2005年11月20日

『リセット』北村薫

[ Book]

太平洋戦争に突入しようとする時代の神戸,女学校に通う「真澄」は友人の従弟である「修一」と出会う.戦争がその暗い影を落とす中でも友人たちと青春を謳歌していた真澄だが,激化する戦争はついに二人を引き裂いてしまう.

『スキップ』『ターン』と続いた「時と人 三部作」もついに最後.時を飛び越え,時を繰り返した前作までに対して,本作では...

うーん,どう書いてもネタバレになってしまいそうなのだが,タイトルの「リセット」という言葉の意味からはちょっと想像できない展開.
いや,確かにリセットといえばリセットなんだけど,本作で描きたかったであろう本質的なテーマはリセットしてもリセットされないものというかなんというか...
巻末の対談で「リセット」には「骨接ぎ」という意味もあると書かれてあるのだが,普通の人はそちらの意味を知らないだろう.普通の意味のリセットとそちらの意味のリセットをうまく掛けてあるわけだ.

読後のカタルシスという点では3部作で一番かもしれないが,そこに辿り着くまでに要求される忍耐力も一番.
戦中の女学生の青春や戦後の少年の生活に興味がある人には面白いのかもしれないが,そのあたりの描写が非常に多く,「はやくストーリーを進めろ!」という私のようなせっかちな読み手にはツライものがある.これから読んでみようという方はご注意を.

なお,この三部作,個人的には『ターン』が一番で,次に『スキップ』,最後が本作の『リセット』という順に面白かった.
amazonのレビューの星の数でも『ターン』と『スキップ』が4.5で,『リセット』が4となっているので,だいたい私と同じ評価か.
しかし,この『リセット』が一番好きな人も多いだろうなあというのは予想できる.
逆に最も一般受けするのは『ターン』だろうか.乙女チック度全開だし.
『スキップ』は『ターン』に比べればラストに救いがないし(あくまでも比較した場合の話),乙女チック度が低いので,『ターン』よりも一般受けはしそうにないかな.