2004年08月19日

『錦繡』宮本輝

[ Book]

前回の記事には書き忘れたが,田辺聖子の『鏡をみてはいけません』は舞台が関西で主人公も生粋の関西人のため,関西弁がバリバリでてくる.一人称の小説なので,地の文でも関西弁が多用されている.なので,関西弁嫌いな人にはつらいかもしれない.

で,関西弁つながりで,今回は宮本輝の『錦繡』.
私の読書傾向は非常に偏っており,田辺聖子と同様,宮本輝の小説も今まで読んだことはなかったのだが,この作品は非常に評価が高く,あちこちで推薦されていることは知っていた.
なので,古本屋で他の本のついでに購入しておいたのだが,これまでずっと積読になっていたのだ.

内容の方だが,不倫の末の無理心中に巻き込まれた男と,その別れた妻の往復書簡という形で,その無理心中までのいきさつと,事件後の二人のそれぞれの人生の紆余曲折と再生が描かれている.

正直なところ,途中まではそれほど面白いとは思えなかったのだが,手紙の内容が現在の話になり,令子という女性が登場してからは面白くなってきた.

というか,令子というキャラクターが魅力的なんだと思う.当初は,落ちるところまで落ちた主人公を養っている都合のいい女だと思っていたら,それが実は,笑いながらこんな台詞を吐いたりもするのだ.


このときのために,うちはあんたを一年間飼(こ)うて来たんや

うぉーー,飼われてー!

というのはもちろん冗談だが,この令子のような女性に,これだけ惚れられるというのは男性冥利に尽きると思う.まあ,「重くてウザイからイヤだ」という人も多いだろうけどね.