2006年08月30日

『狐罠』北森鴻

[ Book]

店舗をもたない骨董商「旗師」として売り出し中の「陶子」は,やり手の骨董商「橘」に贋作を売りつけられた.二度と贋作をつかまされないため,陶子は橘に目利き殺しを仕掛け,贋作を売りつけようとするが...

読むのはこれで5冊目になる北森鴻の作品.
私の中では「北森鴻=おいしそうな料理が出てくる作品を書く作家」の構図ができあがっているのだが,それ以外にもシリーズ物をいくつかもっており,本作はそのひとつで骨董を扱ったシリーズの一作目.松山市立中央図書館.

私は「機能」さえ十分ならば「物それ自体」にはそれほどこだわりがなく,安ければ安いにこしたことはないというコストパフォーマンス重視派なので,コストパフォーマンスが悪い骨董品にはほとんど興味がない.
なので骨董の世界のことは全然知らなかったのだが,私のような読者を対象にしているためか,骨董の世界のことがいろいろと説明されていて,そういうのを知る喜びがあった.
しかし,そういう説明の分だけ,話が長めになってしまっているので,そのあたりが残念.でも説明ナシだと意味がわからないだろうからなあ.

いちおう作中で殺人事件が起こって,その犯人探しも並行して行われているので,その手のミステリでもあるんだろうけど,どちらかというと詐欺師物というべきか.
しかし,この作品はシリーズ化されているわけだが,二度と贋作に関わらないために贋作を作って復讐をするのが目利き殺しの動機だったはず.
となると二作め以降は贋作は関係なしになっているのか? それはそれで話が作りにくそうだけど...