2005年02月16日

『魔法飛行』加納朋子

[ Book]

三部作の二作目(シリーズ名はなんだ?).
主人公の「駒子」が前作で知り合った瀬尾さんに宛てた手紙で謎を提示し,それが瀬尾さんからの返事で明かされるという前作と同じ形式を踏襲しているのだが,その後に差出人不明の謎の手紙が出てきて,その謎の手紙を含めた全ての謎が最後で明かされるという,前作と同様に凝った形式の作品集.今回は3篇(短編)+1篇(全体としての長編)の計4編が楽しめる.

途中に挟まれる謎の手紙なのだが,この内容がちょっとメタ小説(=小説世界の登場人物が自分たちが小説世界の登場人物だと自覚している小説,という理解でいいのかな?)っぽくなっており,読んでいる方は混乱してしまうのだが,そういうのも含めて最後でキレイに解決されている.
個人的には『ななつのこ』のムードの方が好きなのだが,完成度というか小技の豊富さではこちらの方に軍配が上がるのかな.そのあたりは巻末の有栖川有栖の解説を見てもらいたい.ちなみに私は解説を読んで初めて「おおっ,そういえばそうだ!」と気がついた.

で,この作品の最大のポイントは「瀬尾さん」だろう.もう,なんというか,乙女チック回路全開ってやつですか(笑)?
ビルの屋上にある小屋に一人で住んでいて,持ち物は最小限.主人公の登場する所あちこちにアルバイトとして登場し,星座に詳しく,南十字星を見るためにふらっとオーストラリアに行ったりするけど,主人公が必要とするときには絶対に間に合う.もちろん頭は抜群に良く,些細な手がかりから真実に辿り着いたりする.
「そんなやつ,絶対にいねぇよ」と思ったりする一方,作品全体には好意的だったりする私には,もしかして乙女チック回路が搭載されているのだろうか...

最後に気に入った箇所を引用.

「逃げ続けるのは、怖いことですよね」
「そうだね。永遠になんて、逃げられっこないから」


おまけ その1
タイトルの由来にもなっている短編に出てくるシャガールの『魔法の飛行』だが,気になったので検索してみたのがコレ
えーっと,イメージとかなり違うんですが...


おまけ その2
最後の短編にクリスマスコンサートのシーンが出てきて,そこで『流浪の民』が出てくるのだが,何か違和感がある.そこでは歌詞が「夢に楽土を求めん」とあるのだが,私の頭の中には「○○○○○○,夢に楽土を求めたり」という「字」が出てくる.
なぜだろうとしばらく考えた結果,どうやら『ぼくの地球を守って』で出てきたのが元ネタらしい.話の筋はほとんど覚えていないのに(そもそも完結まで読んだ記憶がない),場面場面の記憶というのは強力に残るものだなあ.

で,検索してみた結果,○○の部分は「なれし故郷を放たれて」だったことが判明.ついでにどういう曲か検索したところ,合唱曲のMP3がヒット.ダウロードして聞いてみたところ...
えーっと,イメージとかなり違うんですが... もっとスローで泣きの入った曲かと思ってたら,えらくアップテンポなのね...