2007年07月06日

『死国』坂東眞砂子

[ Book]

20年ぶりに高知県の故郷を訪れた「比奈子」は,初恋の相手である「文也」と再会し,恋に落ちるが,二人の周りには異常な出来事が頻発するようになる.それは18年前に事故死した「莎代里」が起こしていたものだった.
巫女の血筋である彼女を黄泉帰らせるため,彼女の母親が遍路を逆に巡る"逆打ち"を行っていたのだ...

入院中の暇つぶしとして,同僚の奥様に貸していただいた本の一冊.
昔,映画にもなった作品で,座敷牢のようなところに閉じこめられた制服姿の少女が「早くここから出たいがよ」みたいな台詞を言っていたCMが印象的だった.

しかし,全部読み通しても,そのようなシーンは全く出てこない.
それに,どういうわけか「死国=復活したら力持ちになっていた女の子が力余って恋人を絞め殺してしまう話」という謎の情報が脳内にインプットされていたのだが,全くそういう話でもなかった.

どういうことかと思って,映画版『死国』のあらすじを調べてみたら,かなり話が違っていた.
で,やっぱり私の脳内にインプットされていた謎の情報も間違っておらず,映画版『死国』は伝説的な映画だったらしい.

で,本作の内容だが,主要登場人物が全員ドロドロしているので,読んでいてカタルシスは感じられなかった.
作者が選考委員を務めたミステリ大賞で,受賞作に対して「人間が描けていない」的な批判をしていたのだが,この作者にとっては「人間=ドロドロしているもの」なのかなあ.