2007年06月08日

『サマー/タイム/トラベラー 全2巻』新城カズマ

[ Book]

幼馴染の「悠有」に突如発現した,3秒間だけ未来に跳ぶ能力.その能力を分析・開発するため,お嬢様学校に閉じ込められている「饗子」,郷土の権力者の息子である「涼」,物騒な噂を多数持っている「コージン」,そしてシニカルな「ぼく(卓人)」はプロジェクトを開始した.
その一方,街には放火事件が続発し,そして「悠有」の元に謎の脅迫状が...

帯には「時間改変も並行宇宙もない、ありきたりの青春小説」「宇宙戦争も銀河帝国もない、完璧な空想科学小説」とあって,かなり間口が広そうにも思えるのだが,全然そんなことはなかった.
いや,話の本筋は確かに帯にある惹句のとおりなのだが,散りばめられているネタがなあ...

主要登場人物の高校生たちは「悠有」を除いて,4人とも非常に頭がよいという設定ということもあるのだが,扱われているネタが非常に幅広い.
未来に跳ぶ能力を分析するために古今東西のタイムトラベル物のSFを漁ったりするのは序の口.
宇宙論,未来社会はどうなるか・どうするべきかについての考察,地方経済の停滞や地域通貨のシステムと破綻,さらには自転車の素晴らしさまで.
理系から文系,体育会系までの広い範囲のネタが扱われている.

なので,私も全部を理解できたわけではないのだが,そういうのを差し引いた,ベースとなる物語は本当に「青春小説」.
なので,表面的なネタの多さに戸惑わなければ,きっと多くの人が楽しめると思う...んだけど,やっぱり無理かなあ...

ちなみに作者の新城カズマは,昔,『蓬莱学園』というシリーズ物を書いていた(当時は作者名が微妙に違っていたような気もするが).
その中の『蓬莱学園の犯罪!』という作品で,やっぱり経済システム(貨幣の流通だったかな?)を扱っていて,非常に面白かった記憶がある.
その手のネタが得意な作家だとしたら他の作品を読んでみてもいいんだけど,タイトルから判断するに,どうも違ってるんだよなあ.まあ,図書館かどこかで探してみるか.