2007年01月24日

『こちら郵政省特配課』小川一水

[ Book]

民間運送業者の宅配便に仕事を奪われていた郵政省だったが,「ゆうパック」「ふるさと小包」などの投入で反撃,昭和60年以降は取り扱い数を回復させていった.
そして,平成元年.コストを考えなければいけない民間業者では太刀打ちできないようなサービスを提供するための部署,「特別配達課(通称:トッパイ)」が設立された...

久しぶりというほどでもないが(4ヶ月ぶり?),小川一水の作品.
ただし,小川一水名義になってから3作目なので,これまで読んだ小川一水作品とはちょっと違っていた.
主人公が「職業意識に燃える人々」ということには違いがないのだが,所属している組織が違っているのだ.

今まで読んだ作品だと,弱小企業だったり,災害でボロボロになった政府だったり,かなり厳しい状態に主人公が置かれていることが多かった.
しかし,本作での主人公の所属組織は郵政省,つまりお役所であり,コストを全く考えず,さまざまな装備や設備をガンガン使えてしまう.今までのパターンでいうとライバル側の立場なわけだ.

コストを気にせず,さまざまな装備を使えるとなれば,仕事もそれほど苦労しないだろうから何のドラマにもならない.
それだけだと,どう考えても面白くない作品になってしまうので,本作でも「最後は人」という形でのドラマが作られているわけだが... うーん,どうもなあ.

などと複雑な感想を抱きつつ,最後にあとがきを読んでみたところ... なるほどなあ.

この作品には続編があって,そちらでは主人公達の立場も変わっているようなので,このあたりの複雑な心境にケリがつくのかな.