20世紀初めに東京の山の手に創設された,伝統ある女学校「聖マリアナ学園」.
学園のへんなやつ等が集まる「読書クラブ」には,学園の正史には残らない真実の歴史を連綿と記したクラブ誌が存在していた...
『赤朽葉家の伝説』で一般小説家としてもブレイクした桜庭一樹の作品.三津浜図書館所蔵.
あいかわらず少女がテーマなのだが,『赤朽葉家の伝説』と同じく編年体で構成された連作短編集.
各短編にはそれぞれ文学作品がモチーフとして使われている.
第1章がエドモン・ロスタンの『シラノ・ド・ベルジュラック』,
第2章が『哲学的福音南瓜書』,
第3章がシェイクスピアの『マクベス』,
第4章がホーソンの『緋文字』,
第5章がバロネス・オルツィ『紅はこべ』.
著者による創作と思われる『哲学的福音南瓜書』以外は何となく内容を知っているくらい有名な作品ばかりだが(『紅はこべ』は知らないか),内容を知らなくても問題なく読める.
舞台が女学校ということで,ちょっとカリカチュアされたキャラクターや表現が多いのがちょっと気になった.
なので,個人的には一番面白かったのが舞台のほとんどがパリである聖マリアナ学園の創設に関する話.
この作者にはこの手の話をもっと書いて欲しいんだけどなあ.
最後に気に入った箇所を引用.
諸君、世界は空っぽか? 本当に空っぽか?<両性具有のどぶ鼠>