2008年03月19日

『時砂の王』小川一水

[ Book]

西暦248年,山の中で物の怪に襲われた少女は大剣を持った男に助けられた.
襲われた少女は邪馬台国の女王である「卑弥呼(彌与)」.
そして「メッセンジャー・O」と名乗る男は,26世紀から時間を超えて戦い続けていた.地球を守るために...

昨年10月に出版された小川一水の最新作.
と思ったら,2月に別の新刊が出てた.さすがにポプラ社はノーチェックだった...
ネットの書評などを読む限りでは,かなり評価が高い作品.

さて,この作品,タイトルと冒頭の紹介を見て分かるとおり,時間物のSF.
時間物は個人的に好きなので,そのあたりも含めて読む前の期待はかなり高かった.

で,実際に面白いのだ.
時間物はどうしてもパラドックスをどう処理するかという問題が出てくるのだが,本作では未来から来たメッセンジャーたちが介入した時点で未来が枝分かれする「時間枝」という概念を登場させている.
この概念自体は平行世界でパラドックスを処理するというパターンの変形なのだろうが,この概念を意識的に入れることで,自分たちが守ろうと介入しても,それで守れる未来は自分たちの守ろうとした未来ではなくなってしまうことを主人公は自覚している.これはちょっと珍しいかも.
他にも,この「時間枝」の概念から派生した「因果効果」やら「Dメッセンジャー」やらの小道具がうまく使われていて,そういうSF的な面では面白かった.

SF的な面だけでなく,ストーリー的にも面白かったのだが,ラストが...
読んでいて,思わず「へっ?」と間の抜けた声を上げてしまったくらい.
確かに,そこまでのネタふりがあるので,論理的には破綻してないのかもしれないけど,いくらなんでも唐突すぎないか...
この作者の本にしては短めなので,どうせならもっと長く書いて,あのラストを違和感なく導くようにしてもらいたかった.

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