2007年04月16日

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』桜庭一樹

[ Book]

いんらんな母の存在と自身の美貌のため,肩身の狭い思いをしている「川村 七竈」は,親友の「桂 雪風」とともに,鉄道模型に興じる日々を過ごしていたのだが...

読むのはこれで5冊目の桜庭一樹作品.松山市立中央図書館所蔵.
桜庭一樹といえば,これまでも「地方在住で家庭的に恵まれていない少女が戦う」という作品が多いのだが,これもその系統で,旭川という地方都市が舞台.

ライトノベルではなく,角川書店から出版されているハードカバー作品なのだが,古風な言葉遣いをする鉄道マニアの美少女が主人公の話,と聞くと,「ああ,マニア層ねらい打ちだな」と思うかもしれないが,これが全然そうじゃなかった.

最初(と最後の方)に七竈の母親の話が入っているのだが,本編の1章のある会話はこんな感じ.

「ほら、七竈」
雪風が言う。
「キハ五百億M」
「嗚呼!」
わたしはうなずく。
「スーパーよぞら!」
「嗚呼!」
「81カシオペアα号!」
「嗚呼!」

あれ,どう見てもネタでしかないな...
しかし,こんな会話の数ページ後には,かなり切ない話になっていたりする.

細かいところまで説明してしまうとネタバレになってしまうので多くは書けないが,すごくよく練られた作品で,『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』に勝るとも劣らないくらいの名作.
ということで,「古本屋で発見したら確保するリスト」に入れておこう.

ちなみに,『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』も最近になってハードカバーで再出版されたし(中身は同じらしいので,イラストに抵抗がない人は文庫の方がお得),最新作の『赤朽葉家の伝説』も図書館で予約がかなり入っているみたいなので,ライトノベルから一般向けへの転向は成功したといえるだろうな.