2005年10月26日

『グラスホッパー』伊坂幸太郎

[ Book]

轢き殺された妻の復讐のために非合法な商売を行う会社の一員となった「鈴木」,見つめあった人を自殺させる能力を持つ殺し屋の「鯨」,反抗しながらも相棒の命令で女子供も容赦なく殺す「蝉」.
三人の男たちはそれぞれの理由で伝説の殺し屋「押し屋」を追いかけることに...

伊坂幸太郎作品を読むのもこれで6作目.松山市立中央図書館所蔵.
刊行順でいくと,『チルドレン』の後の作品なのだが,そのテイストはかなり違っている.

といっても,相変わらずスタイリッシュで軽妙な会話を中心に話が展開していくのは変わらない.
違っているのは,そのダークさ.これまで犯罪を扱った作品であっても,どれも明るくて軽い感じだったのだが,本作は冒頭からかなりダーク.
同じようにスタイリッシュな作風の石田衣良が「ダーク&ビター」と銘打った『LAST』も読んだが,それと比べると当社比3倍は本作の方がダーク.
特に何の予備知識もなしに読んだこともあり,読み始めた頃は「うわぁ...」となってしまった.まあ,読み進めていくうちに気にならなくなったけど.

で,全体的な感想だが,最初はダークに始まり,半ばからは三人が徐々に絡みはじめ,最後にはそれなりの結末で落ち着くわけで,個人的にはイマイチかなあという感じ.蝉のしじみのエピソードと鈴木(&妻)のバイキングのエピソードは良かったんだけどね.
その鈴木のバイキングのエピソードで話が終わっていれば,もうちょっと評価が高かったのかもしれないけど,そのあとの駅のシーンをどう解釈すればいいのか分からず,ちょっと消化不良感が残ってしまったのが残念.