2007年07月28日

『経営の大局をつかむ会計』山根節

[ Book]

名前から分かるように,このところ,世の中に溢れている会計についての本.
しかし,これまでに読んだ会計関連の本の中で一番面白かった.

副題は「健全な"ドンブリ勘定"のすすめ」ということで,細かい会計の知識を得るのが目的ではなく,大雑把でもいいから実際に使える知識というか感覚を身につけることを目的とした本.
で,そのために一番手っ取り早いのが,実際の企業の財務諸表と格闘することだとして,この本の中でも実際の企業の財務諸表を使っている.

本の刊行が2005年ということで,現在の状況と少し違ってはいるのだが,武富士やセブンイレブン,トヨタ自動車の財務諸表を簡単にではあるが分析してあって,そこから会社の状況だけでなくビジネスモデルの分析まで行われている.

どれも簡単なものではあるのだが,単に会計についての本を読んでいたのでは,この域にまで達するのはかなり勉強が進んでからになりそうになることを,サクッと説明してくれている.
おかげで,簿記の仕訳がどうのこうのというのではなく,実際の経営に役に立てるという観点からすると,かなり手っ取り早く知識と感覚を身につけられそう.

個人的に,学生さんには簿記の知識は役に立つから勉強するようにと日頃から言っている.
しかし,簿記の考え方はともかく,その知識が役に立つレベルになるのは株式会社会計と直接原価計算が出てくる日商2級レベルから.
多くの学生さんがそこにたどり着くまでに脱落しているのが現状であり,どうにかならないかなあと思っていたのだが,最低限の基礎知識を入れた上で,この本を読ませてみるというのも一つの手かもしれない,と思えたくらい,個人的にはオススメの本.