2004年10月18日

『虚無への供物』中井英夫

[ Book]

日本推理小説の歴史に残る作品の一つらしく,いつかは読んでみたいと思っていたところ,古本屋で見かけたのですかさずゲット.
しかし文庫で600ページ以上という大作のため,なかなか手を出せずにいた.今回の大阪出張のお供として,移動中&寝る前の時間を使ってようやく読み終えた.

感想なのだが,「グルグルしててギラギラしている小説」というのが率直なところか,
四つ(なのか?)の密室殺人とそれに付随する色々な出来事を巡って,探偵役の登場人物がそれぞれの推理を,いろいろな見立てを使って行うのだが,新たな事件が起こる度に以前の推理が覆されたり,形を変えて復活したりするので,話がグルグルしているのだ.
で,ギラギラしているというのは推理の際の見立て.植物学やら不動明王信仰,シャンソン,海外推理小説などなど,いろいろな分野の知識がこれでもかとばかりにそそぎ込まれており,非常に派手派手しいのだ.私にそれらの背景知識があればいろいろと頷けたのかもしれないが,そのあたりは全く分からないので,装飾過多な感じがするわけだ.

しかも,オチがものすごいというかなんというか...
なるほど,こういうのをアンチ・ミステリーというのか.

しかし,最後の犯人の告発がまったく当てはまる世の中だよなあ,現在って...
この最後の告発を読むためだけでも,この作品は読む価値があるかも知れない.