2005年02月24日

『ロスト』イアン・フィリップス

[ Book]

電柱や店頭などに迷子のペットを探すポスターが貼られていることがあるが,世界中からそういうのを集めて一冊の本にしたのがこの本.
吉野朔実のブック・エッセイで紹介されていて,「ないだろうな」と思って検索したら見つかった.恐るべし,松山市立図書館.
ちなみに所蔵は移動図書館扱いになっているので(実物は書庫にあるようだが),コミセンの図書館で借りるためには予約手続きをしなくてはならない.面倒くさい.

左綴じの本で,右ページにオリジナルのポスターが掲載されており,左ページにその翻訳という構成.
翻訳の方は活字のみだが,オリジナルの方は字ひとつとっても手書きもあればタイプライターもあるし,写真もあればイラストもある.
ペットの特徴やいなくなったときの状況を淡々と書いているものもあれば,ペットがいなくなってどれほど苦しんでいるかを切々と訴えているものもあると,非常にバラエティに富んでいる.

収められているポスターだが,迷子のペットの種類でいくと,犬が40,猫が50,鳥が10で,その他(ウサギとか牛とかヘビとか)が13という感じ(かなり大雑把な勘定).
やはり犬と猫が大部分を占めているのだが,どちらかというと猫の方が凝ったポスターのように思ったのは気のせい?


私自身は実家で飼えたのは水槽に入るもの,つまりカブトムシとかザリガニとか亀とかだけだったので,こういう迷子のペットを探すポスターを作ったことはない.

しかし,一匹だけ迷子になったペットがいる.
亀である.名前はもちろん「ガメラ」だ.
同じ水槽に入れたカニやイモリを片っ端から食べてしまうという非常に食い意地の張った奴であったが,目の前にハムの切れ端をぶら下げてやると,精一杯首を伸ばしてパクつくという,ペットと飼い主の交流をそれなりに楽しませてくれた奴でもあった.

そんなある日,水槽の掃除をするため,亀をバケツに入れ,家の前で水槽を洗っていたのだが,しばらく目を離していた間にバケツが倒れてしまったようで,中にいたはずの亀がいなくなっていた.
「しょせん亀の足,それほど遠くに入ってないはず」と周囲を探し回ったのだが,結局見つからず終い.それほど思い入れがなかったためか,迷子の亀を探すポスターを作ることもなかった.

あれから既に20年以上経っている.
長生きな亀のことだから,きっと今でも実家の周辺で立派な野良亀として色々なものをパクついているに違いない.