2007年06月16日

『赤朽葉家の伝説』桜庭一樹

[ Book]

山の民の娘でありながら名家に嫁ぐことになった千里眼の「万葉」,
万葉の娘で伝説的な暴走族の頭であった「毛鞠」,
そして毛鞠の娘で,平凡な存在である「瞳子」.
山陰で製鉄に携わる旧家に生きる3世代の女性たち...

最近ではライトノベルから一般小説に軸足を移しつつある桜庭一樹の作品.三津浜図書館所蔵.

構造だけを見ていくと「地方都市を舞台にした少女が主人公の小説」という作者のいつものパターン.
でも,最後の「瞳子」の話はそのとおりではあるものの,他の二つの話の主人公である「万葉」「毛鞠」が普通の存在ではないので,かなり印象が違っていた.

舞台については山陰の製鉄産業が盛んな村にほぼ固定されているのだが,時代設定が終戦直後から現在までという長いスパンであり,その間の時代の変化が反映されているため,『白夜行』のような風俗小説でもある.
特に製鉄産業の盛衰がストーリーに直接絡んでくるので,そのあたりのところは個人的に面白かった.もっと力を入れて描いて欲しかったという気もするが,それをやると城山三郎とか高杉良の小説になってしまうか.

話としては「万葉」についてのエピソードが中心の第一部がとても面白く,「おおっ,こういうのも書けるんだ!」という感じだった.
でも,個人的には『少女七竈と七人の可愛そうな大人』の方が面白かったかな.