の扱いもリ...
投稿者 さい
2004年10月25日

『1ポンドの悲しみ』石田衣良

大阪に出張に行った際に買ってきた.もちろん古本屋で. で,我慢しきれず,帰りの移動時間中に全部読んでしまった. 石田衣良には20代の恋愛をテーマにした短編小説集である『スローグッドバイ』という,甘くて優しくて,石田衣良節 炸裂!という感じの作品がある. 今回の『1ポンドの悲しみ』は,そちらのあとがきでも予告されていた30代の恋愛をテーマにした短編集(あとがきによると「30代前半の恋愛」になってしまったそうだ).ただ,実際に読んでみると,年代の違いについてはあまり意識しなかったんだが... そういうことで,直接の続編ともいえるこの作品,相変わらず石田衣良節が炸裂しまくっている. 一番最初に収めら...
投稿者 さい
2004年10月24日

『群青の夜の羽毛布』山本文緒

丘の上の一軒家に住む対人恐怖症ぎみの長女,奔放だけど門限は守る次女,家庭でも厳格な教師である母と,長女と交際することになった就職間際の男性をめぐる物語. ちょっと変わった恋愛物と思って読んだのだが,かなりスリラーな作品.何かがひたひたと近づいてくるような緊迫感が常に付きまとっている.なにせ冒頭からこんな感じ. 復讐ですか。そうですか。 おでんに農薬でも入れましょうか。 はんぺんなんか食べたら、たっぷり汁を吸っているからコロッと死ねるでしょうね。タコなら助かるかもしれませんよ、先生。 こ,怖ぇぇ......
投稿者 さい
2004年10月23日

『機会不平等』斎藤貴男

松山市立中央図書館で借りてきた本. 教育,労働,福祉などの領域で,現在起こっている(起こりつつある)現象について丹念に調べて世に問うた作品.こういうのをルポルタージュというのだろう. 経済学者の立場や生い立ちについて書かれている第五章「不平等を正当化する人々」が特に面白かった. 感想だが,よく調べてあるし,著者の主張ももっともだとは思う. 現状の制度はよくない.(うんうん) でも現在進みつつある改革の方向も間違っている.(そうかもなあ) 現在の指導者に足りないのは,独創性や創造力ではなく,常識的な想像力と最低限の優しさだ.(そのとおり!) 以上(え,それで終わり?) ということで,「結局,制度...
投稿者 さい
2004年10月22日

『起業家に会いにゆく』斎藤貴男

松山市中央図書館で借りてきた本なのだが,どういう理由で借りたのかイマイチ覚えてない. 起業家の生い立ちや本人および関係者へのインタビューで成功への軌跡とその背景を描くという,ありがちといえばありがちな本.うーん,やっぱり借りた理由が分からん... ダン(靴下屋という方が有名か)の越智社長はやっぱり愛媛県出身だった(でも,なぜか四国四県の中で愛媛県にだけは店舗がない),とか,水引を作った正月飾り(とその派生製品)から出発して年商14億円以上になった企業(飾一(かざりいち))がある,とか,それなりに収穫はあった....
投稿者 さい
2004年10月21日

『A2Z』山田詠美

学生さんが貸してくれたのだが,山田詠美を読むのはこれが初めて. 内容だが,それぞれ若い人と不倫をしている夫婦が元の鞘に納まるという話,というとあまりにも端折り過ぎか(当たり前だ). まあ,不倫といっても完全に秘密にするのではなく,夫側は妻(=主人公)に対してそのことを告白しているし,妻側も周囲には知られているという,少々奇妙な形なので,ドロドロしてて修羅場チックな不倫物とは違っているのだが,構造としては不倫(しかもW不倫)物だよなあ. ところで,どうして大人の恋愛をテーマにした小説はいつも不倫物になるんだろう? 年齢的に結婚している可能性が高いのは確かだし,色々と制約がある分,ドラマティックに...
投稿者 さい
2004年10月20日

『ジョゼと虎と魚たち』田辺聖子

以前,田辺聖子の作品として『鏡をみてはいけません』を読んで,他の作品もこんな感じだったら男性ファンはつかないのではないかと思ったのだが,まだ一作しか読んでいないということで判断は保留していた. あれからしばらく経つが,ようやく『ジョゼと虎と魚たち』を読むことができた.以前読んだ作品(長編)と違って,この本は映画化された表題作を含めて全部で8篇がおさめられた短編集. 色々な作品があるのだが,これを読んで分かった.やっぱり田辺聖子を好きな男性ファンは数少ないにちがいない,と....
投稿者 さい
2004年10月18日

