2008年03月03日

『名前探しの放課後 上下』辻村深月

[ Book]

自宅から離れた高校に通う「依田いつか」はジャスコの屋上で気がついた.
そのことに気がついた翌日,「いつか」はこれまでほとんど話しかけたことのないクラスメート「坂崎あすな」に二つの相談事をもちかける.
一つは,自分が三ヶ月先の未来からタイムスリップしたことについて.
もう一つは,三ヶ月先に自分たちのクラスメートが自殺することについて.
「止めるんでしょ、自殺」
「止めるっつったら、協力してくれるわけ?」
「聞いちゃったからね」
そして,友人たちと共に,自殺するクラスメートの名前探しの放課後が始まった.

辻村深月の新刊.これまではノベルズだったのだが,単行本になっている.そのわりには表紙がペラペラなのだが...
昨年末に出版されていて,出版直後に買ってはいたものの,かなりの間,積読になっていたのだが,ようやく読むことができた.

帯に「青春ミステリの金字塔」とあるのだが,本当に「青春ミステリ」という感じ.
どうして買ってすぐに読まなかったのかと後悔するくらい面白かった.

前作である『スロウハイツの神様』と同じく上下巻なのだが,スロウハイツとは違って関係の薄いエピソードはほとんど入っていない.
読んでいる時には関係が薄そうに思った箇所についても,最後まで読むと意味があることが判明する.そう,辻村深月作品におなじみのどんでん返しは本作でも健在.

で,もう一つのおなじみであるリンクも健在なのだが,これがちょっと評価の分かれるところ.
エピローグに集中しているので,作品の本筋には関わりはないのだが,以前の作品の登場人物を知っていないと意味が分からない箇所があるのだ.
以前の作品を読んだことのある人の中にはタイムスリップには「彼」が関係していると考えている人もいるようだけど,「彼」には信じる理由があっただけだろうな.

ちなみに本作は「青春ミステリ」であると同時に,地方の閉塞感というか,地方が抱えている問題というか,そういうものを描いた小説でもある.「ジャスコ小説」とでもいうべきか.
そういうのに興味がある人は,ストーリー以外の面でも楽しめるかも.

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