2005年06月18日

『ささらさや』加納朋子

[ Book]

突然の交通事故で最愛の夫を亡くしたサヤは,生まれたばかりのユウスケを奪おうとする義父一家から逃れるため,伯母が残してくれた田舎の家に引っ越すことに.
赤ちゃんを抱えた慣れない生活でさまざまなトラブルに巻き込まれるサヤだったが,ユニークな住人たちと,幽霊になっても彼女を助けてくれる夫に見守られて...

ということで,加納朋子作品を読むのもこれで9作目.
私の中では「加納朋子≒乙女チック」という図式が出来上がっているのだが,本作も道具立てからすると,かなりの乙女チック度を誇っている.なんたってハンサムで頭が良い夫(ちなみに映画会社の社長の息子)が死んでからも愛する人たちを見守るという話だ.

でも,本作の魅力はそれだけじゃない.
ユニークな住人,というかパワフルなおばあちゃんズがいい味を出しており,全体として乙女チックで,ほんわかしていて,やさしくて,面白くて,ちょっと切ないという,非常にいい作品に仕上がっている.
ただし,そういう他の要素が多い分,ミステリの要素はちょっと低めだった.
軽い気持ちでサラッと読めるので,結構オススメかもしれない.

個人的には加納朋子作品で一番好きなのは『掌の中の小鳥』で,第2位が『いちばん初めにあった海』だったのだが,ミステリとして読んだ場合は順位は変わらないけど,作品の雰囲気だけでいくと本作が第2位になるかな.


おまけ.
レディースコミックには育児物というジャンルがあるのだが(何故そんなことを知っているのかというツッコミはナシの方向で),それっぽいよなあと思っていたところ,実際に漫画化されているようだ.