2006年06月08日

『ブルースカイ』桜庭一樹

[ Book]

17世紀のドイツで,魔女狩りによって唯一の肉親を失った少女が,
2022年のシンガポールで,成熟できない優しいCGアーティストの青年が,
そして2007年の日本で,いつもと変わりのない日常を生きる17歳の女子高生が,
世界(システム)にアクセスしたとき,彼女たちの運命は交差し,黒い十字架のようなものが...

以前読んだ『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』が面白かったので,松山市立中央図書館で借りてきた.
この本,まずはその装丁が目を惹く.amazonで書影を見ることができるが,書店で実物を手にとって見てもらったほうがインパクトがあるだろう.
『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』が特定ターゲットを狙い撃ちだったのに対して,かなりクールに仕上がっている.

で,内容の方なのだが...
これが,かなり表現するのが難しい.
メインのストーリーは時間旅行物ということになるのだろうが,ストーリーが破綻しているとまではいわないものの,

「続きは?」

「へっ,これだけ?」

「はぁ?」

というのが私の正直な感想.
特に中世ドイツ編はかなり面白く,色々と伏線を張っているような感じだったのに,投げっぱなしで終わっているというか,もっと話を膨らませられるのにもったいないと思った.

しかし,この本はそういうストーリーを楽しむ本じゃないのかもしれない.
書評を検索してみたところ,絶賛する声もあれば,イマイチという声がけっこう明確に分かれている(ここの10/11の日記から感想をたどれる).
本作を評価する人は,作者である桜庭一樹が一貫して描いている「少女」というものに共感できる人のようだ.
「少女」ねえ... 三十路の野郎には「謎」以外の何者でもないよなあ.