2006年01月30日

『螢坂』北森鴻

[ Book]

住宅街の中にひっそりと営業しているビア・バー「香菜里屋」.
マスターである工藤の料理と推理に今日も常連たちは酔いしれる.

以前読んだ『花の下にて春死なむ』『桜宵』に続く第三弾.形式も前作と同じ連作短編集で,やっぱり前作と同じく5つの話が収められている.
前作を読み終わってから,松山市立中央図書館に行くたびに棚をチェックしていたのだが,いつ行っても貸出中.仕方がないので予約して借りてきた.

前作はちょっと後味の悪い作品も収められていたのだが,本作は基本的に人情噺ばかりで,どれも非常に面白かった.

出てくる料理がどれも美味しそうなのは相変わらず.味だけじゃなくて,歯応えに特徴のある料理が多いように思えた.
単純に素材と味を描写するだけよりも,歯応えについての描写があるほうが,味というか雰囲気が想像しやすいためだろうか.
というか,香菜里屋の料理を食べてみたい...


・おまけ
中に収められている短編に「孤拳」というのがあって,その紹介文が

若くして逝った「脩兄ィ」の最期の願い幻の焼酎・孤拳を探し求めてドアを開けた、香菜里屋で明かされた衝撃の事実。

というものなのだが,これを読んで私は「チンピラが兄貴分の遺言で幻の焼酎を探す話だな」と思っていたのだが,全然違っていた.どうして,こんな思い込みをしていたんだろう?