2007年06月25日

『嗤う伊右衛門』京極夏彦

[ Book]

大工仕事をして糊口をしのぐ生真面目な浪人「伊右衛門」は,「御行の又市」の仲介で,民谷家に婿入りし,病で醜くなってしまった「お岩」と夫婦になった.お互いを想いつつも諍いが絶えない二人に,かつて「お岩」に袖にされた上司「伊東喜兵衛」の陰謀が迫る...

入院中の暇つぶしとして,同僚の奥様に貸していただいた本の一冊.
四谷怪談をベースにしているということは知っていたので,夜の病院で読むのはどうなんだろう?と思いつつ読み始めたのだが...

これがめちゃくちゃ面白かった.

四谷怪談というと,「伊右衛門」が邪魔になった妻である「お岩」を毒殺し,浮気相手と再婚したところ,怨霊となった「お岩」にとり殺される,という程度のあらすじしか知らなかった.
しかし解説を読むと,他にもいろいろと登場人物がいるようで,その主要登場人物は本作でも同じような立場で登場している.

ただし,怪談である四谷怪談と違い,本作には幽霊的な要素は全くない(その意味では同じ作者の京極堂シリーズと同じ).
つまり,四谷怪談から幽霊的要素を抜いただけの材料とあらすじがベースになっているのだが,怪談である四谷怪談に対して,本作はある意味で純愛小説だった.うーん,上手いなあ.

京極夏彦の小説は京極堂シリーズの途中までしか読んでなかったけど,また読み始めようかな.