2007年03月17日

『片眼の猿』道尾秀介

[ Book]

私立探偵の「三梨」は,その特徴的な「耳」で業界でも有名.
産業スパイを見つけるため,その耳を使って盗み聴きをしていたところ,珍しい共通点を持つサングラスの女性「冬絵」の存在を知り,すぐさまスカウト.
彼女を相手のビルに潜入させるが,そこで殺人事件が...

『シャドウ』で見事にだましてくれた道尾秀介の新作.
卒業生にして同僚な人が貸してくれた.

カバーにトランプの写真が使われており,そのジョーカーが猿っぽいので,これがタイトルの「片眼の猿」かと思っていたら,実は全然関係なかった.

この作者の作品はまだ2つしか読んでいないので,どういう作風の作家なのかよく分からないのだが,本作は『シャドウ』とはかなり違っていた.
『シャドウ』はちょっと怖い感じだったが,こちらはかなり明るい感じ.中心のテーマなどはかなり重いものではあるのだが.

『シャドウ』との比較でいくと,『シャドウ』はラストの方で怒濤の展開というか,「うぉぉぉっ!」という感じが集中してやってくるのだが,本作はそれがさざ波のように小刻みにやってくる感じ.なので,最後の方のカタルシスがちょっと弱めかな.

で,読んでいて気になったのが,やたらと頻繁に章が区切られていること.
260ページほどなのだが,全部で37章もある.この章構成が私の感じた「小刻み感」の原因でもあると思うのだが,後ろの方を見てみると,どうやらこの作品,携帯電話で配信するための作品だったようだ.
そういう意味では,ケータイ小説になるんだろうが,小刻み感が強いこと以外は普通の小説なので,いわゆる「ケータイ小説」が苦手な人でも大丈夫だろう.