2006年06月06日

『二人の紅茶王』磯淵猛

[ Book]

いつものようにネットで見かけてチェックした本だったので,どういう本なのか分からなかったのだが,副題が「リプトンとトワイニングと…」.
ならば,紅茶を全世界に広めた人物であるトーマス・リプトンとトワイニング家についての評伝だろう.

と思って読み始めたのだが,アイルランドについてのエピソードや旅行記が延々と続く.
アイルランドは一人当たりの紅茶の消費量が世界一なので,確かに紅茶には関係があるんだが,紅茶王はどこに行った?

そろそろ全体の三分の一くらいを読み終え,「これはアイルランドについてのエッセイと思って読んだ方がいいかな」と諦めかけたところ,ようやく紅茶王が登場.

マーケティングの天才とでもいえるトーマス・リプトンと,伝統を代々受け継いできたトワイニング家という,ある意味で対極とでもいえる二人の紅茶王の話は面白かった.
あと,チップ(TIP)の語源というか由来についても書かれていたのだが,そんな由来だったのかとちょっと驚きだった.感謝の気持ちとかじゃなかったんだな.

しかし,それよりも面白かったのが,ラプサン・スーチョンと正山小種とアール・グレイの話.
正山小種の生産者にしてみれば,ラプサン・スーチョンの話は悲劇あるいは屈辱以外の何物でもないのだろうが,その全貌を知ってみれば『裸の王様』の実話版っぽくて,思わず笑ってしまう.
でも,現在の世の中に流通している商品(特にブランド物)の多くって,多かれ少なかれ,このラプサン・スーチョンの話を笑えないんだろうな.