2004年12月04日

『ブラック・ティー』山本文緒

[ Book]

小さな「罪」をテーマにした短編集.裏表紙にある紹介文には「胸に手をあててみれば思いあたる軽犯罪」とあるんだけど,それは軽犯罪どころの話じゃないだろうというのも混じっている.学生さんに借りた本.

それほど分量があるわけではないのだが,諸般の事情から最初の4編をまず読んで,次の日に残りの6編を読んだ.

まずは前半4編.もちろんテーマは「小さな罪」なのだが,どことなくコミカルな感じも漂っていたりして,読後感も爽やか.
山本文緒の短編集は以前も読んだことがあり,「いい話」系と「ブラック」系の両方を書けることは知っていたのだが,その分類でいくと4編連続で「いい話」系.

で,一日経ってから後半の6編を読む.



うわぁ, 「ブラック」系炸裂だよ...
実際にはそれほどブラックというわけでもないのだろうが,4編連続で「いい話」系だったことから「この本は『いい話』系の短編集だ」と勝手に判断していたので,不意打ちを喰らったようなものだ.途中に「ニワトリ」という笑える話も挟まれているが,これも決して「いい話」系ではないしなあ.

どの話もよくできているのだが,基本的に「いい話」好みの私としては,特に「百年の恋」と「ママ・ドント・クライ」が面白かった.
ということで,いつものように引用を.

私達は純真でもなく、賢くもなく、善良でもないけれど。
できることを精一杯するだけ。ただ精一杯するだけ。
(from 百年の恋)