2006年01月14日

『ベルカ、吠えないのか?』古川日出男

[ Book]

1943年,アリューシャン列島のある島から撤退した日本軍は4頭の軍用犬が置き去りにしていった.そしてイヌたちは波乱に富んだ運命に翻弄されつつも,本能の命ずるままに自らの血統を残していき,そして...

同じ作者の『アラビアの夜の種族』を借りようと思ったが無かったので,直木賞の候補にもなったこの作品を借りてきた.松山市立中央図書館所蔵.

20世紀末のシベリアからスタートした人の物語と太平洋戦争中のアリューシャン列島からスタートしたイヌの物語が交互に語られ,それが最終的に一つになるという私好みの構成なのだが,一人称,イヌに呼びかける二人称,三人称が混在するという珍しい文体の作品でもある.

軍用犬(と実験犬)の存在が話の中心になっているのだが,さながら「イヌから見た20世紀後半史」とでも言った感じ.
全体を通して一本の長編なのだが,先にも書いたように人とイヌの物語に分かれており,イヌの物語は各世代ごとの連作短編という感じにもなっている.短編としてみるとユーモラスなものもあれば,ちょっとエグイ話もあったりする.

最後がバタバタしているというかアッサリしているというか,もうちょっとページ数をかけてもいいような気もしたが,おそらく意識的にああいう書き方にしたんだろう.
全体的に面白かったので,しばらく追いかけてみることにしよう.