2007年07月15日

『不自然な死』ドロシー・L・セイヤーズ

[ Book]

癌を患っていた老婦人の突然死.不審に思った医師による検視解剖にも不自然な点は発見されなかったという.
興味を抱いた探偵貴族「ピーター・ウィムジイ」は独自の調査を開始するが,そこに関係者の新たな死の報せが...

ピーター卿シリーズの3作目.松山市立中央図書館所蔵.

以前から「もしかして法廷物?」という疑念を抱いていたのだが,法廷物というよりも「法律物」だったようだ.

というのも,この手の事件を構成するものとしては「犯人」「動機」「手段」があるが,このうちの「動機」とある法律が大きく関係しているから.
しかし,普通の人が第一次大戦後のイギリスの法律改変についての知識なんて持っているはずがないので,このあたりの説明がされるまでは「犯人」が絞り込めない.
逆に,この説明が出た後には「犯人」についての仕掛けもすぐに読めてしまう.

で,もう一つの盲点が「手段」.今では手段としては有名になりすぎていて,検視でも発見されないというのが逆に迷彩になってしまったが,この作品が発表された1920年代だと珍しかったのかなあ.

などと思いつつ,解説を読んでいたら,「実効性の面でいささか疑問が残る」とあった.
そうなのか?というのと,自分でも作中のその箇所を読んでいて「そっちにそれをすると,別の理由で死んでしまうのでは?」と思ったので調べてみた.
ネタバレになるので検索結果は書かないが,実効性については「不可能ではないが,かなりの量が必要」のようだ.
で,別の理由で死んでしまうのではないかという疑問についてだが,死ぬかどうかは別にして,やっぱり大変っぽい.