2004年05月27日

『暗黒童話』乙一

[ Book]

以前から乙一の作品は読んでおり,本作もずっと探していたが,なかなか見つからずに今まで読めずじまいだった.ようやく文庫化されたので早速購入.
しかし,この前に読んだ短編集『ZOO』が全体的にスプラッタ and/or ダークな内容で個人的には趣味ではなかったため(『陽だまりの詩(シ)』を除く.これは感動の名作!),同系統(いわゆる黒乙一)な本作もどうなんだろうと思っていた.

冒頭の童話(女の子のためにカラスが眼球を集める)を読んだときにはどうしようかと思ったが,がんばって読み続ける.メインの眼球を移植された女子高生の話はいいとして,その次の童話作家の話に至っては...スプラッタにしてダーク.基本的に怖いのが苦手な人間が夜中に読むべき話じゃないよなあと思いつつ,ときどき出てくる暖かさに救われながら読み進めていく.
最終的な感想としては,個人的にはキビシイ箇所がところどころにあるものの,読後感は意外なほど爽やか.そういえば,『ZOO』にあったチェーンソーで人が切り刻まれる話も読んでる最中はきつかったがラストはなんだか爽やかだった.このあたりは「切なさの達人」とも呼ばれる乙一ならではというところか.

ちなみに,巻末の「文庫版あとがき」は本編とはまったくイメージが違っており,新作がなかなかでない乙一の現在の状況を知っているとかなり笑える.
というわけで,そろそろ新作を出してくれませんかね,タカシに負けないためにも(笑).