2005年06月24日

『異国伝』佐藤哲也

[ Book]

「その昔、とあるところにそれは小さな国があった。あまりにも小さいので地図に載ったことがなかったし、旅行者向けの案内書にも載ったことがない。」という書き出しで始まる,「あ」から「ん」までの45文字で始まるタイトルを持った45編の掌編集.

この作者が書いた『熱帯』が面白かったので松山市立中央図書館で借りてきた.

さて,肝心の中身だが...これが難しい.一番最初に収められた「愛情の代価」がなかなか雰囲気がある作品で良かったので,「こういう話ばっかりなのかな」と思って読み進めたところ,2つめの「威光の小道」は全然違う作風.しかし,これはこれで面白いなあと思って次の「鬱々の日々」を読むと,これまた違う味わい.

という感じで,色々な話が収められている.なので,読んでみると気に入った話が見つかるような気がするが,不条理な話が多いので,やっぱり基本的には読む人を選ぶ本なのかなあ.

個人的に気に入ったのは,『熱帯』の不明省につながるような味わいの「魔王の機械」「排外の気風」,不思議だけどじんわりする「愛情の代価」「冷気の感触」,そういえば密輸業者なんだよなあの「帝国の逆襲」かな.