2005年02月17日

『スペース』加納朋子

[ Book]

三部作のラストに相当するのだが,直接の関係があるのは前半の「スペース」だけで,シリーズとしてはこれで完結している.これも松山市立中央図書館で借りてきた.

「スペース」は前作同様,主人公「駒子」と瀬尾さんの間のやりとりが中心なのだが,瀬尾さんに渡される手紙が,元々は他の人に向けて書かれたものという点は違っている.シリーズ全体の直接のエンディングがあるので,形としてはこれがシリーズ最終作かな.
後半の「バックス・ペース」は「スペース」のサイド・ストーリーという位置づけなのだろうが,このシリーズの最後にふさわしい話.

巻頭に作者自ら以前のシリーズと続けて読んで欲しいとあるし,今回読むきっかけになったBlogに続けて読んだ方がいいとあったので,連続して読んだのだが...
うーん,連続して読まなくても,以前の大体の内容を覚えていれば十分楽しめるかなあ.ウサギさんがかなり性格の悪い人っぽくなってるけど...

どうでもいい話なのだが,「スペース」は週刊アスキーというどちらかというとコンピュータ系の雑誌に連載されていたらしい.
作品の内容と雑誌のテーマの整合性は置いておくとしても,この内容をどうやって週刊誌に連載していたんだろう? どう考えても「手紙」だけしか掲載されない週があったと思うのだが...

最後に気に入った箇所を引用.

 生きていればきっと、逃げ出すよりほかに道がないときだってある。遮二無二突進していって、その結果無残に激突するよりは、回れ右して逃げ出す方がずっといい。
 一度打ち込んだ文字を、バックスペースキーでなかったことにしたっていいじゃないか?
 少しぐらい、後戻りしたっていい。やり直したっていい。まったく別な、新たな文字を打ち込むことだってできる。
 そう思っていた方が、人生どんなにかラクだろう。

個人的には,そういう訳にはいかないのが人生な気がするが,前作の引用箇所との違いが,作者が前作から10年経って本作を書くまでの間の経験から出てきた答えなのかなあ.