『虚無への供物』中井英夫

日本推理小説の歴史に残る作品の一つらしく,いつかは読んでみたいと思っていたところ,古本屋で見かけたのですかさずゲット. しかし文庫で600ページ以上という大作のため,なかなか手を出せずにいた.今回の大阪出張のお供として,移動中&寝る前の時間を使ってようやく読み終えた. 感想なのだが,「グルグルしててギラギラしている小説」というのが率直なところか, 四つ(なのか?)の密室殺人とそれに付随する色々な出来事を巡って,探偵役の登場人物がそれぞれの推理を,いろいろな見立てを使って行うのだが,新たな事件が起こる度に以前の推理が覆されたり,形を変えて復活したりするので,話がグルグルしているのだ. で,ギラギ...
投稿者 さい
2004年10月13日

『悪女入門』鹿島茂

「丸坊主にはなったので,次に目指すは悪女だなっ!」というわけで読んだ...のではもちろんなく,その前に読んだ『勝つための論文の書き方』という新書が面白かったので,その延長で読んでみた. この本がどういう本なのかはあとがきを読んでみるとよく分かる.男の子と仲が良くても恋愛対象としては見てもらえない「ゴレンジャー・ガール」が,先天的に男を誘惑する技術を身につけている女の子(=「ウッフン」)や,誘惑の達人である「スーパー・ウッフン」と対抗できるように,誘惑術を学習するためのテキストだというのだ. そのための題材としてフランス文学のなかでも「ファム・ファタル」(運命の女,あるいは,命取りになる女)が登...
投稿者 さい
2004年10月10日

『瞳の中の大河』沢村凛

「内戦を終了させる」という理想と正義に燃える主人公は,初軍務で野賊に捕われるという失態を犯すが,徐々にその頭角を現していき,ついには平民として最高の階級である「大佐」にまで登りつめる. しかし,自らこそが正義と信じる野賊と,内戦を終結させようとせず自らの利権を貪る貴族との間で... 以前紹介した『戒』について調べていたときに知った本(同じファンタジーノベル大賞出身).この作品も評価が高かったので,松山市立中央図書館で借りてきた. 『戒』がかなり好みだったので,かなり期待して読んだのだが...期待が高すぎたのかなあ....
投稿者 さい
2004年10月09日

『夢にも思わない』宮部みゆき

夜の庭園で同級生の従姉が殺された.原因は売春組織をめぐるトラブル.そのせいで周囲から白い目で見られるようになった同級生を助けるため,普通のサッカー少年である「僕」とクールな将棋少年(?)である「島崎」は事件について調べ始める... 前作の『今夜は眠れない』と同じ中学生コンビが活躍する作品なのだが,前作のような話を期待していると,最後の方で足払いを喰らうかもしれない. 前作を読んだのはかなり前のことなので,話の細部までは覚えていないのだが,前作は同じ作者の『ステップファザー・ステップ』みたいな感じで,ほんわかした雰囲気があったような気がする. この作品も基本は同じなのだが......
投稿者 さい
2004年10月08日

『弟の家には本棚がない』吉野朔実

吉野朔実による本の紹介本その3. 『呪のデュマ倶楽部』が面白そうなのだが,これって『ナインスゲート』の原作本だったのか.映画の方はあまり良い評判を聞かなかったんだが... しかし,三冊目ともなると紹介する本もネタ切れなのか,あまり有名ではない本が多いような気がする.それとも,私の偏った読書傾向と違ってるからそう思うだけで,世間的にはメジャーな本なのだろうか. ということで,吉野朔実による本の紹介本 三連投だったが,どれも100ページ弱,しかも基本的にはマンガなので(ただし字は多い),気軽に読める. 実際,ラスティネイルを飲みつつ(最近,毎日飲んでるなあ.マズイ傾向かも...),テレビをながら見...
投稿者 さい
2004年10月08日

