2004年08月01日

『誰か』宮部みゆき

[ Book]

周囲からは玉の輿に乗ったと思われている社内報の編集者は,義父から「事故死した友人の人生を本にまとめようとしている姉妹の手伝いをしてくれ」と頼まれる.しかし,本の執筆に乗り気な妹に対して,父の過去を明らかにすることに消極的な姉.その態度の背景には,ある事件が存在していた...

ということで,『火車』以来の宮部みゆき作品.発表された時系列で読んでいないので,作風などがどのように変化してるかはよく分からないが,370ページくらい(少し字が大きめではあるが)をグイグイ読ませる筆力は相変わらず.
しかし...

全編を通して読んだ後だと,「これってもう少し短くても良かったんじゃないの?」と思ってしまう.
全体の分量のうち,メインのストーリーに直接関係しそうな出来事は実はそんなになかったような気がするのだ.
色々なエピソードが淡々と積み重ねられていくことで主人公の考え方など浮かび上がってくるので,それはそれでいいのかもしれないが...

あと,宮部みゆきの作品というのは人の良い面も悪い面も両方描かれていると思うのだが,これについてはそのバランスが悪い...というのとは少し違うな,良い面と悪い面の配置が少し偏っているとでもいうのだろうか,そのように感じられた.そのため,なんだか読後感がイマイチだった.後味が悪いというか,最終的に解放されないまま終わったというか...

まあ,この前に読んだ宮部みゆき作品が『火車』という大傑作で,それと比較してしまうとどうしても評価が辛くなってしまうのは仕方がないかもしれない.そういうのを抜きにすれば,十分に面白い作品だったと思う.