2005年10月11日

『若者のリアル』波頭亮

[ Book]

「最近の若い者は...」という愚痴は大昔の遺跡にも見つけられるというが,最近の若者研究はなぜか若者擁護の立場の結論になっていることに違和感を覚えた著者による現代の若者分析の書.
経営コンサルタントでもある著者はその経験と視点から現代の若者を分析し,このままだと国を滅ぼしてしまうことになると結論づけ,その対策についても述べている.
松山市立中央図書館所蔵.


構成としては,最初に現代の若者の特徴を挙げ,その特徴をもたらした原因とその結果として失われたものを分析,それが社会に与える影響について述べた上で,その結果として予想される「亡国」を食い止めるための対策について書かれてある.

まず最初の若者の特徴だが,「ラクが一番,イマが大切」という価値観と,こういう言葉は使っていないが「世間の狭さ」.これは全くそのとおりだと思う.

続いて,その原因と失われたものだが,原因は「経済的な安定」「共同体の崩壊」「孤独の消失」であり,その結果として「社会性」「アイデンティティ」「能力」が失われてしまった.
これらをもたない個人が社会集団に参加すると,その集団は弱体化してしまう.つまり,これらの若者を抱えてしまった日本という社会集団はこのままでは没落してしまうと結論付けている.まあ,これもいいだろう.

最後にその対策.
現代の若者の背景にあるのは「相場観のズレ」だという.
これは何かを得るための対価(=努力)の感覚がおかしいということなのだが,その原因として,ズレを認識できる客観性の無さ,ズレを修正しようと努力する意志力の無さ,ズレを修正しなくても生活できてしまうことの三つを挙げている.うん,そのとおりだな.

この相場観のズレを正すことが重要であり,そのためにはメリトクラシー,つまり実力主義を学校と企業に導入することだという.
ちょっとありきたりな結論のような気がするが,方向性としては正しいと思う.しかし,実際にどのように導入するべきかについては検討されていないのが残念.

全体的に若者に対する評価が非常に低い.
ネットで公開されている書評にもあったが,現代の若者を十把一からげにしてしまうことに限界はあるだろう.でも,最近の若者の特徴をよく分析していると思う.
しかし,その分,結論がありきたりに感じられた.