『お母さんは「赤毛のアン」が大好き』吉野朔実

吉野朔実による本の紹介本その2. 第二弾ということで,そろそろレギュラーとなる登場人物が固定してきた.メジャーどころでは精神科医の春日武彦や詩人の穂村弘など. それほど興味のある本は紹介されていたなかったのだが,ラストの「"読書"の定義」によると私のやっている行為は読書ではないらしい.うーむ......
投稿者 さい
2004年10月08日

『お父さんは時代小説が大好き』吉野朔実

少女漫画家(エッセイや絵本も書いているらしいが)の吉野朔実がいろんな本を紹介している本の第一弾. といっても,ブックガイドや書評というよりは,その本にまつわるエピソードを書いたエッセイみたいなもの.松山市立中央図書館で借りてきた. とりあえず『羊たちの沈黙』と『飛ぶ教室』と『妻を帽子とまちがえた男』は読むことにしよう. あと,ラストの「父の野望」には大爆笑してしまった. ...
投稿者 さい
2004年10月05日

『ナインティーズ』橋本治

姫野カオルコのエッセイか何かでべた褒めされていた本.これを読まない人は人生を何千万円分(覚えられないくらい細かい数字を挙げていた)損している,とまで書かれると読まないわけにはいかないだろう. ちなみに,橋本治については『「わからない」という方法』という新書を読んだことがあるだけ.あれ,あの本は最後まで読み通したっけ? で,内容についてなのだが,幅が広いので一言ではいえない.正確には,とりあげる題材がどんどん変わっていくので,どう説明していいのか分からない. Part2の最初の方は現代日本の風潮に対する批判ということでいいと思うんだが,途中から当時の湾岸戦争をめぐる話になり,それが宗教の話になり...
投稿者 さい
2004年10月01日

『第六大陸 全2巻』小川一水

 賢明で実際的な考えを持つ一部の人々は、気づいていた。この問題は、決断してから動くような性質のものではないのだ。議論だけをすることは、船もないのに隣の島に渡るかどうかを相談するようなものだ。まず船さえあれば、水が低きに流れるように、行きたい人は行くだろう。金がかかるというなら金を儲けられる船を造ればいいだろう。十分な船が揃えば、金にならない航海も可能になる。  宇宙へ人を送って儲けることさえできれば。 と,いきなり引用から始めたが,今回の記事は民間企業による有人宇宙飛行成功記念ということで,民間企業による月面開発計画を描いた『第六大陸』の紹介. 民間企業による宇宙飛行成功といっても高度100キ...
投稿者 さい
2004年09月29日

『空中ブランコ』奥田英朗

第131回直木賞受賞作.注射好きで子供のような精神科医の伊良部一郎と彼の病院を訪れる患者たちを描いた連作短編集. 前作の『イン・ザ・プール』を読んでいないので少々心配だったのだが,そんなこと関係なく楽しめた. 患者がトリックスターである伊良部に振り回されるうちに自分や周囲を見つめなおし,自分自身で回復のきっかけを見つけるというパターンはどれも共通. なので,「お約束」な話と言ってしまえばそのとおりなのだが,そのぶん気楽に読めるし,そこに至るまでのドタバタは面白い.また,どの話もラストが爽やかなので読後感も良い. ネット上の書評を見る限りでは,前作よりも毒が薄れているらしいが,そのぶん一般受けす...
投稿者 さい
2004年09月29日

『ドーナッツをくれる郵便局と消えゆくダイナー』ビル・ブライソン

書評系のサイトを色々見ていたところ,誰が読んでも楽しめる本として紹介されていたのがこの本.本当だろうかと思って市立図書館で借りてきた. 誰でも楽しめるかどうかについては疑問も残るが,個人的には面白かったし,ネットでもネガティブな書き込みは全く見られないというのも事実. 内容は,18年ぶりにイギリスからアメリカに戻ってきた著者(だからアメリカ人)のカルチャーギャップというか,昔のアメリカ人&現在のイギリス人的視点で見たアメリカのヘンなところ・良いところを毒舌交じりでスケッチしていくという感じ. これだけだと少し硬い感じがするかもしれない.実際,統計の数字が出てきたり,環境問題やドラッグ問題に対す...
投稿者 さい
2004年09月22日

