2004年05月27日

『ビル・ゲイツの面接試験』ウィリアム・パウンドストーン

[ Book]

マイクロソフトでは就職面接の際に難問(いわゆる論理パズル)に答えられることが求められるそうだ.成功しているマイクロソフトが採用している面接方法だからということで,他の会社でも同様の面接試験を行われているらしい.
この本はそういうパズル式面接が本当に有効なのかどうかについて論じた本なのだが,中身はそんなに堅苦しくない.たくさんの論理パズルとそれについての解説が掲載されているので,パズル集として読むこともできる.

面白かった点・気になった点
1.二秒面接(P.27-32)
アメリカの授業評価についての実験では,その教員の2秒間のVTRを見ただけの場合の評価と,1学期間継続して授業を受けた場合の評価に有意な差がなかったという結果が出ている.
この場合に考えられる仮説は2つ.
第一の仮説は,人は2秒間であった相手の本質(というのは言い過ぎか)を判断できるというもの.つまり,2秒間見ただけで正しい判断ができるというわけだ.
第二の仮説は,人は2秒間で相手の印象を決定してしまい,それは変化しないというもの.つまり,2秒間見ただけで判断を終了してしまうわけだ,それが正しい判断であろうがなかろうが.
前者なら良いのだが,後者の場合,第一印象が悪い人は人生で凄まじく損をすることになるなあ...

2.未確定部分と選言(P.127-132)
アルファベットと数字が裏表に印刷されたカードをめくって云々という実験,ウェイソン選択課題というらしい.
『ケータイを持ったサル』でも使われていたのだが,難易度の位置づけがかなり違っているような気がする.『ケータイを持ったサル』では社会的賢さの測定のために使われており,若者ならばかなりの確率で正解するような書き方がされていたが,こちらでは正答率は良くて20%だという.この違いはいったい...

3.パラダイムとパズル(P.189-191)
最後の部分が気にいったので引用しておく.

パズル面接は,この不確実性(絶望?)の風土の,いちばん見やすい反映だ.雇用する側は,今,言葉にならないものを探している.それはまさに,知能ではない.自信とやる気がそこに入る.不確実性を受け入れ,前提を疑い,事業を完成に導く能力といえばいいだろうか.批判的な判断という強い要素もある.「前提を疑う」とは,どの前提を,いつ疑うか,そのこつがわかっていなければ,IBMの「考えよ」という合言葉と同様,陳腐な言い回しだ.才能のある人が,そういうことをかくもうまくやれる事情を,実は誰もわかっていない.われわれには,まだしばらくは,間に合わせの評価法しかない.「これから行く先は枝分かれしています.でも,本当のことしか言わなかったり,嘘しか言わなかったりして方向を教えてくれるような,助けになる人はひとりもいません.さて,自分の進路をどう見つけますか?」