2005年09月05日

『斎藤家の核弾頭』篠田節子

[ Book]

超管理社会となった未来の日本.特A級市民の斎藤総一郎の妻となった美和子だが,総一郎は裁判官の職を失い,自身も育児と妊娠に苦しみながら,崩壊寸前の自宅に大家族で暮らす毎日.そんなある日,一家は政府の命令によって東京湾の人工島への移住を余儀なくされる.しかし移住先の生活にも馴染み始めた頃,再び政府による移住命令が...

篠田節子の小説を読むのもこれで3冊目.松山市立中央図書館所蔵.
タイトルからコメディを想像して借りたのだが...

amazonの紹介文には「スラップスティック小説の傑作」とあり,確かにスラップスティック,つまりドタバタはしてる.
ドタバタはしているんだけど,あまりにもシニカルというかブラックというかグロテスクというか,基本的なシチュエーションがあまりにもブラックなため,ちょっと笑えない.

私は基本的にブラックな笑いも大丈夫なはずなのだが...
これは,もっと気楽な馬鹿コメディ(「一家族が核武装して日本に宣戦布告する」という紹介文を読んだら,どう考えても馬鹿コメディを想像するでしょ?)を想像して読み始めたためだろうか...
あるいは,子供が一人立ちした後の寂しさを防ぐため,末子の成長を意図的に遅らせる処置を施すという発想があまりにもグロテスクなためか...

まあ,超管理社会や官僚主義,効率優先主義の恐怖を描くという意味では成功しているのかもしれないが,『夏の災厄』のようなリアルな怖さではなく,カリカチュアされた怖さ・グロテスクさという感じ.
ブラックな笑いでも受け入れる自信のある人は読んでもいいと思うが,その手のがダメな人は読まないほうが身のためかも.