2005年03月31日

『掌の中の小鳥』加納朋子

[ Book]

とあるパーティーで偶然知り合った男と女が偶然入ったバー「エッグ・スタンド」.
いつしか常連となった二人は,女性バーテンダーと常連の老紳士を交えて,現在そして過去に直面した謎めいた話を披露する...

『ななつのこ』『魔法飛行』『スペース』の作者である加納朋子の第2作目に当たるのかな?
基本的に一話完結の連作短編集で,洒落た感じのミステリー.人が死んだりしないという点でも以前読んだ加納朋子作品と共通.
で,これも非常に面白かった.どうやら加納朋子作品とは相性がいいようだ.

いつものように,いくつか気に入った箇所を引用.ちょっとネタバレ気味なところもあるので,これから読もうという方は見ないほうがいいかも.

「きっかけっていうのはね、つまらない偶然プラス、ちょっとした作為だってことさ」
    冬城圭介


「世界中でたった一人の誰かに振り向いてもらいたいばっかりに、狂ったみたいに花を咲かせる木だって、あるってことよ」
    穂村紗英


『あなたの手の中には何もないかもしれないし、逆に何だってあるかもしれない。小鳥はもう死んでいるかもしれないし、逆に生きているかもしれない。握りしめている石は黒かもしれないし、白かもしれない。それとも、もっと他の色かもね』
 紗英の声は口早にそう言い、最後に誇らかにこう断言した。
『あなたがどんな人間なのか、決めるのはあなた自身なのよ』と。