2006年01月24日

『水滸伝 嵐翠の章』北方謙三

[ Book]

北方謙三による『水滸伝』の第九巻.松山市立中央図書館所蔵.

本巻では罠に嵌められた林沖,新たな山塞の建設,柴進の救出作戦などが描かれている.

原作では柴進の救出作戦は妖術合戦になるのだが,この北方水滸伝では妖術・仙術の類は全く出てこないので,至極真っ当な救出方法になっている.

で,今巻で気になったのは楊令の年齢詐称疑惑.

楊令はもともとは孤児だったのを好漢の一人である楊志が養子にした子供.
親族や縁者が全員死んでいたために正確な年齢が分からず,身体の大きさから適当に年齢を決められた.
初登場時で3歳くらい,今巻では6歳ということになっている.

その楊令,梁山泊でも一,二を争うほどの武術の達人である林沖に容赦なく稽古をつけられて,ぶっ飛ばされている.
...幼児虐待?

また,どんなに若く見積もっても10代半ばの郭盛と一緒に仲良く稽古をしたりしている.
...ちょっと情けなくはないか,郭盛よ?

ということで,楊令の稽古の場面が出てくるたびに違和感があったのだが,今巻で年齢の修正がかかった.
その根拠として出てきたのが「上の前歯は,四本しっかりしたものが生えていた」というもの.

気になったので調べてみたところ,「歯牙年齢」とか「萌出」とかいうキーワードがでてきたのだが,最終的にヒットしたのがライオンの歯とお口の健康のページにあった一目でわかる口腔保健統計グラフ.この中の母子歯科保健の箇所をみると,上の前歯四本が永久歯に生えかわるのは平均で9歳くらいらしい.

ということは,楊令の年齢は,作中では10歳くらいかもしれないとあったが,歯牙年齢的には9歳以上ということになるわけだな.
6歳よりは年齢が急上昇したわけだが,それでも十分に子供な年齢,大の大人が容赦なくぶっ飛ばすのはいかがなものかと思うのだが...