2006年12月16日

『乱れからくり』泡坂妻夫

[ Book]

玩具会社の創業者一族の一人である「馬割朋広」から妻「真棹」の尾行を依頼された探偵「宇内舞子」と「勝敏夫」.
しかし,その二人の前で馬割夫妻の乗った車に隕石が直撃,朋広は死んでしまう.悲しみに沈む真棹に惹かれていく敏夫だが,そんな彼らの前に次々と事件が...

作者の泡坂妻夫は本格ミステリのベテランとして有名な作家なのだが,この作者の本を読んだのは本作がはじめて.松山市立中央図書館所蔵.

全部で350ページほどあるのだが,そのうちの三分の一は薀蓄話ではないか?と思ってしまうほど,薀蓄話が多い.
玩具産業の歴史から始まり,隕石,人形,迷路,からくり仕掛け,と色々な薀蓄が色々な人によって語られる.
しかし単なる薀蓄話というわけでもなく,ときどき本筋に絡んできたりするので油断できなかったりする.

ミステリとしてだが,冒頭に隕石の直撃というショッキングな死因がくるものの,残りのトリックは非常にノーマルというか,ちゃんと材料が提示されているので,「卑怯」とか「飛び道具」といった感じはそれほどしない.
まあ,○○○○を作るためだけに○○○○○を作るというのは,ちょっと大掛かり過ぎると思わなくもないが.