2006年04月18日

『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』桜庭一樹

[ Book]

生きること,つまりカネに関係のないことについては悩まない・関わらないを生活信条とすることに決めた「山田なぎさ」が住む片田舎に,有名な歌手を父に持つ美少女「海野藻屑」が転校してきた.
自分を人魚だと言い張る「藻屑」になぜか気に入られて付きまとわれる「なぎさ」だったが...

本作の作者である桜庭一樹は,『All You Need Is Kill』の桜坂洋と共に「W桜」や「二本桜」として一部で注目されている.
桜坂洋の作品が面白かったので,じゃあ,こちらはどうだろう?ということで借りてきた.松山市立中央図書館所蔵.

まずamazonの該当ページで書影の拡大画面を見ろ.話はそれからだ.

見てもらえただろうか?
パステル調でフリフリのついた服を着た美少女2人が抱き合ってこっちを見ているという,どう考えてもその手の客層を狙いうちにした表紙を.
出版レーベルも富士見ミステリー文庫というその手の客層狙い撃ちっぽいレーベルだし,タイトルもタイトルなので,いわゆる「萌え系」の作品なんだと思われること間違いナシなのだが...

これがド暗黒な作品なのだ.

いちおう紹介文で「渾身の青春暗黒ミステリー!」という謎なジャンルを明示してはいるのだが,タイトルと表紙で読み始めた人は大ダメージを喰らいかねない.

しかし,ただダークなだけの作品ではない.
ネタバレになりかねないので詳しくは書かないが,テーマ的にもプロット的にもライトノベルじゃなくて純文学作品として売り出しても充分通用すると思われるほどのクオリティ.
ネット上でも「○○に芥川賞をあげるくらいなら,こちらによこせ!」と書かれてたりするのだが,確かにそれくらいのインパクトはあるかも.

ライトノベルとして出版されたが,後に一般書として再出版された作品はこれまでもあったが,本作も新潮文庫(本の薄さからして新潮文庫がイメージ的にピッタリ)から再出版すると,かなり高い評価が得られるんじゃないだろうか.