2007年10月06日

『チーム・バチスタの栄光』海堂尊

[ Book]

東城大学医学部付属病院にアメリカから招かれた「桐生恭一」は,心臓移植の代替手術であるバチスタ手術を専門とするチーム・バチスタを率い,成功率100%を誇っていた.
しかし,相次いで術中死が発生,そのことに違和感を感じた「桐生」は「高階病院長」に調査を依頼する.
そして,「高階病院長」が調査責任者として選んだのは,外科とは全く縁のない愚痴外来の責任者であり「田口公平」だった...

第4回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作.松山市立中央図書館所蔵.

書店に並んでいるのを最初に見た時,人目を引く黄色の装丁に加えて「チーム」「栄光」という単語が含まれていることからツール・ド・フランスの話と勘違いしたのだが,れっきとした医療ミステリ.ちなみに作者は現役のお医者さんらしい.

主人公である「田口」の調査が行き詰まった頃,もう一人の主役(というか真の主役?)である「白鳥圭輔」が登場するのだが,このキャラクターがハチャメチャ.
「ロジカル・モンスター」の綽名を持つ厚生省の役人なのだが,まったく役人っぽくなく,表面的にはロジカルでもないキャラクターで,彼が登場してからは話のムードがかなり変わってしまう.
これはこれで面白いのだが,前半の「田口」のみの時の話のムードで全編を貫いても面白かったような気がするんだが,それだと解決にまで辿り着かないか.

話としては面白かったのだが,犯人の造形がイマイチというか,話のクオリティに対して犯人がステレオタイプなのが残念と言えば残念かな.

この作者のシリーズは書店でよく見かけるのだが(現時点で5冊),実はデビューしてからまだ2年も経っていないということは,この記事を書くために調べて初めて知った.うーん,すごいペースだなあ.

気に入った箇所を引用.

「ひとつだけ、ヒントを差し上げましょう。ルールは破られるためにあるのです。そしてルールを破ることが許されるのは、未来に対して、よりよい状態をお返しできるという確信を、個人の責任で引き受ける時なのです」高階教授
「もっと自分の頭で考えなよ。先入観を取り除いてさ」白鳥圭輔

P.S.
現在,本業の方で医療のリスクマネジメントについて調べているのだが,そのあたりの描写も多く,おもわず研究費で買ってしまいそうになったが,ちょっとマズイだろうなあ.

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