『海馬 脳は疲れない』池谷裕二+糸井重里

脳の若手研究者(30代)と糸井重里の対談集. この間,松山市立中央図書館に行ったとき,ついでに借りた本だったのだが,これが大当たり. 初版が2002年で,そのときにちょっと話題になっていたのだが,これまで読んだことがなかった.で,今回読みながら,どうしてその当時に読まなかったのかと後悔したくらい面白かった. 手元に置いておきたいので購入決定.結構評判になったし,少し古めの本だから,古本屋をチェックしておけばいつかは見つかるだろう. 以下は引用....
投稿者 さい
2004年09月19日

『骨音』石田衣良

池袋ウエストゲートパーク(IWGP)のシリーズ3冊目(外伝を入れると4冊目). ハードカバーでは4冊目が既に出ているが,このシリーズは文庫で読むことにしているので,自分的には最新刊. 雑誌に発表された短編3つと書き下ろしの中編1つの計4つの話が収められている. どれも面白いんだけど,短編の方が面白いかな.1冊目もそうだったけど,中編になるとスケールが中途半端に大きくなってしまって,IWGP特有の良さが失われてしまうような感じがする. ということで,いつものように気に入った箇所の引用を. ...
投稿者 さい
2004年09月18日

『ソウルドロップの幽体研究』上遠野浩平

「生命と同等の価値のある物を盗む」という予告状を出し,傍目にはまったく価値のない物を盗み,同時にその人の命を奪う,怪盗"ペイパーカット"と,彼(?)を追う奇妙な保険調査員 伊佐と千条のお話. 相変わらずの上遠野節が炸裂していて,これまでの作者の作品を読んでいれば非常に楽しめること間違いなし. しかし,これが初めての上遠野作品という人には「はぁっ?!」となってしまうかもしれない. 話としては単体で完結しているので,他の作品を読んでなくても大丈夫だとは思う. でも,これまでの作品を知らないと,ペイパーカットの正体とか,伊佐と千条が調査員になるきっかけの事件に登場する女性の正体とかが,思わせぶりなま...
投稿者 さい
2004年09月08日

『The S.O.U.P』川端裕人

究極のスープ「The S.O.U.P」を求めて,世界中を駆け回る男たちの物語...というのでは全然なくて,かつて「The S.O.U.P」というゲームを作ったプログラマーで現在はセキュリティの専門家が,ネットを利用した陰謀に立ち向かう話. いくつか納得できない点もあるんだけど(テロリストの目的の意義とか),基本的に面白かった. ただ,作品の内容上,ネット関連の専門用語がたくさん出てくる.話の内容についていけるだけの説明はあるけど,この分野のことが全然わからない人にはとっつきにくいと思う.同じことがファンタジー関連のことについても言える....
投稿者 さい
2004年09月02日

『青が散る』宮本輝

『錦繡』に続く宮本輝の第二弾.初期の傑作らしい. 新設大学のテニス部員である主人公とその仲間の青春を描いた小説. と書いてしまうと非常に陳腐だが,まさに「ザ・青春群像」という感じで,非常に面白かった. 私の出身大学のある教員が学生への推薦本として挙げていたのだが,その理由が分かるような気がする. テニスのシーンが何度も出てくるのだが,テニスをほとんどしたことのない私でも面白かったくらいなので,ある程度やった人だったらもっと楽しめるのだろうか. あんまり体を動かすことには興味が無いのだが,この作品を読んで,ちょっとテニスをやってみたくなった. まあ,実際にやってみると間違いなくシン...
投稿者 さい
2004年08月26日

『経済小説がおもしろい。』斎藤貴男

副題が「日本の未来を解く30冊」で,本題&副題のとおり,経済小説30冊(上下巻のやつもあるので実際には30冊以上)の紹介をしている本.松山市立中央図書館で借りてきた. よくよく考えてみると,経済小説(清水一行とか城山三郎とかが有名)というのは読んだことがない. 井上尚登の『キャピタルダンス』は面白かったけど,あれは経済小説なのかというと疑問符がつくし,石田衣良の『波のうえの魔術師』も同じだよなあ... 経済小説というと,スーツ姿のサラリーマンが密室でお互いの腹の内を探りあいながら会話したり,猛暑で汗だくになりながら外回りをしたり,嫌味な同期が出世するのを悔しがったり...というイメージがある....
投稿者 さい
2004年08月24日

