2005年08月09日

『観用少女 全2巻』川原由美子

[ Book]

ミルクと砂糖菓子,そして何よりも愛情を栄養として,美しく育つ観用少女と,それを巡る人々の物語を描いた一話完結の短編集.某教員の奥様から借りたもの.

今回貸してもらったのは文庫化されたものだったのだが,文庫化される前のもの(ワイド版 全4巻)を1巻だけ読んだことがある.そのときは「絵はきれいだし,話もヒネリが効いているんだけど,何だか好きになれないなあ」というのが率直な感想だった.

だが,今回,全話まとめて読んでみたところ,かなり印象が変わった.

元々の掲載誌がホラー系の雑誌だったためか,ワイド版1巻に収められた話の半分以上がバッドエンド,とまではいかないが,いわゆるハッピーエンドではない話.
このせいで,最初に読んだときは全体的に暗く感じてしまって気に入らなかったのだろう.

でも,全話通して読んでみると,バッドエンド的な話は実は少数派で,全体を通してのイメージがずいぶんと明るくユーモラスなものに変わった.

個人的に気に入った話は「空中庭園」「天使の役作り」「桃源郷」「嵐」なのだが,リストアップするときにこれらの話の共通点に気がついた.
観用少女とそれを購入する男性がストーリーの中心になるという構図はほとんどの話に共通しているのだが,私が気に入った話はその構図から外れている話ばかりなのだ.
観用少女は基本的に喋らない以上,基本構図に従った話は主人公の一人語りが中心にならざるを得ないので,話のバリエーションが狭くなってしまうことが関係しているのだろうなあ.