2004年10月24日

『群青の夜の羽毛布』山本文緒

[ Book]

丘の上の一軒家に住む対人恐怖症ぎみの長女,奔放だけど門限は守る次女,家庭でも厳格な教師である母と,長女と交際することになった就職間際の男性をめぐる物語.

ちょっと変わった恋愛物と思って読んだのだが,かなりスリラーな作品.何かがひたひたと近づいてくるような緊迫感が常に付きまとっている.なにせ冒頭からこんな感じ.

復讐ですか。そうですか。
おでんに農薬でも入れましょうか。
はんぺんなんか食べたら、たっぷり汁を吸っているからコロッと死ねるでしょうね。タコなら助かるかもしれませんよ、先生。

こ,怖ぇぇ...

山本文緒の作品はこれまでに短編集2冊とエッセイ1冊を読んだ.エッセイについてはいずれ書くこともあるだろうが,短編集は少々ブラックなのが多かった.
ブラックなのは嫌いではないのだが,その多くが女性心理に由来するブラックさなので,男性としては「ぅゎぁ...」となってしまい,それ以降,積極的に読む機会を作ることはしてこなかった.
今回の作品も学生さんが貸してくれなければ読まないままだったと思うが,これは読んで大正解.

山本文緒の長編を読んだのはこれが初めてで,短編を読んだときは気がつかなかったのだが,構成やストーリーテリングがとても上手いように思える.もしかすると長編向きの作家なのかもしれない.
解説によると,この後に発表された『恋愛中毒』ではその上手さがさらに発揮されているらしい.

ということで,古本屋に行ったところ,『恋愛中毒』が安く売られているのを見つけたので,早速買って来た.しかし,未読本がかなりの高さに積み上がっているから,読むのはまだまだ先になりそうだなあ.
しかも,買ってから言うのもなんだが,これって,タイトルからして苦手なタイプの恋愛物のような気がする.うーん,読む順番はさらに先になるかな...