『LAST』石田衣良

石田衣良の直木賞受賞の後に発表された第1作らしい.実際には受賞前から連載されていた短編を集めた短編集だから,このこと自体には意味はないと思うのだが,セールス的には効いてくるんだろう. 石田衣良の作品全般についての評価としては,「スタイリッシュ」「スピード感がある」「読後が爽やか」「優しい」というのが一般的だと思う.しかし,この作品はお先真っ暗な状況にある男たちを主人公にした短編集で,帯にはこう書いてある. 崖っぷちの人間をダーク&ビターに書きました。ぼくの別な顔に、震えてください。 はてさて,どのくらいダーク&ビターなのだろうか......
投稿者 さい
2004年08月19日

『錦繡』宮本輝

前回の記事には書き忘れたが,田辺聖子の『鏡をみてはいけません』は舞台が関西で主人公も生粋の関西人のため,関西弁がバリバリでてくる.一人称の小説なので,地の文でも関西弁が多用されている.なので,関西弁嫌いな人にはつらいかもしれない. で,関西弁つながりで,今回は宮本輝の『錦繡』. 私の読書傾向は非常に偏っており,田辺聖子と同様,宮本輝の小説も今まで読んだことはなかったのだが,この作品は非常に評価が高く,あちこちで推薦されていることは知っていた. なので,古本屋で他の本のついでに購入しておいたのだが,これまでずっと積読になっていたのだ. 内容の方だが,不倫の末の無理心中に巻き込まれた...
投稿者 さい
2004年08月18日

『鏡をみてはいけません』田辺聖子

ハンドクーラー(あるいはガラス製の卵)について検索しているときにヒットしたのが,この田辺聖子の小説. 駆け出しの絵本作家である主人公が,バツイチ・子持ちの恋人の自宅(小姑付き)で同居を始めるという話なのだが,その主人公が話を考えるときに握り締めるのがクリスタルガラスでできた卵なのだ. これまで田辺聖子の作品は読んだことがなかったので,これはいい機会ということで読んでみた. 巻末の紹介文に「私はなぜここにいるのだろうか.女が美しさを求めて,自分の納得のいく居場所を模索する愛の長編小説」とあるのだが,それを読んだ時点で少々不安を覚えなくもなかったのだが......
投稿者 さい
2004年08月16日

『空の境界 上下』奈須きのこ

三津浜図書館まで行って借りてきた本. それほど切実に読みたかったわけではないのだが,中央図書館では予約待ちなのに,三津浜図書館まで行けば予約している人を飛び越して借りられる,という優越感(?)が大きかったと思われる. 愛媛に来てからはゲームをする機会がなくなってしまったのでゲーム業界にはすっかり疎くなってしまったのだが,この作者は同人ゲーム業界(?)で驚異的な人気を持っている会社の人で,この作品自体も同人小説として販売され,やっぱり驚異的な売上を叩き出したものを加筆修正したものだとか....
投稿者 さい
2004年08月15日

『戒』小山歩

松山市立中央図書館で借りてきた本 その2. ほとんど知られていないけど実は名作らしく,以前から買うべきかどうか迷っていた本. 中華風の古代国家を舞台にした架空歴史物で,天才でありながら亡き母の遺志によって仕官の道を立たれ,道化として振舞いながら一国を支える主人公「戒」の活躍と苦悩の物語. 自由に生きたい,誰かに認められたいと苦悩する主人公もいいのだが,脇役も魅力的(特に「睛」が鮮烈でお気に入り). 前半と後半で主人公の性格が違っているような気もするが,それは環境の変化があったから仕方ないとしても,主人公以上の天才っぷりを発揮する異母弟が後半になっていきなり登場するなど,不自然なところがいくつか...
投稿者 さい
2004年08月13日

『小生物語』乙一

松山市立中央図書館で利用者カードを作るきっかけになった,ある意味記念すべき本. 基本的には乙一の日記なのだが,そこは乙一だけあって,独特のノリで書かれていて,面白かった. しかし,私はあとがきなどに垣間見える乙一のパーソナリティーを面白いと思うし気に入ってもいるのだが,やっぱり乙一の書いた作品を読むほうが好きなようだ. 今までの作品の再録+新作みたいな中途半端な形ではなく,そろそろちゃんとした小説の新刊本を出して欲しいと切実に思う....
投稿者 さい
2004年08月02日

