2005年05月07日

『花の下にて春死なむ』北森鴻

[ Book]

住宅街の中にひっそりと営業しているビア・バー「香菜里屋」に今日も常連が集う.
彼らのお目当ては,度数の異なる4種類のビール,季節の旬をとらえた美味しい料理,そしてマスターである工藤の人柄と推理力...

しまった,同じ作者の『メイン・ディッシュ』と紹介文がほとんど同じだ!
というわけで,『メイン・ディッシュ』と同じく料理人を探偵役にして,『メイン・ディッシュ』と同じくそこに常連さんが謎を持ち込むという,『メイン・ディッシュ』と同じく連作短編集.
ちなみに『メイン・ディッシュ』と同じく松山市立中央図書館で借りてきた.

と書いてしまうと,『メイン・ディッシュ』と同じじゃないか!と思われるかもしれないが,テイストが全く違っている.

『メイン・ディッシュ』はシリアスなパートもあるが,登場人物がユーモラスなためか,軽妙なイメージがあるのだが,こちらは全体的に重い感じの話に仕上がっている.

とりあげる謎も,『メイン・ディッシュ』の方が「スパッと解決!」的な感じなのに,本作では「うーん,一応解決したっぽいけど...」的な,余韻が残るというか,爽快感がないというか,そういう感じの話が多い(特に「七皿は多すぎる」にいたっては...).
まあ,謎解きではなく,謎にまつわる人生の機微というか,そのあたりに重点が置かれているんだろう.

ちなみに,本作でも料理が美味しそうなんですが,どこかにこういう店はないもんでしょうかねぇ.お値段的にリーズナブルであれば,なお有難いんですが...


おまけ.
私が読んだ『メイン・ディッシュ』はハードカバー版だったのだが,既に文庫化されており,そちらには短編が1本追加されている.
先日,書店で立ち読みしてきたのだが,謎解きについては「えーっ?」という感じであるものの,師匠のペンネームの秘密にはまったく気がつかなかった.