2005年10月12日

『リバーズ・エッジ』岡崎京子

[ Book]

学生さんが貸してくれたマンガ.岡崎京子の最高傑作とされ,評価も非常に高い.
通常なら,あらすじを書くのだが,これがちょっと書きにくい.
醒めているが比較的普通の主人公,イジメの対象になっているゲイの同級生,摂食障害の高校生モデルの三人が河原に隠された死体によってつながっていく話なのだが,他にもドラッグや妊娠,オタク,援助交際,絞殺などなど,ショッキングなネタが満載.

しかし,これが妙に淡々としている.ストーリー自体を考えてみると,結構激しいと思うんだけど.これは絵柄の影響もあるんだろうけど,意図的に抑えた感じで描いているのだろう.

読み終わった脳裏に浮かんだのは「平坦な戦場」と「意味と強度」という言葉.
「平坦な戦場」というのは,作中とあとがきで引用されているウィリアム・ギブソンとかいう人の詩の中に出てくる言葉で,「意味と強度」というのは宮台真司が一時使っていた概念(今も使ってるのか?).
宮台真司の使う概念については雑誌の連載でしか知らないので間違っている可能性大だが,意味=人生の意味・意義・理想であり,現代社会(=「終わりなき日常」?)ではそれらを追求して生きることは難しい,だから強度=日常生活における感覚・刺激・実感を頼りにして生きろ,ということらしい.

思ったのは,現代社会は平穏な日々が意味もなく続くという点では「平坦」であるけど,そこで意味もなく生き続けるのは苦しいという点では「戦場」なのかなと.
で,その「平坦な戦場」で生き続けるため,主人公たちには死体が,周囲の人物たちには援助交際やドラッグという刺激が必要だったということなんだろうか.

確かに現代社会では生きている意味を見つけにくいのかもしれない.
だからって極端な刺激に走るというのでは,自分の抱えている問題を先送りにしているだけで,いつかは手遅れになってしまうような気がしてならないのだが...