2005年07月21日

『女たちのジハード』篠田節子

[ Book]

適齢期を過ぎて社内のお局となっている康子,条件のいい男性との結婚を目指して日々努力するリサ,得意の英語で自立を目指す上昇志向の強い紗織.同じ中堅保険会社に勤めるOLたちの未来は...

以前読んだ『夏の災厄』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた.ちなみに直木賞受賞作.

前回読んだ『夏の災厄』がハードで男性的な話だったので,そのノリを期待していて読み始めたのだが...

うわぁ,結婚を巡る女性の葛藤の話かよ!

はぁ,女の人は大変だなあ...
(いや,男もそれなりに大変なんすけどね)

などと,面白いことは面白いんだが期待はずれでちょっと落胆しつつ読み進めていったところ...
中盤くらいから様相が変わってきた.仕事(と生き方)に絡んだ側面が徐々に前面に出てき始めて,それに伴って面白さも急上昇.
おかげで,寝る前にちょっと読もうと思っていたらほとんど最後まで読み進めてしまい,ちょっと寝不足になってしまったくらい.

特にラストのトマトの話は,現実にはあれで上手くいくとは思えないが,経営学の教材として学生に読ませたいくらいだ.


ということで,久しぶりに気に入った箇所の引用をいくつか.

「努力したということを誉められるのは学生だけだ。社会人は結果としての実績でしか評価されない。定められた期間で、要求された水準の仕事をすることでしか、一人前として認められないんだ。英語だけではなく、他のことにしてもね。君のいう『食べていく』ってそういうことだよ」
笠原「扉を開けて」
 紗織は目の前で閉ざされていったいくつもの扉と、つまづきの石のことを思った。それらは決して挫折という結果をもたらしたのではなかった。そのたびに繰り返されたわけもわからない、がむしゃらな努力は、何一つ無駄にはなっていなかったのだ。確かにそれらは紗織に半端な報償を与えてくれはしなかった。だれもその努力に対し、頭を撫でてはくれなかった。しかしそれは「力」というもっとも確実な果実を自分の内面にもたらしてくれていた。
「タッチ アンド ゴー」
「いい? 商品には誇りを持つのよ。高級感を出して、差別化を図るのが大事。女だって同じでしょ。素朴さと人の好さだけで勝負しようとすれば、価格破壊が待ってるだけよ」
純子「三十四歳のせみしぐれ」
「自分も、自分の手がけたものも、磨きぬいて高く売りなさい。やるなら年商一億をめざさなきゃ」
純子「三十四歳のせみしぐれ」