『盤上の敵』北村薫

TVディレクターである主人公が妻と暮らす自宅に猟銃を持った殺人犯が立てこもった. 主人公は警察に無断で勤務先のTV局のワイドショーに情報を提供する. しかし,それは自身の手で事件を解決し,妻を救うためだった... 北村薫といえば,人が死なないミステリーである「円紫師匠と私」シリーズや,殺人事件を扱うことはあっても全く重くない「覆面作家」シリーズ,実は未読の「時と人」三部作などで有名で,その作風が非常に優しいことで知られているが,これは違う.私は文庫版で読んだのだが,ノベルズ版の前書きとしてこのようなことが冒頭に書かれている. あらかじめ,お断りしておきたいのです.今,物語によって慰めを得たり,...
投稿者 さい
2004年08月01日

『誰か』宮部みゆき

周囲からは玉の輿に乗ったと思われている社内報の編集者は,義父から「事故死した友人の人生を本にまとめようとしている姉妹の手伝いをしてくれ」と頼まれる.しかし,本の執筆に乗り気な妹に対して,父の過去を明らかにすることに消極的な姉.その態度の背景には,ある事件が存在していた... ということで,『火車』以来の宮部みゆき作品.発表された時系列で読んでいないので,作風などがどのように変化してるかはよく分からないが,370ページくらい(少し字が大きめではあるが)をグイグイ読ませる筆力は相変わらず. しかし......
投稿者 さい
2004年07月30日

『もういちど走り出そう』川島誠

以前,同じ作者の『800』という作品(陸上競技青春小説?)を借りて読んだら面白かったので,インターネットの古本屋さんで他の本を注文するついでに短編集の『セカンドショット』と一緒に買っておいた. まずは『セカンドショット』の方から読んだのだが,これが全然受け付けないタイプの話がほとんどで(どうやら児童文学として書かれたようだ),こっちもハズレかなと心配しつつ読んだ. 妻の小説家デビューによって失われた何かを取り戻すべく,元陸上選手の歯医者がトレーニングを再開するのだが,その努力にもかかわらずすれ違いが続き...という話で,主人公の「勝ち組」っぷりが少々鼻につくこともあったが,結構面白く読めた.特...
投稿者 さい
2004年07月29日

『ミルキーウェイ』『天使たちの進化論』清水玲子

ロボットのジャックとエレナが登場するSF作品集,という位置づけでいいのかな. 年月が過ぎても変わることができない,子孫を残すことができない,というロボットの性質のため,愛する人間たちと同じ時間を生きることのできない悲しみがテーマの一つなんだろうが,どうやら私はこの手のテーマを含めて「ロボットもの」というか「特定の目的のために作られた物の悲哀や葛藤」に弱いらしい. 乙一の『陽だまりの詩(シ)』(『ZOO』収録)もそうだし,遠藤淑子の『ヘヴン』もそうだな.パターンは違うけど,上遠野浩平の『パンドラ』(ブギーポップ・シリーズ)もそうか.うーん,挙げていくときりがないぞ. ちなみに,この本は学生さんか...
投稿者 さい
2004年07月25日

『巨人たちの星』J.P.ホーガン

巨人たちの星から地球に向けて通信が届く.しかし,それは地球が常に監視されていることを意味していた. 巨人たちはなぜ地球を監視していたのか? そして自分たちと連絡をとっていることを秘密にさせようとする巨人たちの発言の裏にあるものとは? 『星を継ぐもの』『ガニメデの優しい巨人』と続いてきたシリーズの完結編.すべての謎が明らかに?...
投稿者 さい
2004年07月25日

『ガニメデの優しい巨人』J.P.ホーガン

2500万年前に消え去ったはずの異星人(=巨人)の宇宙船が突如出現した. 光速に近いスピードで長期間航行したため,本来の時間から遠く離れた現代に漂着することになったのだ. 同胞たちの行方の手がかりをもたない巨人たちは地球に身を寄せることになるが... ...
投稿者 さい
2004年07月20日

