2005年10月24日

『春季限定いちごタルト事件』米澤穂信

[ Book]

小鳩君と小山内さんは,日々の平穏と安定のため「小市民たれ」をモットーにお互いを助け合う同志.
しかし,なぜか二人の前には常に謎があらわれ,本質が「名探偵」の小鳩君はそれを解く羽目に.彼らが目立たない小市民の生活を手に入れるのはいつの日か...

『さよなら妖精』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた.
系統としては北村薫や加納朋子と同じ「日常の謎」系のミステリ.

タイトルと主人公が「小市民」を目指すという設定が謎だったのだが,両方とも読んで納得.
確かに日常的に密室殺人が起きているような環境ならいざ知らず,普通の生活をおくっている限り,「名探偵」に隠しておきたいことを声高に「解決」ならぬ「解説」されるのはイヤだよなあ.

個人的には『さよなら妖精』と同じような青春小説系のテイストを期待していたのだが,青春小説というよりはコメディチックなノリで,期待したものとは違ったが,面白かった.

地の文や会話の展開などがガチャガチャしている感じがするが,これは「名探偵」気質の主人公の一人称小説だから,意識的にやっているんだろう.

あと,これも主人公の「名探偵」気質に由来しているのだろうが,地の文で色々なトリビア的な知識を仕入れることができた.「甘いものは別腹」の前に来る成句とかは「へえ,そんな成句だったんだ」と思わず検索してしまった.
あと,「ケーキショップ ハンプティ・ダンプティ」の解説には笑ってしまった.実際にありそうな店名だけどなあ.

しかし,最も笑ってしまったのは小山内さんのキャラクター.
読み始めた頃から,なぜか身近にいる学生さんが脳裏に浮かんできたのだが,その状態で最終話までいってしまったので,面白さ倍増.次にその学生さんにあったときには,思わず笑ってしまうかもしれない.


おまけ.
最後まで読んで,なぜか映画『クライング・ゲーム』を思い出してしまった.
これは劇中に出てくるサソリの話のせいであって,小山内さんが○○○というわけじゃないよ.