2004年10月25日

『1ポンドの悲しみ』石田衣良

[ Book]

大阪に出張に行った際に買ってきた.もちろん古本屋で.
で,我慢しきれず,帰りの移動時間中に全部読んでしまった.

石田衣良には20代の恋愛をテーマにした短編小説集である『スローグッドバイ』という,甘くて優しくて,石田衣良節 炸裂!という感じの作品がある.
今回の『1ポンドの悲しみ』は,そちらのあとがきでも予告されていた30代の恋愛をテーマにした短編集(あとがきによると「30代前半の恋愛」になってしまったそうだ).ただ,実際に読んでみると,年代の違いについてはあまり意識しなかったんだが...

そういうことで,直接の続編ともいえるこの作品,相変わらず石田衣良節が炸裂しまくっている.
一番最初に収められている「ふたりの名前」のクライマックスの台詞を読んだときには,あまりの「クサさ」に思わずのたうちまわってしまったが(念のために書いておくが,作品自体は良く出来ている),それ以降はそういうこともなく,とても楽しめた.

前作の『スローグッドバイ』では「真珠のコップ」という話が特にお気に入りだった(現在,現物が手元にないので理由は確認できないが,なぜか「のっぽのサリー」という名前で覚えていた).ネットで調べたところ,この話が好きという人は結構多いらしい.

で,この本(10の短編が収められている)にも同じようにお気に入りが一つある.「真珠のコップ」については好きな理由がなんとなく自分でも分かるのだが,こちらについては好きな理由が分からない.うーん,雰囲気がいいからかなあ.

と,まあ,好意的なことばかり書いているが,この本を読む前後,女性作家の恋愛物(田辺聖子,山田詠美,山本文緒)を連続して読んだので,色々と考えさせられた.
この作品で書かれている恋愛って,男性側からの理想の恋愛なんだろうか?
特に,「十一月のつぼみ」という話なんか,同じ題材を女性作家が描いたら,きっと全然違う話になるような気がする.



と思ってしまうのは,ヤバイ傾向なんでしょうか?

おまけ
「デートは本屋で」のお遊びには思わず笑ってしまった.