2004年08月24日

『LAST』石田衣良

[ Book]

石田衣良の直木賞受賞の後に発表された第1作らしい.実際には受賞前から連載されていた短編を集めた短編集だから,このこと自体には意味はないと思うのだが,セールス的には効いてくるんだろう.

石田衣良の作品全般についての評価としては,「スタイリッシュ」「スピード感がある」「読後が爽やか」「優しい」というのが一般的だと思う.しかし,この作品はお先真っ暗な状況にある男たちを主人公にした短編集で,帯にはこう書いてある.


崖っぷちの人間をダーク&ビターに書きました。ぼくの別な顔に、震えてください。

はてさて,どのくらいダーク&ビターなのだろうか...

結論から言うと,主人公たちのシチュエーションは崖っぷちだけど,それほどダークなわけではない.
まあ,このあたりは読む人によって評価は違ってくるだろう.けど,個人的には「やっぱり石田衣良だなあ」という感じだった.

この本には全8編が収録されているのだが,ラストまで「うわぁ」と思った話は2編だけ.
逆に,爽やかな読後感さえあったりする話も3編あった.
残りの2編は「まあ,それなり」という感じか.
どの話が「うわぁ」で,どの話が「爽やか」なのかは,自分で確かめてみて欲しい.

ちなみに松山市立中央図書館で借りてきた本なので,興味のある方は図書館へどうぞ.

最後に気に入った台詞の引用を.

意識してやっていることと意識せずにやっていることでは大変な差がある.心臓の手術といっしょだよ.どんな手順にも理由があり,それは隅々まで意識されていないといけない.そうでないと突発的な事態に対処できない.やり直しがきかないデリケートなものだからね,どちらも