『ヘヴン 1-2巻』遠藤淑子

少し前,生協の書店部に見慣れた絵柄のマンガが平積みにされていた.遠藤淑子だった. それまでの少女漫画と違い,同じ白泉社でも青年誌の単行本になっていた.最近では少女漫画の作者が青年誌に移ることも珍しくなくないが,あの作風で青年誌はつらくないかな等と漠然と考えたりはしたものの,手に取ることもなく,いつしか生協からも消え去っていた. しかし,その時点で遠藤淑子の名前が再び意識の片隅に浮上していたのだろう. その後,たまたま機会があって,遠藤淑子の単行本『ヘヴン』を手に取ることになった. ...
投稿者 さい
2004年07月19日

『山アラシのジレンマ』遠藤淑子

自分でも意外だったが,このBlogでマンガを紹介するのはこれが初めてのようだ. ということで,マンガ,しかも少女漫画だ. チームメイトに裏切られて屈折した転校生と彼にお節介を焼く応援団長&幼馴染の活躍する表題作も面白いのだが,個人的に感慨深いのが巻末に収録された『シンシアリー』という短編.雑誌掲載時にリアルタイムに読んだのだが(うわぁ,中学生の頃だよ),ハートウォーミングなのに笑えるという,それまでに読んだことのなかったタイプの話で,かなり衝撃を受けた. ...
投稿者 さい
2004年07月15日

『コミュニケーション不全症候群』中島梓

オタク,ダイエットに熱中する女の子,JUNE(≒「やおい」と書くのは正確ではない?)好きの女性.これらはすべて「居場所」の非存在に対する不適応または過剰適応の結果である. 1991年に刊行された評論のため,今では遥か昔のように思える事件が当然の前提として用いられているので,最近の学生さんには読みにくいだろうし,途中でJUNEものの解説やマンガ論が展開されていたりするため,読むのを途中であきらめる人もいるかもしれない. そういう人は最後の2章だけを読めば大丈夫....
投稿者 さい
2004年07月15日

『幼年期の終わり』A.C.クラーク

人類が宇宙に進出しようとしたとき,巨大宇宙船で地球に飛来した「オーバーロード」.人類は圧倒的な技術と能力を持つオーバーロードの監督を受け入れ,地球は争いごとのない,これまでにないほど豊かな世界になるのだが... 作者は『2001年宇宙の旅』の原作者としても有名で,以前紹介した『星を継ぐもの』と同じく,これも傑作SFの誉れが高い1冊....
投稿者 さい
2004年07月13日

『星を継ぐもの』J.P.ホーガン

月面上で謎の宇宙服の男の死体が発見されるのだが,その死亡推定日時(?)は約5万年前.その時代に人類が月に行けるはずがない.ならば,この男は何者なのか? ...
投稿者 さい
2004年07月07日

『スナーク狩り』宮部みゆき

色々な登場人物が出てきて,それぞれのストーリーが一つのストーリーに集約されるという,個人的には非常に好きなタイプの話. 読んでいても,話が玉突き事故のように連鎖していって,グイグイ読めてしまう. しかし,ラストがちょっとなあ......
投稿者 さい
2004年06月22日

『脳男』首藤瓜於

第46回江戸川乱歩賞受賞作. 警察がようやく突き止めた爆弾魔のアジトで,犯人と格闘していた謎の男. 警察はその男「鈴木一郎」を爆弾魔の共犯として逮捕し,「鈴木一郎」は精神鑑定にかけられることになるが,そこで判明した意外な事実は......
投稿者 さい
2004年06月20日

『あの頃ぼくらはアホでした』東野圭吾

大阪出身の作者の青春時代をネタにしたエッセイ. 作者が通っていた高校の特徴(イニシャルがF,学生の要求によって服装自由化,制服ではなく標準服がある等)が自分の出身校に当てはまるので,ネットで調べてみたらまったく別の高校だった. その検索の際,実家の近所から物語がスタートする小説(『白夜行』)があると知った.評判もいいようなので,今度読んでみることにしよう....
投稿者 さい
2004年06月13日

『ハイペリオン 上・下』ダン・シモンズ

かなり以前から積読状態になっていた本.なにしろ海外SFで上下巻,しかも両巻とも400ページ以上というボリュームなので,なかなか手をつけられなかったのだ. 評判自体は非常に高く,ダブルクラウン(ヒューゴー賞とローカス賞というアメリカのSFに与えられる賞を両方受賞した作品に対して与えられるタイトル)にして,本の雑誌 90年代のベスト100の第3位にも選ばれている. ということで,それなりに期待して読み始めたのだが......
投稿者 さい
2004年06月08日

