2007年08月04日

『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

[ Book]

基本的にベストセラー物というか,評判が高い新刊は読まないことにしているのだが,巡回しているBlog(複数)でえらく絶賛されていたので,めずらしく新刊のうちに読んでみることにした.

「生物とは何か?」という問いについて,シェーンハイマーという学者の主張である「動的平衡」という概念を紹介するのだが,その概念に辿り着くまでの生物科学の研究の変遷が分かりやすい文体で描かれている.

内容の多くはDNA関連の話なのだが,単にDNAや関連技術の話をするのではなく,それらの発見者のエピソードを中心に書いているところが評価の高い理由なんだろう.

で,このエピソードが単なる偉人伝ではなく,実に「人間」っぽく描かれている.
そもそも世間では「学者」という存在が少々美化・過大評価されているような気がするのだが,この本では結構リアルに描かれている.学者という人種も,他の商売と同様,お金がないと生けないし,名誉欲などもそれなりにあるんだよなあ.

で,そういう人物のエピソードと平行して,生物科学の知識についての説明もされている.
DNAの仕組みについては何となく分かっていたのだが,遺伝子研究に必須の存在であるノックアウト・マウスの製造方法については,「えっ,こんな力業でやってたの?」とちょっと意外だった.

ということで,面白かったことは面白かったのだが,各方面で絶賛されているほど面白いかどうかは微妙.
うーん,頭のいい人たちは別の読み方ができるから評価が高いのかなあ...