2006年01月29日

『水滸伝 濁流の章』北方謙三

[ Book]

北方謙三による『水滸伝』の第十巻.松山市立中央図書館所蔵.

本巻では梁山泊軍と呼延灼率いる官軍の対決が描かれている.

呼延灼といえば「連環馬」という,鎖で繋いだ馬に乗った重装備の騎兵で突撃をかける作戦で有名なわけだが,いたるところでオリジナリティを出している北方水滸伝だけに出てくるかどうか心配していたのところ,ちゃんと出てきた.

で,もう一つ,呼延灼といえば「鞭」.あだ名が「双鞭」というだけあって,両手で2本の鞭を使うのだが,面白い話がある.

『三国志』で有名な漫画家である横山光輝は『水滸伝』も漫画化している.
『三国志』が全60巻に対して,『水滸伝』は全7巻+外伝1巻という短さで,かなりのエピソードが省略されているのだが,この漫画版でも呼延灼との対決は一つの見せ場.

こちらに登場する呼延灼は,連環馬の重装備ということをアピールしたかったのだろう,鎧兜に面をつけた人物として描かれている.この特集ページの6巻の表紙が呼延灼.

で,あだ名の「双鞭」のとおり,サーカスで使うような長い鞭を両手で使って戦う.
しかし,中国でいうところの「鞭」には二種類あって,サーカスで使うような鞭は「軟鞭」という.
そして呼延灼が使う「鞭」はもう一種類の「硬鞭」というもので,これは木や鉄で作られた節の付いた棒のようなものだそうだ.画像がないか検索してみたところ,中国武術グッズを扱っているサイトに特注品として紹介されていた(J.02「硬鞭」というやつ).

これについては横山光輝の思い込みによるうっかりミスだと思っていたのだが,今回の記事を書くにあたって検索してみたところ,漫画版が描かれた時期が中国との国交正常化前で,資料が入手できなかったという事情があるそうな.
その気になれば色々な情報を手に入れることのできる現在というのは,かなり恵まれた時代なんだろうなあ.