『ステップファザー・ステップ』宮部みゆき

両親が別々の相手と駆け落ちしてしまった双子の中学生と,ひょんなことから双子の親代わりをすることになった泥棒が遭遇する事件の数々を描いた短編集. # 同じことをついさっきも書いた気もするが,きっと気のせいだろう....
投稿者 さい
2004年06月08日

『おれは非情勤』東野圭吾

ハードボイルドな小学校の非常勤教員(産休とか病気のときの代理の先生ね)が赴任先で遭遇する事件の数々を描いた短編集. ...
投稿者 さい
2004年06月06日

『マネー・ボール』マイケル・ルイス

タイトルだけでは何の本かわからないだろうが,表紙を見ればすぐ分かる.タイトルの「ボール」は野球のボールのことで,メジャーリーグにある貧乏球団オークランド・アスレチックスについて書かれた本. なぜその貧乏球団のことが本になるのかというと,これまでの野球の考え方を大きく覆した選手採用と戦術によって野球革命を起こしつつあるかららしい. ...
投稿者 さい
2004年05月30日

『火車』宮部みゆき

宮部みゆきの本はそれなりに読んできたが(チェックしてみたら8冊くらいかな),これまで読んだものの中では本作がダントツでよくできている.いや,よくできているというよりも凄いと言う方が適切かもしれない....
投稿者 さい
2004年05月29日

『文壇アイドル論』斎藤美奈子

80年代と90年代のベストセラー作家8人がどのように評価されたか,それはどういう時代背景のためか,についての本. まえがきには「『作家論』というよりは『作家論論』だ」とあり,帯には「同時代論」とあることからも分かるように,単なる作家評論ではない. 作者は『趣味は読書。』の作者だが,それほど毒舌ではなかったかな....
投稿者 さい
2004年05月27日

『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン

マイクロソフトでは就職面接の際に難問(いわゆる論理パズル)に答えられることが求められるそうだ.成功しているマイクロソフトが採用している面接方法だからということで,他の会社でも同様の面接試験を行われているらしい. この本はそういうパズル式面接が本当に有効なのかどうかについて論じた本なのだが,中身はそんなに堅苦しくない.たくさんの論理パズルとそれについての解説が掲載されているので,パズル集として読むこともできる....
投稿者 さい
2004年05月27日

『暗黒童話』乙一

以前から乙一の作品は読んでおり,本作もずっと探していたが,なかなか見つからずに今まで読めずじまいだった.ようやく文庫化されたので早速購入. しかし,この前に読んだ短編集『ZOO』が全体的にスプラッタ and/or ダークな内容で個人的には趣味ではなかったため(『陽だまりの詩(シ)』を除く.これは感動の名作!),同系統(いわゆる黒乙一)な本作もどうなんだろうと思っていた. ...
投稿者 さい
2004年05月18日

『情報って何だろう』春木良且

情報リテラシーで情報化と経営についての講義をしなくてはいけないので,そのネタ本にでもなるかと思って読んでみた. これは岩波書店の新書なのだが,同じ新書でもジュニア新書.ジュニア新書というだけで大学生は読もうとしないかもしれないが,ジュニア新書が想定している読者は「人生の出発点」に立っている「若い世代」だそうなので,別に大学生が読んでもおかしくはない.大学生協に並んでたのがその証拠(なのか?)....
投稿者 さい
2004年05月15日

『グインサーガ外伝19 初恋』栗本薫

『初恋』というタイトルだと何をトチ狂ったのかと思われそうなので,いちおう正式タイトルで. 『グインサーガ』という超長編小説(現在本編で94巻,外伝を含めると100巻以上)があるのだが,この本はその外伝で,とある登場人物(絶世の美男で王子様)の若き日を描いた作品. 新刊案内でタイトルを見たときはどうしたものかと途方に暮れたものだが,中身はちゃんと面白かった. ...
投稿者 さい
2004年05月03日

『経営者の条件』P.F.ドラッカー

原題はThe Effective Executiveで,直訳だと「効果的な経営者」? このタイトルだけで判断すると経営者志望の人以外にはまったく関係がないと思うかもしれないが,全然そんなことはない.組織に関わって何かをやっている or やろうとする人,つまり現代人であれば誰が読んでも役に立つんじゃないだろうか....
投稿者 さい